インフルエンザワクチンには感染予防や重症化を防ぐ効果が確認されています。
毎年10月からインフルエンザワクチンの接種は開始します。10月1日に誰よりも早く受ける方も多いのですが、中には早めに予防接種をしてしまうと流行するシーズン全期間にワクチンの効果が切れてしまうのでは無いか?そもそもワクチンの効果は何ヶ月続くのか?期間次第では2回打つべきなのでは?、と考えている人もいます。
インフルエンザの流行する期間を見据えてワクチン接種をするには、いつワクチン接種を受ければ良いのかをお伝えします。
本記事の内容
インフルエンザの予防接種は10月1日から開始です
インフルエンザは予防接種法によって、二類疾患に分類されていて、自治体がインフルエンザの予防接種を行うように決められています。つまり、インフルエンザの予防接種は定期接種ということになります。
定期予防接種の対象者は以下になります。
- 65歳以上の人
- 60歳以上65歳未満で心臓や腎臓や肺などの病気が持っている人など
残念ながら上記以外の人は全額自己負担でインフルエンザワクチンを接種することになります。あくまで予防のためで病気に対する治療ではない場合は原則として健康保険は適用されません。でも、なんで子供が無料じゃないのか不思議です。助成金が出る自治体もあります、それは後述します。
毎月高い保険料払ってるのに全額自己負担で受けるからには、予防接種に対する疑問点は払拭しておきたいところ。いつから開始なのか、いつ受けるのがベストなのか、持続期間はどのくらい?といった質問がとっても多いのでまとめて回答しますね。
なお、当院は公的に定期予防接種としていただける金額に合わせて、全額自費のインフルエンザワクチンの接種の料金を決めていますので、周囲の医療機関よりは費用は高めです(5000円です)。
安く済ませたい方はお近くの医療機関にお問い合わせくださいね。
本年も定期接種としてスタートする10月1日に合わせて、インフルエンザワクチン接種を開始します。
そこで気になるのが10月にインフルエンザワクチンを打っても冬の間、流行期間中、ずうっと効果あるの?ですね。
その辺りを少々解説しつつ、私の考え方をお伝えしますね。
インフルエンザの流行状況は一年中???じゃあ、いつワクチンを打てばいいの?
例えば東京都感染情報センターではこのようなインフォメーションをしています。
一年中、インフルエンザの流行状況を教えてくれています。
今年、2019年は9月16日から9月22日の間(第38週)から都内ではインフルエンザが流行し出したことを、9月26日に東京都福祉保健局の報道発表資料で伝えています。
東京都ではインフルエンザはすでに流行しています❗ということであり、いつワクチンを接種すればいいの?では遅すぎかも。いますぐ接種するべきです❗と言わざる得ない状況なんです。
日本ではインフルエンザワクチンはいつ接種するべき、と公的機関が明確に表明していないようです。あったとしても10月から12月中旬と明確なドンピシャ的なスタート時期は書かれていません。
米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention 米国疾病予防管理センター)は10月中にはワクチン接種を行うことを推奨しています。
インフルエンザワクチンはいますぐにでも打つべきであり、少なくとも10月中に予防接種を受けることを私は推奨します。
インフルエンザのワクチンの効果が持続する期間はどのくらい?
早くワクチンを打ってしまうと流行シーズンの後半には効果が無くなるでは?と考えている方も多いのではないでしょうか?
インフルエンザワクチンの効果持続期間は5ヶ月程度と判断されています。
ワクチンの効果を発揮し出すのは接種後2週間、と考える研究者および医療関係者がほとんどです。
これを基準として考えてみましょう。
これは2017年から2018年シーズンのインフルエンザの流行状況です。第48週から翌年第15週の間くらいが大きな山になっていますね。2017年の第48週は11月26日から12月2日までのことで、2018年の第15週は4月8日から4月14日までのことです。
予防接種を10月中に済ませておけば、全シーズンカバーできることになるんじゃないでしょうか?
じゃあ、10月はじめにワクチンを打ったら、後半の数週間は効果ないじゃん❗ってことになります。
10月に入ったらワクチンを打つ心構えをして、10月末まで予防接種を完了すればインフルエンザの流行期間ぜーんぶカバーできます。
ワクチン接種が最優先されるべきは妊娠中の女性(WHO)
定期予防接種の対象は65歳以上ですが、一応順番があるようです。当院の所在地である目黒区では「目黒区インフルエンザ予防接種予診票」という封書が該当者には以下の順に送付されています。
- 昭和29年10月1日以前に生まれた人には9月末には送付
- 昭和29年10月2日以降11月1日までに生まれた人には同様に9月末には送付(以前に生まれて人と同じじゃん、なんで分ける?)
- 昭和29年11月2日以降同年12月1日までに生まれた人には10月末には送付
- 昭和29年12月2日以降昭和30年1月1日までに生まれた人は11月末には送付
と、なんだか複雑な事情が裏にあるのか、なんで9月中に全部発送できないのか、なんて感じの印象を受けてしまいます(これに類似した素朴な疑問を区の担当者との会合で質問して、医師会某理事にフルボッコ的に怒られたのは私です)。
まあ、高齢者から順番にインフルエンザ予防接種を始めましょう、一気に押し寄せると混乱するからね、ということなんだろうと、大人の解釈をしますね、ここは(ワクチンの生産量や区や医師会にもそれなりの理由があると忖度)。
WHOはインフルエンザワクチンを打つべき順番を次のように記載しています。
- もっとも優先度が高い人⋯妊娠中の女性
- 次の優先順位(順不同)⋯6ー59ヶ月の子供、高齢者、特定の病気をもつ人、医療従事者
自治体からワクチンの受診券が送られてきたら、速攻で予防接種を受けましょう。自費の人も自分を守るため、家族を守るため、地域に感染を拡散しないためには早めに予防接種を打ちましょう。
インフルエンザワクチン接種は補助が出るの?
お子さん達に対しての、インフルエンザワクチンは全額自費(任意の予防接種だから)となっている点が目黒区としては残念ですね、他の区では無料あるいは助成金が出ているんだけどなぁ(これもまた医師会から怒られるかも)。
ぜひぜひ、日本国中の自治体は子供のワクチン接種の全額補助あるいは助成金を検討してくださいませ。
妊婦さんへのインフルエンザ予防接種に対して助成を行なっているところもあります。
ワクチンに関して、ご質問がある方はかかりつけ医にご相談ください。助成金などに関してはお住いの自治体にお尋ねください。
お子さんをお持ちの方はこのような一般向けの本も出ています。
黄色い本は医療機関に配布されたもの、後ろの本は私が参考にさせてもらい診察机の横のこっそり常備している保護者の方にぜひ読んでいただきたい一般向けの本です(小児科専門の森戸やすみ医師と宮原篤医師の共著です)。
私は感染症が専門でも小児科が専門でも、産婦人科が専門でもありません。しかし、医師として普通に学んでいればワクチンの重要性は認識できますし(世の中には反ワクチンとかワクチン忌避派が医師でもいます)、地域医療に微力ながら貢献するためには、普通の町にあるかかりつけ医の機能としてワクチン、特にインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン接種を行なっています。
私はインフルエンザ脳症により障害が残ってしまった患者さんのお母さんの言葉が忘れられません。「あの時、私がインフルエンザワクチンのことを真剣に考えていれば⋯」。