聞き慣れない「ビワアレルギー」、花粉症がある人は気をつけたほうが良いかも。

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「あなたはビワを食べちゃダメ」とおばあちゃんから言われてきた私。

なんでもヒイイ爺さんの子供が庭に生えていたビワを食べて死ぬ目にあったことがキッカケらしい。

この言い伝え(?)を私の父も守っていたようで、私は生まれてから一度もビワを食べたことがありません。そんなビワ忌避派の私の目にこんなニュースが入ってきました。

ビワで集団アレルギー?ビワ中毒は大丈夫か?

ビワで集団アレルギー

NHK首都圏ニュース「児童11人搬送 食物アレルギーか」

この記事を読んで、「こんなにビワアレルギーの子供っているのかな?」と素朴な疑問を感じました。最近のお子さんはなんらかのアレルギーを持っている人の割合が増えている、という話もありますが、ひょっとして今回の集団アレルギーはビワ毒による中毒なのではないか、なんてことを自分が言われてきたことを基に考えてしまいました。

ビワアレルギーとビワ中毒について少々述べさせていただきます。

花粉症がある人はビワアレルギーにも注意が必要かも

花粉症がいつの間にやら国民病になっています。環境省の調査によると花粉症の有病率は29.8%にもなるそうです(環境省「花粉症とは」)。

医療機関で採血によって知ることができるアレルギーの原因物質であるアレルゲン検査の項目では「ビワ」は見かけた記憶がありません。

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これは当院で使用しているアレルゲン血液検査の伝票です。

一方で口腔アレルギー症候群という、食べ物を食べると唇や口の中がかゆくなる病態が知られています。特に果物による口腔アレルギー症候群が有名ですが、果物によってアレルギー症状が出る人は基本的には花粉症を合併しています。

その理由として、花粉症があるアレルゲンに反応することによって、IgE抗体が体内で作られます。果物に含まれるアレルゲンが花粉症のアレルゲンと構造が似ているために、果物に対してもアレルギー反応を起こしてしまいます。

花粉と関連があるとされる果物・野菜

花粉症を引き起こす花粉の種類と口腔アレルギー症候群を引き起こす果物・野菜の分類表は以下のようになっています。

花粉の種類関連ある食べ物
ハンノキ・オオバヤシャブシリンゴ、モモ、ナシ、ビワ、サクランボ、イチゴ、メロン、スイカ、キュウリ、ダイズ(主に豆乳)、キウイ、オレンジ、ゴボウ、ヤマイモ、マンゴー、アボカド、ヘーゼルナッツ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、トマト
シラカンバリンゴ、モモ、ナシ、洋ナシ、スモモ、アンズ、サクランボ、イチゴ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミ、ピーナッツ、セロリ、ニンジン、ジャガイモ、キウイ、オレンジ、メロン、ライチ、マスタード
スギ・ヒノキトマト
オオアワガエリ・カモガヤメロン、スイカ、トマト、ジャガイモ、タマネギ、オレンジ、セロリ、キウイ、米、小麦
ブタクサスイカ、メロン、ズッキーニ、キュウリ、バナナ
ヨモギニンジン、セロリ、レタス、ピーナッツ、クリ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ(ハシバミ)、ヒマワリの種、ジャガイモ、トマト、キウイ、香辛料(マスタード・コリアンダー・クミン)

https://eonet.jp/health/healthcare/health92.html

このように身近な食材が数多く含まれています。大人になってから花粉症になった、大人になってから好きだったものがアレルギーになって食べれなくなった、というのは、ごく自然なことなのです。

今回のビワアレルギーが起きた小学校の在校者数はわかりませんが、今や国民の約3分の1が花粉症。ですから口腔アレルギー症候群の集団発生と考えるのが自然だと考えられます。

ビワ中毒の可能性は無いのか?

私がビワを食することを禁じられている理由として、ビワアレルギーの可能性もありますが、ご先祖が死ぬ目にあったということを考慮すると、ひょっとして原因はビワ中毒だったのかもしれません。

先月、ビワの名産地に行ったときに道の駅ではどこでもビワが大々的販売されていました。「俺、ビワって食べちゃいけないんだよねえ。ビワって毒があるの知ってる」と家人に問いかけました。

意外と知られていないビワ中毒ですが、ビワが原因となってシアン化合物中毒になる可能性があります。シアン化合物といえば青酸カリが有名ですので、いくらオーガニックで自然の食材であろうと、死に至るリスクが存在していることを、自然派をこじらせた方面の方には知っていてもらいたいです。

以前、ビワの種が体に良いといって、大量のビワの種を食べて健康を害した人がいたようで、農林水産省はこんな警告を発しています。

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健康に良いと思い込んで、ビワの種を粉末にした健康食品あるいは自家製の粉末は食べちゃダメだよ、と伝えています。

この警告にも記載されていますが、通常の食べ方でビワを摂取しても命に関わる青酸化合物を必要以上に意識する必要はありません。しかし、学校で提供されたビワは自分で皮をむいて食べていたことがNHKの報道から知ることができますので、皮をむく際にシアン化合物が含まれる種を傷つけて、それを口にした可能性もあるのでは、なんて一瞬考えましたが、中毒を起こす量ではなさそうです。

以上から、意外と知られていないビワのリスクは通常の食べ方であれば口腔アレルギー症候群の症状であり、シアン化合物による健康被害は通常ではあり得ない、と判断しました。

生まれてから一回もビワを食べたことのない私ですが、抗アレルギー剤あるいはステロイドあるいは万が一のことを考えてエピペンを傍らにおいて、ビワに挑戦してみようかなと思っています(良い子は真似しちゃダメだよ)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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