ディフェリンという処方薬が日本で認可されたのが、2008年。その後次から次へと保険で使用できるニキビ治療薬が登場してきました。
BPO配合の「ベピオゲル」、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンが入っている「デュアック配合ゲル」、アクアチムやダラシンの抗菌作用に抵抗するニキビ菌に対する「ゼビアローション」などです。
この記事ではニキビの特効薬なのに間違った使用法が多いディフェリンを取り上げます。
本記事の内容
にきび治療の世界基準
ディフェリンという処方薬が日本で認可されたのが、2008年です。処方薬は薬自体を宣伝することは禁じられていますので、柳原加奈子さんが看護師さんの服装で「お医者さんに相談を}といっているCMを見かけた方も多いと思います。これはこのディフェリンを宣伝しているのです。
今までにきびの治療薬は保健薬の範囲では全く進化をしていませんでした。私たちのように美容皮膚科を標榜しているクリニックではこの薬に含まれる外用レチノイドを使用したニキビ治療が画期的な効果を上げる反面、保険診療外の治療になってしまうので治療費が高額になる傾向がありました。にきびの好発年齢は思春期ですので、そんなにお金があるわけがありません。
また治療する医師サイドも「洗顔を良くするように」「青春のシンボル」「大人になる過程の生理現象」なんて病気として扱わない傾向もありました。一方赤く腫れたニキビが繰り返し出現する為に、抗菌剤を数年間も継続させる医師もいました。
追記:この記事を書いたあとに次から次へと保険で使用できるニキビ治療薬が登場してきました。BPO配合の「ベピオゲル」、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンが入っている「デュアック配合ゲル」、アクアチムやダラシンの抗菌作用に抵抗するニキビ菌に対する「ゼビアローション」などです。しかし、難治性のニキビは新しいニキビ治療の塗り薬が登場しても、そうやすやすとは軽快しない場合も多いのです(2016年5月28日追記)
この薬が効果的なにきびの状態は
ディフェリンはアダパレンというレチノイドから誘導された物質が主成分となっています。メカニズムは毛穴のつまりを取り除くという単純な作用によって、にきびの前段階の微小面靤がしっかりしたニキビになるのを防ぎ、できてしまったにきびの治りを早くします。
こんなメカニズムです。
赤く炎症を起こした状態のにきびはディフェリン単独で治療することは難しいの抗菌剤の服用または塗布が必要となります。つまりできてしまったニキビよりニキビになりそうな段階で使用することが一番効果的なのです。
アダパレンの効果は皮膚の角層を薄くして毛穴のつまりを防ぐということを知った患者さんが「ひょっとしてニキビ跡にも効果があるのでは?」と考えて一生懸命凹んだニキビ跡や赤黒く残ってしまったニキビ跡に継続使用している場合がありますが、全く効果はありませんので、ご注意ください。
ディフェリン・ゲルの副作用80パーセント?
この薬はなんと副作用発現率80パーセントの症状があります。皮膚が赤くなる紅斑と呼ばれる症状とヒリヒリ感です。また乾燥も非常に高く出現する副作用とされています。
しかし、この薬のメカニズムは角層を薄くして新しい皮膚をしたからどんどん新生させる働きですので、上記の症状は副作用というよりは随伴症状と解釈した方がいいと思います。
副作用も使っている間に少なくなります。
ほとんどの方は使用して数週間でこの気になる副作用?は治まってきますので、治療途中でくじけそうになったら是非主治医に相談してください。
その症状をどのように説明するかによって主治医の知識と人柄、にきびに対する取り組む姿勢がわかります。ただ単に「にきびの薬です、ハイ」と渡すだけの医師ではあまりあてにならないとお考えください。
医師の指導の間違いで多いのが塗る順番です
・洗顔後、化粧水を塗ってからディフェリンを塗る
・使用は一日一回寝る前の洗顔後に塗る
・明らかに感染しているニキビはディフェリン単独では無理
・にきび跡には効果が無い
このあたりを十分に説明していない例を何回も経験しています。
ディフェリン・ゲルは嫌なデータも存在します
妊娠している人または可能性のある人には禁忌(禁止より強い言葉とお考えください)となっています。それは海外で催奇形性が認めらた報告があるためです。ここまでディフェリンとかアダパレンとかレチノイドとかさらっと書いてきましたが、誰でもしっているビタミンAの仲間です。
ビタミンというと体に良い栄養素と単純に思ってしまいますが、ビタミンAは脂溶制といって水にはとけない特徴があります。ビタミンAの過剰摂取は水頭症・口蓋裂・奇形児の発生が高まると報告されています。なかには3.5倍との報告もあります。
実際にディフェリンによって上記のようなことは日本では報告されていませんし、海外の報告もアダパレンとの関連が非常に強いものではない、という解釈が一般的です。
でも、万が一のこともありますので、妊婦さんや妊娠の可能性のある方は控えるべきですね。
Minor malformations characteristic of the retinoic acid embryopathy and other birth outcomes in children of women exposed to topical tretinoin during early pregnancy.を参考にしました。Am J Med Genet A. 2005 Jul 15;136 (2) :117-21.
ディフェリンの添付文書に、こそっと書いてある副作用
患者さん向けのパンフレットにこっそり怖いことがかいてあります。「同じ系統のおくすりを実験動物にしようしたところ精巣 (睾丸)に影響があったという報告があります」となっています。
これについて徹底的に調べましたところ、レチノイドを主とした飲み薬のアムノレイクという白血病の治療に使用される薬による動物実験で精子形成能力に異常をきたすことが報告されていました。
ディフェリン・ゲルのにきび治療使用に対する結論
軽症のにきびの治療はディフェリンで決定です。副作用は妊娠するときに使用しなければOK、カサカサ・ヒリヒリ・赤みはほとんどの方が経験するけど長期間に渡って続くものではありません。しかし、にきびに悩んでいる方はにきびの様々な段階の症状がまじりあっているのが一般的です。
病期によっての薬の使い分けが医師の腕の見せ所です
にきびでなんで小まめに通院しないといけないの?なんて言わないで、落ち着くまでは二週間に一回、少なくとも一か月に一回は通院して医師のチェックを受けて下さい。
もちろん、にきび治療の経験豊富で熱い思いを持った医師じゃないと「ハイ、薬」と処方箋を渡されるだけになりますからご注意を。
追記 2015年4月からついに過酸化ベンゾイル (BPO)を主成分とした「ベピオゲル」が保険診療で使用することが可能となりました。関連エントリー 【朗報】ニキビ治療の新薬「ベピオゲル」保険適用、「BPO 過酸化ベンゾイル」が主成分、世界標準のにきび治療が可能に❗をご参照ください。これで日本でもディフェリン+ベピオゲルの組み合わせが保険診療で最高のニキビ治療法となります。
追記 2015年5月から過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンを主成分とした「デュアック配合ゲル」が保険診療で使用することが可能となりました。
2016年2月3日追記