人間に限らず、哺乳類は母親に抱かれながらオッパイをもらう「母乳育児」は自然な形であるとともに赤ちゃんにもメリットが沢山あります。しかし、母乳至上主義的な動きが少しばかり気になります。
体質や社会環境的に母乳のみで赤ちゃんを育てることが可能な人と不可能な人もいるわけでして、母乳のメリットだけが強調されていくと「障害児が生まれた責任はすべて親にある」と暴言を吐く医師もいるくらいですので、「あの時母乳で育てれば良かった」と後々無用な後悔をする母親が出てきてしまうのではないか、と感じます.
母乳、特に初乳はメリットだらけだけど
早産によって母乳が出ない場合の対応策として、「母乳バンク」という制度を昭和大学病院小児科で行っています。あくまで善意のドナーを募って、低体重で出産した赤ちゃんに母乳を供給する仕組みです。しかし、海外では「母乳の通販」も出現していて、日本では全く規制外の「母乳の売買」という問題も生じる可能性があります。
日本に置ける母乳と粉ミルクの比率
まずは日本では母乳で育てられている赤ちゃんと粉ミルクで育てられている赤ちゃんの比率がどんなものなのかを把握しておきましょう。
これは平成17年と少し古いデータですが、当然のごとく出産直後は母乳による授乳の比率が高くなっています。この時点と10年前を比較した場合、生後1ヶ月で母乳を与えている比率も92.1パーセントから94.9パーセントに、生後3ヶ月だと72.9パーセントから79.0パーセントに増加していることがわかります。
人それぞれの理由があると思われますが、成長とともに母乳単独より粉ミルクを併用、あるは粉ミルクにスイッチする方は増えるのは外出に伴い母乳で授乳する場所がない、仕事に復帰したため母乳オンリーの授乳が不可能になった、などが考えられます。
母乳を中心に育てるメリットは多いのですが、社会環境等を整備することで母乳中心の育児をすることは可能になりますが、乗り越えないとならない障壁があります。
母乳バンクの問題点
母乳は限りなく赤ちゃんにメリットのある栄養源ですが、感染のリスクもあります。例えばHIVや白血病ウイルスの感染です。この感染症のリスクが日本に置ける「母乳バンク」の場合は否定できますが、米国で行われてる母乳の売買の場合、確実に安全かは疑問視されています。というのも現時点ではFDAも介入していません。
売買が中心になった場合、配給源が貧困層が中心になる可能性があり、米国の場合は有色人種に低所得層が多いことが複雑な問題を引き起こす可能性が大です。
母乳至上主義の問題点
母乳が生まれたばかりの赤ちゃんに対して、貴重な栄養源であることは否定できません。しかし、世の中には母乳至上主義というのか、母乳で育てないこと自体を否定、あるいは母親に罪悪感を持たせるような主義主張も存在しています。
様々な事情で母乳を与えたくても与えられない人もいるでしょうし、一昔前の芸能人のように「おっぱいの形が崩れるから粉ミルク派」という人もいるかもしれません。日本でも昔は「乳母」と呼ばれる制度がありましたし、海外でも高貴な人は自分で子供を育てない、という時代もありました。
あまりにも母乳賛美が強くなってくると、日本でも母乳の売買が行われるようになるかもしれません。
と、思ったら日本でもすでに問題になっていました。「インターネット等で販売される母乳に関する注意」厚生労働省サイトより
要は細菌感染、ウイルス感染の恐れがあるから注意、ということです。子育てを合理的に考えて粉ミルクを使用することに後ろめたさを感じさせるようなことが起こると、日本の少子化はさらに進んでしまいますし、子供の障害はすべて親の責任という暴論を吐く一派の術中にはまることにもなりますので、必要に応じて母乳・粉ミルクを使い分けるのが、ベストではなくてもベターな選択だと考えます。
シンガポールだとある場所で母乳による授乳を行うとこんなカードがもらえるそうです。
授乳月間というものがあり、飲食代が無料になっちゃうサービスを受けたという内容です。もちろん母乳が対象であり、このシンガポールのカフェの対応に感動している人も多いので「母乳神話」「母乳信仰」が「母乳至上主義」の方向性へ行きそうな気配が感じられずにはいられませんでした。。