PM2.5が長期的な被ばくによって健康に影響を与えることは知られていますが、西風にのってやってくる黄砂も直接健康被害を及ぼします。
布団や車が汚れるだけでない黄砂の恐怖
九州大学の北園教授が1999年~2010年にかけて脳梗塞で病院に運び込まれが患者さん7429人を詳しく調べたところ、なんと黄砂が飛んできた後、当日から二日後のかけて脳梗塞の発作を起こしている人が多いことを発表しました。分析方法はオッズ比というものを使用していますの間違いないデータと言えます。これを受けて福岡総合病院は2012年から3年間データを蓄積して心血管系の病気の発症と黄砂の関係を調べることを計画しています。
これは黄砂観測時血栓性脳梗塞の発症リスクが高まることを表しています
北園教授の調査は後ろ向きとよばれる今まで蓄積されたデータを引っ張りだして検討する方法です。福岡総合病院の調査計画は前向きの研究とよばれ、予め何を調べるかをはっきりしておきそれに必要なデータを将来にわたって収集して、分析していく方法です。医療の調査論文はこの「後ろ向き」と「前向き」という言葉がでてきますから、今後知っておくと医学データを目にしたときにどんな研究であったかわかりますので、頭の片隅に入れといてください。
黄砂に対しての注意はこのように出されています。
福岡市黄砂影響検討委員会の資料よりお借りしました。
PM2.5の歴史
大気中の汚染物質を測定するため環境省が12年前から国内の35か所で測定しているのがPM2.5です。この値は測定を始めてから全国的には年々減少していました。でも九州地方だけ時々測定値が飛び上がるのです。よくよく調べてみると中国大陸から風向きが日本に吹いてくる時と一致していることがわかりました。つまり、中国から大気中に直径2.5μmの汚染物質が偏西風にのって日本に侵入してくるのです。アメリカではこのpm2.5について1979年~83年にかけて、なんと全米50州で120万人を対象に健康被害についての調査をしていました。結果は肺癌の死亡率は8%アップ、心疾患の死亡率は6%増加することが判明しました。
ハイリスクの方はやっぱり注意が必要です
PM2.5の健康被害はたいしたことない、と受け止めている方も多いようです。「たばこの方がよっぽど悪い」などの言い方をして。でも、喘息やCOPDと呼ばれる閉塞性の肺の病気を持った方や心血管系の病気を持っている方はそうはいきません。基本的には濃度が濃くなることが予想される日は外出を控える方が安全です。鳥インフルエンザも注意が必要ですが黄砂・PM2.5も西からやってきます。偏西風は6月まで吹くので気を付けてください。
上記は日経メディカルという医療関係者向けの月刊誌を参考とさせていただきました。