2015年8月3日の読売新聞夕刊で「小4肝機能異常1割」という衝撃的な見出しの記事がありました。香川県の8264人の小学4年生に採血を行い、その結果として異常値があった男子は12.4パーセント、女子は9.5パーセントと報じられています。
香川県の小学4年生の血液検査で1割以上に異常値❗
検査内容は肝機能と脂質と血糖値を測定したデータです。検査全体のデータが開示されていないため、詳細は不明ですが、これって明らかに「小4異常1割」といった報道の仕方は大袈裟なんです。だって検査データは5パーセントは異常値になるように設定されているということを知らない記者が書いたと、と大いに予想します。
そもそも血液検査の基準値正常値というものは、もともと健康である人を集めて血液のデータを分析して、検査値の低いもの2.5パーセントと検査値の高いもの2.5パーセントを除いた、95パーセントの人が含まれる範囲を「基準値」として決めます。つまり、どんな血液検査であっても5パーセントの人は「異常」と診断されることになります。
どんな小学4年生が検査に協力をしたのか?
今回香川県が行った血液検査は16市町村を保護者が同意した8264人(全体の96パーセント)に対して肝機能3種類(たぶんALT、AST、Γ-GTP) 、脂質(コレステロールと中性脂肪)、血糖(いわゆる血糖値とヘモグロビンA1C)を調べて
脂質異常は男子10.2パーセント、女子11.5パーセント
◎ヘモグロビンA1c異常は男子12パーセント、女子10.9パーセント
とも報道されています。ここでもきになる記述があります。高血糖状態を示す検査データのヘモグロビンA1cは「異常値」という表現ではなく「高値」を使用しています。ひょっとすると検査基準として決めた95パーセント内に入っているけど、異常値ではなく、正常値なんだけど高めの人も換算した可能性が否定できません。
この検査に協力した生徒が96パーセントとかなりの高い点が気になります。もともと持病を抱えていた生徒も友達の多くがこの検査を受けたために、しかたなく採血に応じた可能性があると、検査データで「異常」と判断され、検査値異常の小学4生が多い、という結果を大きく後押ししてしまいます。
健常な人のデータを集めて意味のある検査基準値
大人の場合、大病をしていない、飲酒は1合以内、喫煙はしないといった条件のボランティアを集めて、血液検査の高値・低値2.5パーセントを除いた95パーセントの人が入る範囲を基準値あるいは正常値と定めています。検査機関によっては基準値が違っていますので、だからこそ学会などがガイドラインを定めるのです。
96パーセント生徒が参加した今回の採血による調査ですが、参加率の高さもかなり気になります。インフルエンザの予防接種でさえ96パーセントが接種済みとなる小学校なんてほとんどありません。なぜこのような、半強制的な調査とも思われるをどのような目的をもって行ったのかは、取り組みを推進する香川短大の名誉学長の「異常値の多くは生活習慣の見直しで改善できる」「病気予防のために重要で、国の主導で全国に広げてほしい」との言葉に集約されています (前述読売新聞夕刊より)。
異常値の予防にこんなアドバイス⋯笑うしかないです
「肉を減らし野菜を多く。お菓子やジュースを減らす。休日は家族で運動を」と養護教諭が生活指導して、異常値が改善されている、なんて記事に書かれています。でも、親の所得、職業、社会環境思想等から一律にこの養護教諭の指導を受けられる人はかぎられるのではないでしょうか?また、香川県が極端に運動をしないで、お菓子やジュースの消費量が多く、さらに肉食中心の生活を送っているというデータは少なくとも私が調べた範囲ではでてきませんでした。
新聞記者は文系出身の人が多いと予想しますが、先日大学で使用されている経済のテキストを見る限りでは「数3」の範囲の数学がバンバンでてきます。統計学も文系、特に経済ではマストな数学の知識です。新聞報道を真に受けたお昼の情報番組では、イメージ画像として肥満がちな小学生の映像が流れていました。
ぜひ、健康に関する報道は医学を学んだ人のアドバイスを受けて記事にする努力を新聞にはお願いしたい❗と声を大にして主張します。