患者さんは権威に弱い、これを利用した「ニセ医学」に対抗するためには⋯。

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昭和の時代は医学・健康情報のなかでトンデモに分類されていたものは、普通に考えたら吹き出して大笑いしてしまうような案件が主でした。

しかし、ネットの流行とともに、トンデモ系ニセ医学がビジネスになることに気がついた面々がいます。

広告手法も人の心理を上手く利用した巧妙なインチキ広告に騙されてしまった人も少なく無いはずです。特に「医学誌に掲載」「学会で発表」「大学教授が推薦」には気をつける必要があります。

世にはびこるニセ医学

日常の診療で忙しい医師はテレビや雑誌、そしてネット記事をほとんど読まない、あるいは読み飛ばしている、あるいは見出しだけチェック❗なんて人が多いかもしれません。患者さんからの質問で、「そんなヘンテコな医学知識をどっから⋯」なんて感じることも多いのではないでしょうか。

私のライフワーク的趣味(?)としてトンデモ医療を長年ウォッチングしています。昭和の時代のトンデモ医療は、誰が見ても読んでも、「そんなことあるわけないじゃん」と笑い飛ばせるものが多かったのですが、平成の世になってからトンデモ医療がビックビジネスになると閃いた人々が現れ、一般の人が医療情報をネットから得る環境が整ったことにより、かなり巧妙な手口のトンデモと言うかほとんど犯罪とも言える医療・健康情報が溢れかえるようになりました。

例えば、これ。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190807/k10012025671000.html

フコイダンを主成分とする健康食品で、「がん細胞が自滅する」と称して売りまくっていたのです。このトンデモ健康食品に関しては数ヶ月前にこんなブログを書きました。

前立腺がんを治すサプリ、学会で発表して、特許取得して、医者が推薦していても、その効果は怪しすぎ?

前立腺がんを治すサプリ、学会で発表して、特許取得して、医者が推薦していても、その効果は怪しすぎ?

医薬品医療機器法違反容疑での逮捕らしいのですが、この健康食品のサイトは白衣を着た研究者風の人や監修したと称する医師もしっかり登場しています。

白衣を着た医師の発言は医師が考えているより患者さんは疑わない❗ことを臨床系の医師は肝に銘じておくべきです。

この白衣=医療関係者、学会発表=学会が認めた、医学誌に掲載=お墨付き、と普通の人の思考回路を利用したネット広告や一般書籍が平成時代は溢れかえっており、令和に入った本年も衰える様子はありません。

患者さんがなぜニセ医学やトンデモ医療情報に惑わされてしまうのか、患者さんを情弱と決めつけないで、まっとうな標準治療を受けていただくために、医師も敵の手法を学んで欲しいと思います。

医師の肩書きに左右される患者さんは予想以上に多いのです

メディアに出まくっている医師でも、かなりヘンテコな発言を連発するトンデモ医師がいなくはありません。

患者さんは多分、開業医<大病院勤務医<大病院の部長<大学教授、と脳内でランキングしている、と予想します。

つまり私のような開業医が一番軽いポジションで、大学医学部教授が最上位のポジションということ。人間の名誉欲というか権威を持ちたい欲望は限りなく、医学部の教授のさらに上とも思われる名誉教授なんてポジションもありますけど、この名誉教授との名称が結構危なっかしい健康食品の広告塔になっちまっている悲しい状況もあります。

以前、こんなブログを書きました。

「ジャバラ果汁」は花粉症に効果がある、医学的に説明している名誉教授のコメントが余分です

「ジャバラ果汁」は花粉症に効果がある、医学的に説明している名誉教授のコメントが余分です

何かを食べて病気を治す的な記事に敏感になっていた時期のものです。今回、医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕されたことを報じたNHKニュースの中でも、

健康食品でがんが消えて治ることは、そもそもない話だということを認識しておくことが重要だ

と島根大学医学部大野智教授が述べています(あれっ、この人も教授だあw)。

医学部の教授だって、色々なんだよなあ

大学の医局を離れてかなりの年月が経過した私として、かなり驚いたことがあります。昔々は医学部の臨床系の教授と言えばその科の頂点にたった一人君臨していたのに、今ではこんな状況になっています。

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これは私の母校である横浜市立大医学の現在の組織図(https://www.yokohama-cu.ac.jp/med/med_c/department_list.html)。私が在籍中は外科は第一外科と第二外科の2つの教室のみ、であり内科は第一内科から第三内科までの3つしかありませんでした。

知らない間に科目が増殖し、つまり教授も増殖しているようです。ポストが増えたことにより、コンタミ的な教授もいないわけではない可能性もないわけじゃないかも(かなり歯切れが悪い点は読み流してくださいませ)。

教授と言えばやっぱり白い巨塔の財前教授

私が子供の時、田宮二郎さんが財前教授を演じた「白い巨塔」が一世を風靡するしました。リアルでテレビドラマを見た記憶は無いのですが、再放送やその後小説を読むと、医学部のトップに君臨する教授の権威(まあ、財前教授は医療ミスを起こしちゃったわけなんだけど)を表現する手法として、教授回診風景が物々しく取り上げられていました。

最近も複数回リメイクされている「白い巨塔」は観たことは無いのですが、多分今でもゾロゾロと医局員を従えた大名行列的な回診風景が映し出されているのでは。私が入局した泌尿器科はかなりリベラルであり合理的でもあり、教授がとにかく人の良い方だったので、「教授回診は無駄。あれは教授の自己満足」と判断して、教授と助教授(このポジションも各科でたった一人)と医局長の3人で早朝に行なっていました。

大名行列ではなく、暴れん坊将軍のお忍び外出的な教授回診に対して多くの患者さんは御用伺いじゃないんだから、教授は教授らしく回診をして欲しい❗と医学部ヒエラルキーの最下位である私を含むペーペーの医局員にこぼしていたっけなあ⋯。

多くの患者さんは権威に弱い、患者さんは自分の主治医が権威があることを求める、との傾向を上手ーく利用したインチキ健康食品業界の手法に対して、臨床医はあまりにも無関心なように感じる今日この頃です。

患者さんが惑わされる広告の決まり文句はこれ❗

患者さんは、「研究で効果証明学会で発表、医学誌に掲載、教授が推奨❗」という言葉に弱いのです。

患者さんが臨床医の常識からかけ離れた健康法や病気を治しちゃうサプリ等について話し出したら、「そんなのありえないよ」と邪険にしないで、「それってどこに書かれていたの?」とか「それ、どの番組でやってたの?」と頭から否定しないで情報を収集してください。そして、いくつかのキーワードで検索すれば、かなり巧妙に仕掛けられたインチキサプリやトンデモ医学情報を多数ゲットできます。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」(原文は「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」だったっけ)です、頭っから目の前に座った、藁をも掴む状態の患者さんの言質を否定することは、悪手中の悪手です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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