イソジンの効果はウソ?うがいをしても風邪の予防にならないよ❗

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カゼの噂に「イソジンでうがいをしても風邪を予防する効果は無い」との話を耳にして長い年月が経過しました。

うがい薬としてのイソジンのブランドに関して明治(あれっ、明治製薬じゃ無いんだ)とシオノギ製薬、ムンディファーマ間でパッケージのデザインをめぐって裁判沙汰が生じたのが、本年2016年2月でした(インフルエンザ等の流行期になんで揉めるのよ)。

イソジンを風邪の予防に使っても効果はない??

実は以前よりイソジン(成分としては「ポビドンヨード」が正式)でうがいしても、あんまり効果無いんだよね⋯そのうちに保険診療じゃ処方できなくなるんだよね的な話は医師間でも出回っていました。

実際に2014年から風邪の予防にイソジンは保険診療では処方できなくなっています

医師になった当時「月から帰還したアポロ11号は未知の病原菌を消毒するために、イソジンで丸ごと消毒したんだぞ」との先輩のお言葉(真贋は不明)を素直に受け止めていた、純情な時代の私としては「史上最強の消毒薬はイソジン」と信じていました。

イソジン®×ゴジラ–イソジン®–ムンディファーマ株式会社

http://www.isodine.jp/godzilla/

ブランドのリニューアルとして企画されたそうですが、ゴジラがイメージキャラクターだったなんて、全く知らなかったですww

医療用ポビドンヨード製剤として1961年に厚生省の承認を受けたイソジンは今でも医療現場で大活躍をしてますが、感染症予防に対する効果はウソじゃないの?との話もありますので、きちんと検証してみます。

京都大学で研究によれば、イソジンのうがい効果は無かった、との引用が多数ありますけど⋯

イソジンによるうがい効果はウソだよ、と書かれたサイトを多く見かけます。

それらのサイトでは「「2002年から2003年にかけて京都大学でうがいは風邪の予防になるか」の研究が行われ、その結果「イソジンによるうがいの効果は無かった」との意味合いで書かれています。

しかし、このほとんどが「イソジン効果なし」の元の論文を明記していません。一般常識を覆す記事を書く場合はくれぐれも一次ソース、あるいは信頼たる論文を明記してくださいませ。

「イソジン効果なし」説の根拠となっている論文はコレ

これらの元ネタとなった論文はPrevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling(日本語訳:うがいによる上気道感染症の予防)American Journal of Preventive Medicine November 2005 Volume 29, Issue 4, Pages 302–307)です。

この医学論文によれば「水うがい」「ポピドンヨードうがい(イソジンうがい)」「コントロール」の3群にグループ分けしたところ風邪を引いた人は「水うがい」<「コントロール」<「イソジンうがい」との結果になりました。

つまりイソジンでうがいをしても、なーんにも効果が無かっただけでなく、水でうがいをした人よりも風邪をひきやすかったのです。これがイソジンでのうがいの効果は風邪予防として期待できない、って話になった次第であります。

本来ならば同様の研究や追試が望まれるところですが、探すことはできませんでした⋯だってイソジンの製造元でさえあえて反論はしてませんからね❗

「イソジンでうがい」の正しい使用方法を読むと⋯

ブランド問題は置いといて、現在イソジンを取り扱っているメーカーのサイトを見て、こりゃ愕然としたよ❗

風邪やインフルエンザが流行しているとき、風邪をひいたとき、のどが痛いとき、体が弱っているときなどはイソジン®うがい薬でうがいしましょう。

イソジン®と感染症のQ&A

だって。

これって完璧に予防になります、って多くの皆さんが信じ込んでいるイソジンの効果を強く主張していないじゃん。すでに風邪をひいて喉が痛い、大声?を出して喉が痛い時の使用を勧めているってことは、予防効果にはならないのでは。さらにツッコむと「風邪やインフルエンザが流行しているとき」では、本当にイソジンに予防効果があるのなら、効果・効能として「風邪やインフルエンザの予防に」と記すはずです。なんだか怪しげになってきたぞ、イソジンうがいの効果。

2020年8月6日追記
新型コロナ感染拡大中に大阪府知事のイソジンに関するトンデモ発言がありました。

【大炎上】「イソジンは新型コロナ感染症に効果があります❗」の吉村知事を庇ってみた。

【大炎上】「イソジンは新型コロナ感染症に効果があります❗」の吉村知事を庇ってみた。

お時間のある方、お読みいただけるとうれしいです。

イソジンの秘密

「イソジンスクラブ液7.5%」は手術前の手洗いや手術するところの皮膚の消毒に今でも医療現場でしっかりと使用されています。しかし、使用上の注意として「粘膜には使用しないこと」と添付文書には書かれているのです。

うがいをする目的は喉をばい菌から守るため。だけど喉って粘膜じゃん❗

うがい薬として販売されているイソジンもポピドンヨードが主成分ではあるのですが、医療機関の使用目的とは異なり「喉の粘膜の炎症を抑える」ことが主目的になっているとしか解釈できません。腸の常在菌の大切さが重要視されているように、喉にも常在菌がいます。この常在菌は、いわゆる「善玉菌」の役目を果たしていると多くの医療関係者は考えています。イソジンで綺麗さっぱりバイキンをぜーんぶ綺麗にちゃうと、喉を守ってくれる細菌叢も死なせちゃうことになります。だからこそ京都大学での研究のような結果になったワケです。

無色透明タイプのイソジンクリアなる製品には、有効成分としてセチルピリジニウム塩化物水和物 250mg、グリチルリチン酸二カリウム 250mgですのでポピドンヨードは入っていません。

このように感染症予防としてのイソジンによるうがいは疑問点だらけですが、うがい自体の感染症予防効果も本当なのか、少々疑問を抱いています。口腔粘膜自体にバイ菌の侵入を防ぐシステムがあり、粘膜のバリアを突破したバイ菌に対してもマクロファージ等によって防御システムが稼働します。風邪をひいて咳をした人の体液を吸い込んじゃった(医師は患者さんの喉を見るときによく経験します)場合に即うがいをすることはそれなりに効果があるとは思いますけどね。

うがい関連エントリー⋯こんなのはいかがでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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