患者さんがホメオパシー信奉者だった場合、医師はどのように対応するべきか。

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ホメオパシーというニセ医学があります。

科学的に効果・効能を裏付けるまともな研究論文は存在していません。しかし、自然派と呼ばれることの多い集団には人気のあるニセ医学です。

副作用が無くてプラセボであっても効果があればいいじゃないか、との意見もあります。

しかし、ホメオパシーで病気を治療することによって標準治療を受ける機会を失うこともあります。失わないでよかった命を失わせてしまうようなニセ医学がホメオパシーです。

ホメオパシーが非科学的であることをいくら説明しても理解してもらえない

多くの医師がニセ医学というジャンルがあることは知っていても、どんな種類のトンデモ医療があるのかを深くしっている人は少ないと思います。

常識的な計算能力がある人なら、ホメオパシーなんて効果あるわけ無いじゃん、と判断するのですが、このホメオパシーを取り巻く環境はかなり複雑であり、トンデモ医療を推進している強力な団体もあります。

ホメオパシー推進の主力団体の主宰者が書いた著者を読めば、「こんなのあるわけ無いじゃん」と笑い飛ばせるのですが、この本をお持ちの方はごくごく稀だと思われますので、トンデモ本の代表格である⋯・を紹介しながらホメオパシーの効果の批判を試みますね。

ヒトの体に全く影響を及ぼさないから、ホメオパシーを併用しても問題無いよ、と考える医師もいるでしょうけど、プラセボ以上の効果が期待できるわけがない伝統的な民間療法について少し深堀りしていただけると、今後の診療に役立つと思います。

普通はこの記事を参考にしていただければ、ホメオパシーが全く効果が無いことが理解できるはずです。

偽医療・ニセ医学・の典型「ホメオパシー」とはどのような治療方法か?その2 計算してみればわかるインチキ医療

偽医療・ニセ医学・の典型「ホメオパシー」とはどのような治療方法か?その2 計算してみればわかるインチキ医療

戦いに勝つためには敵を知ることが重要です。頭っから否定しないで、ホメオパシーとはどのようなものか少しばかり解説させていただきますね。

ホメオパシーって何?って方はこちらをお読みください。

偽医療・ニセ医学の典型「ホメオパシー」とはどのような治療方法か?その1 なんでこんな非科学的な療法を信じるの?

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ホメオパシー医学協会とは?

ホメオパシーを普及させようと活躍している団体で「ホメオパシー医学協会」という組織があります。医学がついて協会も名称についてますので、一般の方は私たちが所属する学会の1つだと誤認しがちです。

真っ当な医療系の学会は日本医学会の分科会の1つとして存在しています。

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日本医学会分科会一覧 (http://jams.med.or.jp/members-s/index.html#ha)

当たり前ですけど、ホメオパシー医学協会は日本医学会に属する団体ではないことがわかります。有志によって立ち上げらた勉強会も○○医学会などの名称を使用することもあります。

例えば私も所属している「日本Men’sHealth医学会」の場合、日本医学会のぶら下がり組織ではありませんが、日本泌尿器科学会とタッグを組んでいることが沿革・歴史からわかりますし、役員等の名前を見れば真っ当な団体であることがわかりますよね。

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http://www.mens-health.jp/officer

沿革・歴史はこんな感じです。

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http://www.mens-health.jp/history

一方の日本ホメオパシー医学協会は沿革・歴史からは医学とは全く無縁の方々が自主的に立ち上げた同好会的なものであることがわかります(http://jphma.org/jphma_profile/enkaku.htmlなどをご覧ください)。

さらにこのホメオパシー医学協会はホメオパシーを操るホメオパスを養成する事を主目的とした組織だと断言しても大きな間違いではないと思います。

ホメオパシーの怪しさは「日本ホメオパシー医学協会の予防接種に対する見解」(http://jphma.org/topics/topics_9.html)からも読み取ることが可能です。

予防接種が多くの病気の原因になっている❗と強く訴えつつ、予防接種は免疫が発達していない乳幼児にとっては危険極まりない❗などと、標準医学からはかけ離れたことをおっしゃっています。

これだけでも、ホメオパシーのいかがわしさが十分伝わってくるのではないでしょうか?

