トンデモ系「医療ジャーナリスト伊藤隼也」さん、ここも間違っていますよ❗

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医療評論家とか医療ジャーナリストという職業があります。本ブログでも時々トンデモ系医療評論家や医療ジャーナリストを批判させていただいています。テレビでも見かけることが多い医療ジャーナリストに、伊藤隼也さんという方がいらっしゃいます。各方面から著書「うつを治したければ医者を疑え!」(小学館)における、データの読み違い(一部ではデマとさえ言われている)、深く考えないトンデモ系解釈をして解釈しちゃう等が非難・批判の対象となっています。

テレビ番組で、専門家・医療なんちゃらという肩書がついている人が話したことは、どうしても信じてしまいがちです。それが視聴者にとって専門外のことであるなら尚更です。いくらネットが発達しても「テレビで見た」は強力です。日々、患者さんの話を伺っている医師として強い危機感を感じていますので、きちんと批判させていただきます。

統計学を理解しないで、医学批判をすることはご遠慮ください

私がこの伊藤隼也さんを知ったのは、ツイッター上である方が私のブログを引用して、伊藤隼也さんのトンデモ説を説得しようと試みたところ、伊藤隼也さんが言論人とは思えない行動を起こしかけたからです(詳細は後述のリンクをご覧ください)。ニセ医学・擬似科学ウォッチャーの友人にそのやり取りを教えてもらい「医療ジャーナリスト 伊藤隼也」という方を知った次第です。

伊藤さんの問題点、それは基本的なグラフの書き方と正しい表示方法をご存知ないという科学系著作をお書きになる方としては致命的なところがあり、またまず結論ありきで、それに適したデータの一部を抜き出して自説の正しさを補強する癖があることです。

伊藤さんが以前なさっていたご職業に対する非難も見かけますが、今回は医学データを歪めて出版物にしたことについてのみ検討して解説しますね。

SSRIが発売された時期から自殺者が急増なんかしてないぞ❗

SSRIという抗うつ剤があります。従来の抗うつ剤と比較して高価であり、海外では異常行動や自殺が増えるんじゃないかと言われていた時期があります。伊藤隼也さんは「うつ病の新薬によって自殺者が増えている、だから、うつ病を治したかったら医者を疑え」と考えたんでしょうね。ところがどっこい、これらのSSRIが発売される前から自殺者は急増しています。

SSRIが日本で使用されるようになったのが1999年

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内閣府 自殺対策推進室サイト

黒線が自殺者の総数、青線が男性で赤線が女性です。平成10年って1998年ですから抗うつ薬の新薬が発売される前から自殺者は急増していたというが事実です。

これによって伊藤隼也説である「抗うつ剤の新薬の発売時期と自殺者の増加時期が同時期である」との仮説はトンデモ系ニセ医学と認定されちゃいますね。誰でも見ることのできる内閣府の情報を医療ジャーナリストでありながら、確認する作業を怠ったのでしょうか?あるいは自分は医療ジャーナリストであり、取材した医師の発言をそのまま記事にしなければならない、との主義でもお持ちだったのでしょうか。

週刊現代がトンデモ系ニセ医学情報をシリーズ化していますが、取材を受けた医師が「そんな意味で言ったわけじゃない」「発言の一部を抜き出して使用された」と週刊文春(2016年7月7日号)が伝えています。

注意

素人の方に対して批判はしない方針でブログを書いています。公人、医療あるいは医療に関係することを生業としている方の、標準的な医療と照らし合わせて明らかに間違いと思われるブログ・著作物に対しては疑問を投げかけますし、批判もいたします。

たった一つのグラフから読み取れることはまだあるよ

このグラフは伊藤隼也さんの「うつを治したければ医者を疑え!」(発行小学館)に掲載されているものです。

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このようなグラフを見たらまず、ある一定方向の考えに誘導する戦術が隠されていると思って間違いありません。このグラフって前掲内閣府のグラフの抜粋ですが、伊藤さんのものには縦軸が0から始まっていません。小さな変動を大きく見せる時に使われる手法であり、こんなグラフを掲載した時点で正しいデータが記載された本、あるいは正しい記事であると判断してはいけません(自殺者の数は確かに平成10年西暦だと1998年に急増しています)。

内閣府のグラフと伊藤さんのお書きになった本のグラフには決定的な違いがあります。

自殺者は男性は急増しているが、女性は急増とは言えない⋯女性は新しい抗うつ剤が処方されなかったの?との素朴な疑問が湧いてきませんか?

さらにさらにうつ病って女性の方が男性より2倍なりやすい病気だが、女性にはSSRIは処方されなかったの?との疑問も当然出てきちゃいます。

伊藤さんの考え方は うつ病の新薬登場 → うつ病と診断される人が増える → 新薬であるSSRIが処方される → 処方が原因となって自殺者が急増 と著作物よりは読み取れます。自殺者の増加は新薬の販売時期より前ですから、新薬の処方によって自殺者が急増している、との解釈は成り立ちません。

医師の処方によって覚せい剤中毒死の25倍の死者❗

「うつを治したければ医者を疑え」の第2章である「医師の大量処方が覚せい剤中毒死の約25倍の死者を出している」が伊藤隼也さん問題の始まりです。これって医師じゃなくても、こんなことあるか、と疑問を持ちます。

伊藤さんはホメオパシー肯定論者のようで、ニセ医学の王様(?)ホメオパシーに関してツイートしたことに対する反論としてある方が私のホメオパシー批判ブログを引用していだだき、それをきっかけとして「医療ジャーナリスト伊藤隼也」って方を知ったワケです(Tetra Staion さんと伊藤さんのやりとりの詳細はこちらを)。

なお、山本一郎さんの「伊藤隼也(医療ジャーナリスト)が自著で「うつ治療」関連のデマを流して騒動に」によれば発行元の小学館は重版の時に対応するとのことです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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