フマキラーさま、信頼できると判断した情報源による健康関連記事は明らかにトンデモです。

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殺虫剤・除草剤の有名メーカーであるフマキラーのウェブサイトにトンデモ記事が掲載されていました。

その内容は「蚊に刺されたらアルカリ性の石けんを使用する」「お湯につける」「ドライヤーをあてる」等、医学的には効果は全く認められていないだけでなく、健康被害さえ起こりうる健康関連記事です。

なぜトンデモ記事が有名メーカーのサイトに掲載されてしまうのでしょうか?

素人ライターに書かせた記事を社内でチェックもしないで掲載してしまったとしても、記事の責任の所在はどこになるのでしょう。

蚊に刺されたらアルカリ性の石鹸で洗う、というトンデモ医学情報がネット上に拡散中❗

「フマキラー」と聞いたら、即殺虫剤の会社と脳内に刷り込まれているのではないでしょうか?つまり、フマキラーは虫関係のプロという認識です。

私たち医師であっても一部の昆虫採集マニア以外は虫に対する知識は乏しく、医療関係者として知っておくべき虫関連知識は「蚊」や「ハチ」や「ダニ」などの、人に害を及ぼす害虫による健康被害に対する治療に限られていると考えるのが一般的です。

虫に刺されないような予防方法を知識にプラスして日常の診療に当たるとアドバンテージが高くなりますが、こんなサイトを参考にしたら、医師だけじゃなくて、一般の方も二次的な健康被害を受ける可能性があります。

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https://fumakilla.jp/foryourlife/16/より

このサイトは大手殺虫剤メーカーであるフマキラーが運営しているものであり、ご丁寧に記事の終わりにこんなことが記載されています。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

殺虫剤の会社であるフマキラー、虫関連の情報は信頼できると誰もが考えてしまうのに、虫刺されのプロであるフマキラーが信頼に足る情報源に基づいて作成して、こんなトンデモの内容かよ❗、との医師としては感じざる得ません。

信頼にたる情報源をご提示ください❗と言いたくなってしまいます。

フマキラーのトンデモ虫刺され対策方法はこれ❗

蚊などに刺されないようにする方法としては、虫除けスプレーの使用があります。フマキラーが責任を持って公開しているこのトンデモサイトはその範疇を超えて、虫に刺された場合の対処方法、つまり自分で簡単にできる治療方法ということになります。その内容の酷さといったら

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であり、さらに

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であり、さらにさらに

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というトンデモというより、これじゃあ健康被害の危険性があるぞ❗と医師でなくても感じてしまう内容です。さらにトンデモは続きますが以下省略。

ちなみに私はおばあちゃんの知恵的な民間療法をこよなく愛するものであることにご留意ください。おばあちゃんが孫を傷つけるようなトンデモ治療法を行うわけはなく、いい加減な健康情報サイトから拾い集めたトンデモ民間療法をもっともらしく羅列したものと思われます。

となると殺虫剤の専門会社であり、虫刺されのプロであるフマキラーはどんな判断基準で信頼できる情報源と言い切っているんでしょうか?ぜひぜひ、その信頼たる情報源とそれを信頼たる情報源と判断した社内の方のお考えを公表していただきたいと強く申し出ます❗

トンデモ虫刺され対法を信じるとこんな健康被害の可能性が

フマキラーが自信を持って厳格なる内容チェックをしたように思えてしまう、「蚊に刺された時の対処法」がどれだけひどい内容なのか、いくつかをピックアップして検証します。検証するべき、というか否定されるべき記述は多数なのですが、トップの方に書かれていたものにしますね(じゃないと、めっちゃ長文になってしまうので)。

まず、蚊に刺されたらアルカリ性の石鹸で洗うという、私がソーシャル上で目撃しちまったトンデモ民間療法。

蚊に刺された後の弱酸性をアルカリ性の石鹸であらうことで刺された部分を中和させるのもかゆみを抑えるやり方の一つです。

この記事では蚊の唾液等の痒みや腫れを引き起こす成分が酸性であることが大前提になっているようです。なぜならアルカリ性の石鹸で、「中和」することによって痒みや腫れに対処できるとしか読み取れない文章になっていますからね。

アルカリ性の石鹸が蚊の人間に被害を及ぼす成分が酸性であることが実証されていないと、お話にならないのは当然の成り行きです。私が調べた限りでは蚊の唾液が酸性であることを明快に述べた信頼度の高い文献は見つけられませんでした。

そもそも、万が一蚊の唾液が酸性であったとしても、体内に入ったその酸性成分がアルカリ性の石鹸で皮膚を洗浄するだけで全部中和されるのでしょうか?蚊は人を刺した時に、刺している時点で気がつかれないように麻酔効果のある成分を同時に注入します。

蚊に刺された時にはすでにヒトに被害を与える成分は体内に吸収されているのではないでしょうか?例えばステロイド系の塗り薬は蚊に刺された時に絶大なる効果を発揮しますが、その効果を発揮するためには体内にステロイドの成分が吸収されるからなんです。アルカリ性の石鹸で手を洗う都度、アルカリ成分が体内に吸収されてしまっていたらそれこそ健康被害が起きてしまうのでは?

