体重減少を目的としない脂肪吸引の危険性についてFDAはしつこく注意喚起しています。
アメリカと日本とでは医療はもちろん美容に関する環境が異なりますが、その点を踏まえて脂肪吸引について医師が掘り下げます。
本記事の内容
脂肪吸引に対するFDAの見解
脂肪吸引はあくまで気になる部分の脂肪を減らす、見た目の形状を整えるものであり痩せることを目的とした治療ではありません。
このくらいの形状を整えるために行われるべきです。
体重減少を目的としない脂肪吸引術に対してもFDAはここくらいしつこく注意を喚起しています
- 感染症
- 脂肪塞栓
- 内臓穿孔
- 血腫
- 神経圧迫と神経麻痺
- 皮膚の壊死
- 火傷
- 体液の不均衡
- 麻酔の毒性
さらに脂肪吸引は肥満の対策ではなく、体型を整える治療であると定義付けています。
重篤なリスクとしてこんなに沢山列記されています。それでもアメリカでは多くの人が毎年脂肪吸引を受けています
更に詳しい情報はFDAのサイトを参照ください。
ここにかなり詳しく説明が載っています
私が実際に見学した米国の美容外科事情
今から10数年前に脂肪吸引の研究の為にアメリカの複数の病院・クリニックを見学させてもらったことがあります。そこで日本とアメリカの美容医療の大違いが一つありました。アメリカでは大がかりな美容治療を行った場合、入院を推奨するのですが入院施設がないクリニックもあります。
その様な条件のクリニックは治療が済むと裏口に救急車が待機しています。その救急車は術後の患者さんをしかるべき病院に搬送します。手術を担当した医師はその病院に当日、又は翌日に必ず診療にいき術後の経過をチェックして退院時期を判断します。ほとんどの症例は翌日退院するのです
日本で美容手術を受けた患者さんの経過観察のための入院を受け入れてくれる施設は私が知る限りありません。
実は皆さんが考えているより大がかりな治療です
つまり、安全を確保するため少なくても一晩は経過を観察する必要がある手術・治療は日本ではクリニックレベルでは不可能なのです。
当院では脂肪吸引手術は十分な経過観察が必要な治療と考えていますので、現時点では行っていませんし、今後も行う予定はありません。
脂肪吸引手術による死亡リスクは日本でははっきりしません
脂肪吸引の死亡率といえば、脂肪吸引を受けたで死亡する確率と誰もが理解するはずなので問題はないのですが、厳密には死亡率というのは、「死亡率」=「一定期間における死亡者数」/「総人口」を意味します。ですので、脂肪吸引による死亡率を、脂肪吸引による死亡リスクと表記しますね。
よっぽど医療サイドに不注意があって刑事事件化されない限り、マスコミで脂肪吸引での死亡が取り上げられることはありません。
法律上は異状死であるので警察に届ける義務がありますが、特に手術中でなく帰宅してからの死亡は合併症として扱われ事件化することが少なくなってしまうのです。
もちろんトラブルはトラブルですので、民事で係争中のものは存在するようですが、その数を調べることは事実上不可能になっています。
脂肪吸引の死亡リスクは海外では報告されています
FDAが公表しているデータですと10万回脂肪吸引がおこなわれると20ー100人が死亡しているデータが存在するとあります。
単純計算すると最悪の数字は1000人に一人死亡していることになります。そこには追記として自動車事故で死亡する人は10万人中16人とあり、脂肪吸引の死亡リスクと比較してみてください、とあります。
最もすくないものは10万回の治療で3人の死亡となっているものもあるのですが、FDAはとにかく脂肪吸引は外科治療であり、死亡を含む重篤なリスクがあることを忘れないようにとくどいほど強調しています。
今後の余計な脂肪を取り除く対策法は
脂肪を減らすことは多くの方が望む、しかし実現が難しい厄介なことです。FDAも厚労省も適切な食事と適切な運動を第一に推奨していますが、それで思い通りの体型が得られないからみなさんが悩んでいるのです。
安全に部分的に脂肪を取り除く方法は日本でも確立した治療となっています。
しかし、肥満全体を改善するにはやはり適切な食事管理と運動(別にいきなりジョギング・水泳を始める必要はありません)を行う必要は絶対的な条件になってしまいます。脂肪吸引にしろ、脂肪融解法にしろ部分的に体型をシェイプアップする手段と考えていただいた方がいいと思います。