乱用傾向がある逆流性食道炎の薬「PPI」、副作用が心配なら主治医に質問しよう❗

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ここ一ヶ月あまり、週刊誌が医師の出す薬を飲み続ける危険とシリーズ化して掲載しています。

しかし、その内容は?マークだらけなのですけど、なぜか派手に取り上げられていないのが「プロトンポンプ阻害薬」です。

胸焼けすると、すぐに「逆流性食道炎」って診断されるけど⋯

胸焼け等の症状を訴えると「あっ、それ逆流性食道炎だからこれ飲んで」って気軽に処方されるタケプロン・オメプラール・パリエットといった薬です。一般的には胃酸を抑える胃薬と認識されています。でも、これらの薬って週刊現代じゃないけど、結構副作用あるんですよ。

週刊現代風に書けばこんなに売れています。ここ数年売り上げが減少しているのは、特許切れで後発品(ジェネリックのランソプラゾール)の発売によるもので、副作用が問題になって使用量が減ったわけではないです。

主要製品売上高___財務ハイライト___株主・投資家の皆様___武田薬品工業株式会社

http://www.takeda.co.jp/

内視鏡検査で粘膜に異常のない場合は「機能性ディスペプシア」って病名を診断される場合もあります。病名ってどんどん増えていくので薬もどんどん新薬が開発されます。新薬が開発されたために、無理やり病名をつけたようなものがないとは言い切れない気もしますけど(かなり歯切れ悪し)。

医師もタケプロンなどのPPIを気軽に服用していたよ、効能以外の目的で(笑)

「逆流性食道炎」って病名は古くからあるものではないと記憶しています。食後の胸焼けやげっぷ、苦い味がこみ上げてくる、こんな症状があると「逆流性食道炎」と診断されます。胃酸が逆流してくるので、食道の粘膜が傷つけられてしまい、ひどい場合は潰瘍ができてしまうのです。こんな症状の原因として食道括約筋が弱くなっていることが一番ですが、タケプロンなどのPPIは胃酸の分泌量を減らすことによって逆流性食道炎を治療するのです。

この薬が出だした頃「タケプロンを飲むと二日酔いしない」との話が出回って、多くの医師が飲み会の前にタケプロンを服用していました⋯もちろんしっかり飲めば、しっかり二日酔いしましたけどね。昔は単なる胃酸の分泌を抑える胃薬との認識のもと、自分でも服用すれば患者さんにも処方していました。そのタケプロン・パリエットといったPPI、実は副作用がかなり報告されています。

PPIは胃薬なのに副作用多数、疫学的問題も多数あり❗

どんな薬も副作用はありますけど、ちょっと気になるのがプロトンポンプ阻害薬(PPI) と慢性腎臓着病(CKD)の関係です。PPIを長期服用していると慢性腎臓病の発症数が増加するとの論文があります。JAMA(Journal of the American Medical Association 米国医師会雑誌)に「Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease」(JAMA Intern Med. 2016;176 (2) :)とのタイトルで掲載されています。大雑把な内容としては

  • 45歳から64歳の米国人1万482人を対象として6年間追跡調査した。
  • PPI使用者322人中56人が慢性腎臓病になっていた
  • PPIを使用していない人1万160人中、慢性腎臓病になった人は1382人だった
  • 1日2回PPIを服用している人は1日1回服用している人より慢性腎臓病になるリスクが高かった

ということです。これは統計学的にPPIの服用と慢性腎臓病 (CKD) の発症リスクは有意に関連があることをこの論文は伝えています。

PPIは認知症との関連も指摘されています

腎臓病も嫌な病気ですが、他にも有名な副作用あるいは発症リスクが高まる病気があります。多くの方が自分がなったら、嫌だな〜と考えている「認知症」。この認知症って胃薬のつもりで飲んでいたPPIで高まることを示唆した論文があります。

これまたJAMAの関連医学誌JAMA Neurologyに掲載された「Association of Proton Pump Inhibitors With Risk of Dementia」(JAMA Neurol. 2016;73 (4) :410-416.)です。ドイツではPPIの処方がここ10年で4倍に増えたことに対する批判がありました。そこでドイツの公的保険制度を記録を調べ前向きの調査によって結果、逆流性食道炎や胃潰瘍にPPIを使用していると

PPI使用者の認知症発生リスクは非使用者の1.44倍❗

との驚きの結果を報告しています。週刊現代なら「認知症が1.44倍❗」と書くでしょうけど、定期的にPPIを服用している人と定期的には服用していない人を比較したものですから、一時的に服用する場合は問題にはなりません。

またPPIを長期に渡って服用していると、変形性関節症・尿路感染症・深部静脈血栓症になりやすいとの論文もあります。「Confounding in the association of proton pump inhibitor use with risk of community-acquired pneumonia.」(J Gen Intern Med. 2013 Feb;28 (2) :223-309)によれば3ヶ月PPIを処方されていた人はなぜか全く関連がないような前述の病気になりやすいことが判明しています(どこか統計学的な間違いがありそうですけど、私は発見できませんでした)。

タケプロン・パリエット・オメプラールなどのPPIを服用している方、ぜひ主治医にこの副作用を聞いてみていください⋯主治医が勉強熱心か勉強不足か判定できますよ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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