つまり、蚊に刺された時の対処方法としてアルカリ性の石鹸で皮膚を洗うことは、どう見ても効果は無いですし、その効果を裏付ける一般の方が妙に納得してしまうような、「中和」との言い回しも根拠のないものと判断して差し支えないと思います。

もし、フマキラーが信頼できると判断して、このトンデモ健康関連記事をおかきになったライターさんはぜひぜひ、

蚊が人に害を与える成分は酸性である

ということと、

  • 皮膚内に注入された蚊が人に害を与える成分をアルカリ性の石鹸で皮膚を洗浄することによって「中和」できる

を明らかにした信頼できる医学論文等をご提示くださいませ。

「blockquote」は全て前掲のフマキラーが運営している「For you LIFE」からの引用です。

えええ〜っ❗蚊に刺された、50度のお湯で洗う、ドライヤーで温める??

アルカリ性の石鹸で対処するが科学的根拠、医学的根拠にプアーであるニセ医学系トンデモ情報であることはご理解いただけたと思います。まあ、石鹸で洗って清潔にする効果くらいは期待できるでしょうねえ、幸いにして健康被害はこのトンデモ対処法では起きないとは思いますが、次の2つの方法は下手すりゃ大惨事を起こしかねないです。

・蚊に刺されたら50度のお湯で洗う

・患部にドライヤーの熱風を当てる

この2つの方法はかなり危なっかしいです。

フマキラーが厳重なるチェックを行ったらしい、このトンデモサイトではこんな風に書かれています。

蚊に刺された時の対処法の一つは熱を与えることです。熱を与えることで、蚊の唾液を分解します。かゆみの原因は、私たちの身体からヒスタミン等が分泌されるため起こるアレルギー反応なのです。

このもっともらしい効果効能の説明の大前提として、ヒスタミンが50度のお湯で効果を失う(失活)するか、あるいはヒスタミンが破壊されるかしないといけませんね。

日本語の論文でこのようなものがあります。

日本食品科学工学会誌 技術用語解説「ヒスタミン」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/57/8/57_8_366/_article/-char/ja/)。

ここにはヒスタミンは調理の加熱処理では分解しないことが記されています。この記事を書かれた、多分素人ライターさんは調理をする時に何度の火をお使いなんでしょうか?常日頃は50度程度で湯煎でもしているのでしょうか?

日本食品科学工学会誌の論文の一文から、このヒスタミンを分解するとの記載が大間違いであることが判ります。50度くらいのお湯であまり効果が出なかったからといって、さらなる高温のお湯をかけちまう危なっかしい親御さんが出現しないことを祈るばかりです。

ではドライヤーの熱風処置はどうなんでしょうか?皮膚科を営んでいる医師であれば、ドライヤーでヤケド(熱傷)しちゃった患者さんを診察した経験があると思います。ドライヤーから出る熱風は中には100度近くなるものさえあります。

いくら「軽く当てる」と言っても熱傷のリスクは当然のごとく存在します。万が一、ドライヤーの熱風でその場の痒みから解放されたとしても、それは熱の刺激による痛みに神経が集中してしまうからであり、その後は悲惨なヤケドになってしまう可能性が大です。

「blockquote」は全て前掲のフマキラーが運営している「For you LIFE」からの引用です。

トンデモ医学を参考とした、悲惨な幼児虐待の言い訳がありました。

幼児虐待があとを経ちません。こんな事件がありました。

大やけどの3歳、ラップ巻いて9時間放置か 容疑の母親

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この親はどっかで仕入れた医学知識なのか、ソーシャルとかの素人情報なのかに従って、大火傷をした3才のお子さんの治療のつもりで、熱傷部にラップを巻いて様子を見ていたようです。

確かに熱傷や擦り傷の治療にラップを貼る、湿潤法はあるにはありますが、あくまで医療機関受診を前提として受診までの応急処置として使われるべきものです。また、全身の何パーセントかにヤケドをした場合は生命を危険に晒すことは、医師でなくても常識なのではないでしょうか?

とにかくネットの医学情報の酷さは、あのWELQ騒動で多くの人に認識されていると思っていた私がバカでしたし、信頼度のある医学情報を得るコツとして、発信源が明らかであること、書いた人がどこの誰であるかが重要、なんてことを取材時に言ってしまった私は反省しています。

製薬会社の一般向け健康情報サイトでさえこのありさまです。

製薬会社HPの「体温を上げて免疫力アップ」???なので電凸しましたレポート❗

製薬会社HPの「体温を上げて免疫力アップ」???なので電凸しましたレポート❗

フマキラーという有名大手企業が厳重にチェックしているとわざわざ明記しているサイトでさえ、こんなトンデモ医学が蔓延っていたのです。

私はネット憲兵隊でもありませんし、聖人君子でもありませんし、権威ある名称を持ってもいないしがない町医者です。しかし、こんなヘンテコな情報を真に受けちゃう純真な一般人が信じては絶対ダメな医学・健康サイトに関しては微力ながら批判していく所存です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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