一般に黒子(ホクロ)と呼んでいる皮膚疾患に対しての明瞭な定義はありません。もちろん医学的な判別はありますが、患者さんが黒子と呼んでいるものの病態は様々です。ですから「黒子を取ってもらえますか?」と受診されてもそれがはたして、私たち医療サイドが黒子と予想するものとはかけ離れた疾患であることも珍しくありません。
本記事の内容
医学的な黒子
皆さんが黒子と呼んでいるものは出っ張っているいないは別として一センチくらいまでの黒色または茶色系の丸い色が付いた皮膚の変化をさしていることが多いと考えています。
患者さんが黒子と呼んだ皮膚病変を診察させて頂いた場合、私たちは専門用語では「色素性母斑」と呼んでいます。(厳密な病理診断では母斑細胞が認められない場合もありますが)このあたりを患者さんにわかりやすく理解してもらうためには、子供の時に出現し出して、年を取るにつれて数が増えたり大きくなってくる顔を含め全身に現れる円形の黒い斑点と考えていただければ十分です。そんなの誰にでもあるよ、という方も多いのですが、将来的に悪性黒色腫になる可能性も否定できないために、テレビや雑誌で大々的に興味深く取り上げられることがあり、翌日の外来は悪性黒色腫を心配した患者さんでいっぱいになることも珍しくありません。
本人にとっては大問題
人相でその方の将来を占うものがあります。流派によって幾分の違いがあるのですが、顔の黒子が運命を左右するとする占いもあります。
そこで顔に存在する黒子を取り除くことによって、ご自分の将来の改善ができるでは?と思われるのも当然のことではないでしょうか。
一番多いのは美容的な観点からの治療希望です。多発性の方や大きめの黒子が顔の目立つ箇所にある方は心底悩んでいます。鼻の下、鼻の脇などにある場合は人の視線が非常に気になるようです。
私の経験では顔中に多発する黒子が気になって気になって人に会うのさえ避けた人生を送っていた女性が、ひょんなことから当院のレーザーによって黒子を解消できることをしったために、勇気を振り絞って治療を開始しました。
顔上に約100個くらいの黒子があったために、皮膚に対するダメージと費用の問題から一か月に10個程度取り除く治療を行いました。その方は当院からは離れた千葉から毎月来院していただき、一年後には目立つ黒子はほとんど除去すること出来ました。最終治療が終了した時点で御自分の顔を鏡でみて、一時間くらい泣き続けました。
私たちからは想像もつかないような、その患者さんの人生を左右するくらい黒子はコンプレックスになっていたそうです。ご主人は奥様が少しずつ黒子が減っていくことには気づかなかったようですが、途中から「なんかお前、きれいになってきていないか?」と指摘され、治療を行っていることは今まで内緒にしていたらしいのですが、勇気を振り絞って治療中であることをご主人に告白しました。するとご主人は「そんなことで悩んでいたのか?費用はオレがだす」と言ってくれたそうです。今までへそくりでやりくりしていた治療でしたが、ご主人に告白して気持ちもすっきりしたし、費用も出してもらってとてもラッキーだったと、後日話してくれました。ご主人が黒子治療の費用をだしてくれたので、ご自分で溜めてきたへそくりはちゃっかり、しわを改善するボトックス治療に使うくらい明るい性格になっていました。
ご本人の感想
とにかく、子供の頃から黒子が多いのがコンプレックスだった。人と話す時も相手の視線が黒子を見ているのではないかと気になってばかりだった。治療を始めてから友人が自分の顔のみて怪訝な表情を見せるのが面白く感じられた。治療後半になると怪訝な顔をする友人にはっきりと黒子の治療をしていることを話せるようになった。以前の引っ込み思案の私には考えられない行動だったた感慨深く話してくれたのが印象的でした。