真面目に書いているとは思えないホメオパシー大家の著作

反ワクチンというかワクチン忌避派が声が大きいためか、その悪影響を受けてしまっている方が少なくないのが残念です。そんな方は自然派を拗らせて副作用が無いがウリのホメオパシーに走ってしまいがちです。そんな人を診察するはめになってしまった医師はこの本をぜひゲットして患者さんと一緒に読んでみましょう。

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これは前掲のホメオパシー医学協会の名誉会長である由井寅子さんが2000年5月15日に出された一般書籍です。

この本はホメオパシーでホメオパスが使用する全く有効成分が含まれていない砂糖玉(レメディー)の効果効能が詳しく記載されています。

例えば、Lachesis(ラカシス)というレメディーは体の左側が全体的に悪い人に効果があるそうで(なんじゃ、左側全体が悪いってw)、心臓がドキドキする人、更年期障害の人、血圧が高い人、躁鬱症の人(今時こんな病名使わないけどね)にも効果を発揮するそうです。

さらに、

舌をペロペロ出すくせがある人にもホメオパシーのレメディーは効果がある

と書かれています。舌をペロペロ出すくせのある方はぜひお試しくださいませ。

この不思議なレメディー「ラカシス」の挿絵としてメデューサが描かれており、説明に「嫉妬心が強くセックス好き、自己顕示欲が強い。ヘビ女と化している」とも書かれています。その挿絵をブログ上でお見せすることは、間違いなく著作権等に抵触しますのでアマゾンの中古本でゲットしてくださいね。

標準医学を受けることを否定しながら、最悪の場合は現代医学を当てにするホメオパシー

病気になった場合、レメディーを服用すれば病院に行かないで良いですか?との問い掛けがこの本には書かれています。

頭を強打した場合はレメディー(アーニカという名称)を服用していると、後遺症や回復に大きな影響があるとしっかり書かれています。このアーニカはウサギギクという植物を主成分としたレメディーであり、ニキビから脳髄膜炎まで効果を発揮する、事故や怪我をした場合のNo.1レメディーらしいです。

頭を強打した場合のような危機的な状況では慌ててしまい適切なレメディーが選択できない可能性があるので、医師等の専門家に診察してもらうように伝えながら、その一方で自分の自然治癒力を信頼しないで、レメディーを服用しないことに対して疑問を著者は抱いているとのこと。

危機的状況をレメディーと標準医療の併用で回避できた⋯それはレメディーのおかげである、と後でのたまうための布石としか思えない巧妙な記述です。万が一、病状が悪い方向に向かったら⋯適切なレメディーが処方されていなかった、もっともっとホメオパシーを勉強しましょうね、と返すんでしょうね。

さらにレメディー無しで医療機関を受診して、悪い結果になったら⋯当然、ホメオパシーを信じなかったから、と理由づけられるでしょう。

非常に巧妙に仕組まれたホメオパシーのやり口です。

ホメオパシーに対する現代医学の判定

ホメオパシーは西洋でもかなりの数のファンを獲得しています。権威付けのためか「英国王室御用達」なんてことを伝えているサイトもありますが、その真相はこれです。

偽医療・ニセ医学の典型「ホメオパシー」とはどのような治療方法か?その3 英国王室御用達、どっからそんな話が?

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医師であればめちゃくちゃ信頼度が高いコクランではどのような評価をしているでしょうか?

喘息に対するホメオパシー

十分なエビデンスが無い(https://www.cochrane.org/ja/CD000353/man-xing-chuan-xi-nidui-suruhomeopasi)。

認知症に対するホメオパシー

エビデンスがない、というかまともな研究がなかった(https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD003803/full/ja)。

がん治療時の副作用に対するホメオパシー

有効性を証明するエビデンスは無い(https://www.cochrane.org/ja/CD004845/yan-zhi-liao-niyoruyou-hai-zuo-yong-nidui-suruhomeopasiyi-liao)。

インフルエンザに対するホメオパシー

研究の質が悪くエビデンスに説得力が無い(https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD001957.pub6/full/ja)。

以上のようにホメオパシーに関する研究は数多くあり、論文になっているものも多数ですが、コクランレビュー によってホメオパシーの効果はエビデンスが無い、と判断されています。

ホメオパシーに対する日本医学会の見解

日本における医学系学会の頂点である日本医学会が2010年8月25日にわざわざ「『ホメオパシー』についての会長談話」をサイト上に掲載しています。

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http://jams.med.or.jp/news/013.html

ホメオパシーを信奉する人が受診された場合は、ぜひ前掲の本を患者さんと一緒に目を通してください。それでも魔法が解けない患者さんにはプラセボ以上の効果は全く期待できないので、標準治療を主として心の支え程度にレメディーの服用を認めてあげることも対処方法の1つかと思います。

そこで1つ重大な注意があります。レメディーと称する砂糖玉に有害な物質が含まれている可能性もあるので、患者さんが服用しているレメディーはどのようなものであるかは絶対にチェックしてくださいね。

ホメオパシーでしっかりと死亡者は出ていますので、その点にはくれぐれもご注意ください。

ニセ医学に手を出しちゃった「イケダハヤト」さんの弁明が間違っている理由。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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