トンデモ薬剤師さんの理論背景はやはりニセ医学でした❗

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クスリは日常生活において必需品です。ですが、クスリは健康で何も問題ない場合に飲むのは身体に毒であることは誰もがなんとなく知っていることでしょう。

食品添加物を毛嫌いする人たちがいるようにクスリを忌み嫌う人たちがいます。人工のものを体内に入れることが自然でないとする一派です。でも、手術をしなければ死に至る怪我・病気になったら、どうするのでしょう?クスリNGなら麻酔もできません。苦しみながら死を受け入れるのが自然の摂理という考えなのかもしれませんが、そんな人は極めて稀で一般的にはトンデモです。

クスリは絶対飲みたくないとする人たちは生命の危機に瀕していない極めて平和な状況だからこそ主張できるともえるわけですが、今回は薬剤師の方が書かれた「薬剤師は薬を飲まない」という書籍を取り上げます。

「薬剤師は薬を飲まない」の著者に違和感を覚える理由

薬を飲まないことを推奨している、宇多川久美子の著作について先日もブログに書きました。

医学的根拠の薄い「薬剤師は薬を飲まない」というトンデモ本のヘンな所はここ❗

医学的根拠の薄い「薬剤師は薬を飲まない」というトンデモ本のヘンな所はここ❗

まあ、一般書籍ですからある程度センセーショナルなタイトルをつけるのは良しとしても、健康について述べられたものの場合、極端な内容であればあるほど、熱狂的な信者さんが現れ熱心に布教活動ともいえる、余計なお節介を初めてしまいます。この余計なお節介をビジネス化したものがセミナーによる啓蒙活動であり、これがどういうわけか啓発セミナーになることを多くの賢明なる読者の方はご存じだと思います。

宇多川さんの理論はニセ医学の定番「酵素栄養学」と「ナチュラルハイジーン」が中心となっているために、正当な医学を学んだ人間には理解不可能なものになっているのです。

「酵素栄養学」とはこんな疑似科学・ニセ医学です

薬を飲まない薬剤師さんである宇多川久美子さんの信奉している医学理論は「酵素栄養学」というトンデモさん系医療関係者が大好きなニセ医学です。この酵素栄養学は鶴見隆史という医師が日本では権威とされていますが、研究内容はあくまで読み物であり、論文ベースのものは見受けられません。

長生きの決め手は「酵素」にあった⁉は理解不可能 酵素栄養学は間違いなく疑似科学です。

長生きの決め手は「酵素」にあった⁉は理解不可能 酵素栄養学は間違いなく疑似科学です。

さらに酵素栄養学の歴史をたどると「医学を超えた健康法 酵素療法の実際」という読み物を脇田政孝さんという方が昭和30年位に出版されています。海外では酵素栄養学の父とされるエドワード・ハウエルさんの著作が発行される前なんで世界同時多発的に酵素栄養学というニセ医学が発生したという可能性については今後の研究とさせて頂きます(笑)。酵素栄養学の柱は「人間が一生の間に作り出せる酵素の量は限られている」という、思いつきです(多分)。この酵素栄養学では独特の用語が使用されます。代表的なものが「潜在酵素」と「体外酵素」です。

  • もともと体内に備わっている酵素が「潜在酵素」
  • 外から取り入れないといけいない酵素が「体外酵素」

このような使い分けがなされています。

賢明なる読者はお気付きだと思いますが、体内で作られる酵素には限りがある=潜在酵素は限りがある → 足りなくなった酵素は体外酵素として摂取しましょう、という流れを構成して「酵素をたっぷり取り入れる食生活」を提案します。

さらに進化した(退化したとの御意見もありますがw)考え方だと、薬を飲むと無駄な酵素を使用してしまうために、薬の乱用=酵素の無駄使い、という不思議な意見がでてきます⋯これに固執している様子が「それでも薬剤師は薬を飲まない」(廣済堂出版)を読むと理解できます、モチロン著者は宇多川久美子さん。

ナチュラルハイジーンってなんだ?

健康や長寿はある規則性があり、それに従った生活を送れば健康で長生きになれるとの考えです。この考え方を広めたのが「フィット・フォー・ライフ ——健康長寿には『不滅の原則』があった! 」(グスコー出版ハーヴィー・ダイアモンド、マリリン・ダイアモンド (著) 、松田 麻美子(訳)と思われます。

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ナチュラルハイジーンの一日24時間を8時間で均等に3つにワケます。その3つは排泄の時間、摂取と消化の時間、そして吸収と代謝の時間です。食事は摂取の時間に済ませて、吸収と代謝の時間に食事をするなんて以ての外だよ、という健康法の一流派です。この流派の進化(退化?)したものが、例のファスティングであり、以前ブログに書いた「不食」となるのです。

「不食」って知っていますか?全く食べ物を食べないで、水も飲まない人たち❗

宇多川さんの著作にもここ10数年間一日50キロカロリーで生活していると称する方や全くカロリーを摂取していないと主張される不食業界では有名な方のお名前が書かれています。

このようにトンデモ系ニセ医学の方々はお互いに流派が違えども非常に親和性が高いようで、仲良しです。売り出し方も類似しているので、ひょっとしたらニセ医学・疑似科学を裏でプロデュースする有能な方がいらっしゃるのかもしれませんね。

気になる宇多川久美子さんの今後の方向性⋯余計なお世話でしょうが

無駄に処方されている薬が全くないとは考えません。数カ所の医療機関から重複する薬が処方されている可能性もあります。そのようなことがないように調剤薬局には薬剤師さんがいて、さらに飲んでいる薬の指導や患者さんの疑問に対応します。

薬剤師業をやめたことを宇多川久美子さんは「白衣を脱いだ」と表現していますが、これは調剤薬局には立たないで他の健康法を啓蒙したり、無駄な薬の減らし方をしたりする活動に専念したことの表明であることには好感が持てます。

しかし、ニセ医学にどっぷりハマっているようにしか見えませんし、限りなく宗教じみた活動・セミナーになっていることが心配です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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