週刊誌の広告は電車の中吊り広告や新聞広告で良く見かけます。最近多くなっているのが医療に関する記事であり、とくにがん治療を扱っているものが増えています。しかし、記事なのか、広告なのか分かりにくいものもあります。
当院の運営に協力してくれている永田医師の論文
当院一般診療担当の永田医師(東大病院所属)は通常、医療関係者以外には全く面白みのない発がんのメカニズムやがんの治療に関する論文を書いています。今回私の影響でしょうか?俗っぽいネタを選んで論文を書き上げ、先日格調高いオックスフォード出版から出ている「Japnese Jornal of Clinical Oncology」というがんの治療専門誌に「週刊誌における癌報道、その影響と課題」(原題はCancer Articles in Weekly Magazines:Useful Media to Deliver Cancer to the Public?)を発表しまして、医学界でチョッと話題になっています。日経メディカルという医療関係者向けの雑誌でもその論文が日本語に訳され取り上げられています。ザックリの内容はRobust Health(http://robust-health.jp/article/literacy/000300.php)で日本語で読むことができます。
だんとつに週刊朝日が「がん」が好き
調査対象に選ばれた雑誌はサンデー毎日、週刊朝日、週刊文春、週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮の6誌です。精力的に雑誌の医療関係の記事と広告を調査しまして今回の論文を書き上げました。医療記事は有名人の闘病体験などが多い様ですが、今回私は記事ではなく、広告にスポットを当てて永田論文を解説します。
私的には以外なのですが、週刊朝日がダントツにがんの広告記事が多いのです。一番少ないのがサンデー毎日の23本、対する週刊朝日はなんと100本もがんに関する広告が掲載されていました。
内容に問題があります
別にがんを治療している施設の広告が載っていても構いませんが、内容に問題があります。特に永田医師いわく、「がんに対する免疫療法を扱った記事が最も多く、これらの記事のほとんどは関連するエビデンスの存在しない奇抜な免疫療法」 (一部略)だったそうです。がんに関する広告のほとんどが疑わしい民間免疫療法を扱っているということです。その手法が結構手が込んでいます。医師法・薬事法に抵触しないように書籍広告として掲載されているのです。つまり、本の広告の体裁をとって医学的に証明されていない独自で特殊な治療法を広告しているのです。ひどいことにどんながんでも完璧に治すことができるという活性化リンパ球療法に関する書籍が、調査したどの週刊誌にも毎週掲載されています。もちろん言論の自由・出版の自由は憲法で明らかにされています。しかし、藁をもすがる状態の病気に悩まされている患者さんに内容を精査しないで掲載する出版社にたいして、常識ある医学の知見をアドバイスする医療関係者が必要と思われます。
ちなみに当院は取材にはご協力しますが、お金を払って雑誌に広告・取材風広告を掲載することはいたしておりません。