子宮頸がんワクチンは、国側のハッキリしない判断により、副作用・副反応に苦しむ方が出てしまったことが問題となっています。
今回はワクチンの効果についてではなくワクチンをビジネス面から考えてみます。
製薬会社が大儲けしてんじゃないの?接種する医療機関が儲かってんじゃないの?という視点からワクチンをビジネスとして評価してみます。
本記事の内容
ワクチンビジネスは本当に儲かるのか?
SNSの広がりによって都市伝説・陰謀論は広がり続けています。その中で人気?の説のひとつに製薬会社によるワールドワイドな巨大ビジネス・病気をばらまいてワクチンで儲けている、というのがあります。
巨大な製薬会社の陰謀??
世界中の製薬会社の売上高のランキングです。日本ではダントツの武田薬品でも世界規模で見てみると12位で、ベスト10にも入らないのです。巨大製薬会社はファイザーがダントツであることがわかります。
では、ワクチンに限って売上高を調べてみました。
こちらは世界の製薬会社トップ6のグラクソ・スミスクライン(子宮頸がんワクチンのサーバリックスを製造)がワクチン売上ではトップ1企業となっています。
もう一つの子宮頸がんワクチンであるガーダシルはメーカーは日本ではMSDと呼ばれていますが、製薬会社トップ3のメルクの日本における子会社です。MSDはワクチンに限っていえばトップ4となっています。
このように世界の巨大製薬会社がワクチンという分野でもしのぎを削っています。
追記 2014年10月25日 今年もエボラ出血熱、日本ではデング熱が話題になりました。ウイルスを製薬メーカーがバラまいている、なんて陰謀論を拡散する人がいて、それをまた信じちゃう人もいます。
ワクチンの開発費は社運をかけたくらい莫大なものです
ワクチンの開発は非常にリスクが高いものとされています。様々なプロセスを経て開発しても認可を受けることができるものは、製薬会社が完成させ製品化にたどり着いたもののうちの10分の1未満とされています。
研究自体に年間数千万ドルかかるといわれており、巨大企業で無いとワクチンの開発は資金的に無理なのでどうしても大きな製薬会社がワクチンを開発するという図式になってしまいます。またワクチンが完成するには平均10~15年程度必要とされていますので、大量の資金を長期間維持できる企業なんてほんの一握りになることはしょうが無い状況です。
一般的に言われているところでは一つのワクチンの開発費の合計はなんと10億ドル!日本円で1000億円です。もちろんせっかく完成したワクチンが人体に対する臨床試験で期待したほど効果がなかったり、副作用の問題で認可されないこともあります。
つまり開発に要した時間と費用が全くの無駄になる可能性も高いのです。
ワクチンの開発秘話っていうか、ギャンブルに近い開発費用の投資
認可を受けたワクチンを大量に生産していくには製造設備だけで5億ドル近く必要なことが多いのです。別に私は製薬会社の肩をもつわけではありませんが、ワクチンを開発して製品化するのはギャンブルに近いものがあり、それも莫大な資金を要するギャンブルです。
昔から日本では「くすり九層倍」という言葉があり、実際の原価は安く10倍の値段で売れることを指していますが、製造原価に限って言えばその様に言えるかもしれません。でも、車だって原価を鉄に換算したら10万円にもならないのではないでしょうか?それが数百万円で売られるのですから、究極の付加価値ビジネスというとらえ方もできるかもしれません。
開発費・設備投資を考えると決して大儲けできるビジネスとは言えないようです。もちろん当たれば大きく儲けることはできるでしょうが。
ワクチンを接種して医療機関は儲かるか?
実はあまり儲かりません。保険医療機関での初診料は2700円、一般の方はその三割の810円を自己負担として支払っています。問診して、カルテを作成して、聴診して、血圧を測ってもそれは全て初診料に含まれています。
皆さんが一番多く経験したと思われるインフルエンザワクチンは保険外の診療とされ、一般的には3000円から4000円程度の料金設定になっていると思います。この価格の違いは自由診療ですので医療機関が勝手に決めていいことになっています。医師会等が一律料金を定めたり、強制した場合は違法となります。
インフルエンザワクチンの仕入れは一本1000円程度です。この価格も全国統一ではありませんし、薬品問屋さんによって違います。もちろんメチャクチャ大量に仕入れた場合はもう少し安くなるのかもしれませんが⋯。原価を1000円として3000円でインフルエンザ注射をした場合、利益は単純計算で2000円になります。
この価格には診察料・注射に対する技術料等すべてが含まれているのです。ここに初診料や再診料を上乗せすることは禁じられていますので、医療サイドとしてはインフルエンザの予防接種を行うより、通常の患者さんを診察している方が利益はでるのです。
つまり、医療機関が予防接種で法外な利益を上げることはできないのです。
結局、製薬会社にとっても医療機関にとってもビジネスとしてとらえた場合、ワクチンはあまり儲からないのです。
ワクチンの意義は個人が感染しないことはモチロンですけど、感染を拡大しないということです
ワクチンは流行性の疾患を流行させない効果はあります。本人が感染しても軽度の症状で済む場合もあります。全く感染しないこともあります。本人の為の意義ももちろんありますが、他の人に移さないという側面も大きい意義だと思います。
万が一、今年流行している風疹に罹ってあなた自身は重篤な症状がでなくても、あなたから第三者が感染してその方が妊娠中であったなら生まれてくる赤ちゃんに障害が出てしまうのです。ワクチンは自分だけの問題ではなく、社会全体で考えていかなければいけない問題です。
海外では注射する医師が手袋をすることが多い様ですが、日本ではあまり見かけません
理由としては患者さんの血液が自分に付着するのを外国の医師は嫌うようです
厚生労働省が解りやすい言葉で国民に必要であるワクチンとあまり必要でないワクチンがもしもあるならそれなりの説明を行うべきだと考えています。
当院ではワクチン接種はインフルエンザと肺炎球菌のみ常時行っております。それ以外の小児のワクチンは小児科で、子宮頸がんワクチンは婦人科で受けることを推奨しています。
ワクチン接種は集団生活をしている私たちにとってはマナーと当院では解釈して行っています。
2014年10月25日になんどワクチンの有効性を説明しても理解してもらえないので、医者儲かる陰謀論を否定するために一部追記しました。