ミトコンドリアってなんだっけ⋯調べていくとダイエット・サプリの元ネタのオンパレード

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忘れられない言葉⋯ミトコンドリア

中学・高校の教科書にでてきて今の自分の生活に全く関係ないのに、強く記憶に残っている名詞ってありませんか。私は「石綿付き金網」「蘇我馬子」「ミトコンドリア」がなぜかしら記憶に強く残っています。

ミトコンドリアは医学と強く結びついていますので、私の仕事と全く関係なくはありません。

最近、このミトコンドリアというワードが、新聞や雑誌またはネット上でやたら散見されます。そういえばミトコンドリアってどんなものだったっけ?と自分の勉強の復習の意味を含めて解説していきます。

生命活動のもとのエネルギーを作っているミトコンドリア

人間の体はブドウ糖が化学反応を起こしていき、ピルピン酸とういう物質になって、そのピルビン酸がATPを生産するクエン酸回路に入りそこで燃焼して最終的に炭酸ガスと水になる、この一連の流れで生きていくためのエネルギーを作っています。このエネルギーを発生させる原料である

ATP(アデノシン三リン酸)を作っている器官がミトコンドリアです。

体の中で起きているATPに関連する他のシステムとして

解糖系⇒グルコースをピルビン酸に変化させエネルギーの元を産生する、無酸素状態でも起きる反応(細胞質基質に存在)

オルニチン回路⇒アンモニアから尿素を生成する(ミトコンドリア内に存在)
この反応の途中でできたフマル酸はオキサロ酢酸になって糖新生に使用される

糖新生⇒たんぱく質が分解されアミノ酸になったあと糖原生アミノ酸として糖分を生成する
肉食系の動物はこれによってエネルギーのもとのグルコースを作っています(ほとんどが肝臓内で行われる)解糖系の逆の働きをします

クエン酸回路⇒ATPを産生する(ミトコンドリア内に存在)があります。詳しくは後述します。

Mitochondria-1

http://www.tutorvista.com/biology/function-mitochondria

ミトコンドリアはこのように細胞の中にあります。

Mitochondria-2
信州大学遺伝子診療部のHPよりお借りしました

ミトコンドリアは自分が存在している細胞とは別に独自のDNAをもっています。これは太古の昔に私たちの細胞が他のミトコンドリアとして存在していた細胞を飲みこんだためにこのような構造になったと考えられています。

ミトコンドリアはATP (アデノシン三リン酸)と呼ばれる生き物の活動のエネルギーを作っている器官なのです。つまりATP生産工場と考えると理解しやすいです。

このATPを生産する過程をクエン酸回路といい、医学部で学ぶ基礎医学の一分野である生化学の一番の山場といえます。その当時は下の表に出てくる物質名を全て暗記したものですが⋯。
クエン酸サイクル、TCA回路、TCAサイクルとも呼ばれますがクエン酸回路が一番使われている呼び方です。

tca
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Citric_acid_cycle_with_aconitate_2.sv
Narayanese, WikiUserPedia, YassineMrabet, TotoBaggins. This file: Calvero作

クエン酸回路を回すのに必要なのが補酵素

ATPの元となるピルビン酸はそのままではクエン酸回路に入り込むことができません。補酵素とピルビン酸が結びついて初めてクエン酸回路にクエン酸回路に入ることができます。補酵素で有名なのは補酵素A、コエンザイムA(CoA)って聞いたことがあるのではないでしょうか?別名パントテン酸、これがピルビン酸がクエン酸回路に入り込むために絶対必要な物質なのです。

補酵素は他にもたくさんあり、殆どがビタミンと呼ばれるもので構成されています。例えばビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、ビオチン、葉酸、ビタミンB12なども補酵素の仲間でビタミン補酵素と呼ばれています。その他キノン補酵素と呼ばれるグループもあります。ですからクエン酸回路を回すにはビタミンは絶対的に必要なのです。

このようにしてミトコンドリアは人間が生きてく為のエネルギーを作っているとっても重要な器官なのです。ですから、高校の生物・化学の授業で強調されていたのですね。

今回のこの一連の流れはダイエット理論に関連しています

簡単に手軽に代謝を活性化して余分な脂肪を分解していくことが、痩身としての意味のダイエットには要求されます。

・脂肪を分解するために脂肪をエネルギー源として使用する
脂肪は分解されモノグリセリドと脂肪酸に分解されて、さらにアセチルCoAになります。
このアセチルCoAはコエンザイムAにアセチル基がくっついたもので、前述のクエン酸回路で重要な働きをします

・代謝を活性化して早く余分なエネルギーとして消費する
ミトコンドリア内のクエン酸回路を活発にする

そこでネットでクエン酸回路の関連物質とダイエットという言葉を組み合わせ検索したら、出てくるは出てくる様々なダイエット。


クエン酸ダイエット
ATPダイエット
補酵素ダイエット
酵素ダイエット
ビタミンB1ダイエット
オルニチンダイエット
とどめは
ミトコンドリアダイエット
キリがありません。

この生化学に登場する専門用語を含むダイエットがこんなに存在しています。生化学に基づいた理論を展開しているこれらのダイエットですが、効果はどうなのでしょうか?何とはなしに理にかなった方法に感じてしまいます。

これらの用語で検索を続けると長寿の秘訣であったり、様々な病気が治ったりする方法も見つけることができます。
もちろんお決まりのがんが治ってしまうっていうものもありました。笑

しかし、これらのメカニズムが解明されるためには世界中の天才の才能と努力をもってしても100年以上かかっています。そうやすやすとダイエットや健康の特効薬や治療法が見つかるとは思えません。もちろんリスクが無い方法なら試しても構わないとおもいますが、中には非常に高額なサプリがあったりしますのでご注意ください。

サプリの中には使用する場合には医師にご相談くださいと記入してあるものもあります。その様な注意書きは非常に良心的なことだと思います。しかし、このブログを書く際にネット上で私が見つけたサイトにはそのサプリを医師が作っており、独自の治療法を主張して、さらに学会に類似するものまで設立してあるものがありました。(正当な学会は厚生労働省や文部科学省が認定しています)

一般にエビデンスが得られてない治療・健康法を取り入れる場合はその理論は十分裏付けが取れているのか、複数の医師・専門家によってその主張は支持されているのか、ある程度は疑ってかかる必要があります。

今度はどんな専門用語を使用した健康法・ダイエット法がでてくるか、少し楽しみです

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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