原則禁止のトランス脂肪酸では即死しないけど、醤油を一気飲みすると即死⁉

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以前から悪玉コレステロールを増やすんじゃない、と悪者扱いされてきたトランス脂肪酸(マーガリンやショートニング、植物油に多く含まれる)がとうとう米国で3年後に全面的に禁止されることになりました。

米国でトランス脂肪酸が3年後に禁止されますけど、日本は大丈夫?

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http://edition.cnn.com/より

その報道をうけてトランス脂肪酸のリスクを訴えていた人は「ほら、アメリカじゃ全面禁止になった」「日本の行政機関はマゴマゴしていると大変なことになる」って感じで大騒ぎです。

そもそもトランス脂肪酸って人体にどのような悪影響があるのか?

それ自体を知らないで「先進国の米国で禁止されたんだから大変、大変」的に騒いでいる人もみかけます。実はなんでも反対の

あの福島瑞穂議員がトランス脂肪酸の危険性をとっくの昔に取り上げています❗

実はトランス脂肪酸は人体に悪さをするらしい、レベルで捉えていた私ですが、福島瑞穂消費者担当大臣(そんな時期もありましたね)が2009年11月24日に「トランス脂肪酸を含む商品の含有量表示を義務つけるように消費者庁に指示をした」という報道が残されているのを発見して、放置はできません。(日経BPフードサイエンスの過去記事より)。

どうしても生理的に福島議員を受け付けない私としては重箱の隅をつつかざるを得なくなり(勝手な理由ですけど)、そもそもトランス脂肪酸って本当に悪者なのか調査しました。

わかったことはトランス脂肪酸が即生命の危険となるわけでなく、話は飛びますが醤油は即死の危険があるとてもリスキーな食材であることが判明しましたので報告いたします❗

私はベストフーズのマヨネーズが好みだったのですが、amazonで検索して購入したら、今ではトランス脂肪酸フリーになっていて味が変わってしまっていた。

マーガリンは体に悪い、安心なのはバター!美味しいし、でも高いっていう認識の人が多いわけですが、日本のメーカーさんも当然努力しています。

今やマーガリンは、低トランス脂肪酸食品です。

https://www.miyoshi-yushi.co.jp/food/transfattyacid/

そもそも誰がトランス脂肪酸が悪いっていいだしたか?

トランス脂肪酸悪者説の言い出しっぺは「Coronary heart disease in seven countries」(Circulation 1970; 41: I186-I195)です(しかし、ネット情報ってそもそもの話を調べていないのが多いです)。日本と比較してメチャクチャにトランス脂肪酸の摂取量が多い米国で心臓や血管のリスクとして脂質が取り上げられ、そのなかでやり玉にあげられたのがトランス脂肪酸です。

そもそもの脂肪の摂取が死亡リスクを高める、ということ自体に反証している論文も多数あります。例えば「Evidence from randomised controlled trials did not support the introduction of dietary fat guidelines in 1977 and 1983: a systematic review and meta-analysis」(Open Heart. 2015 Jan 29;2 (1) :e000196. doi: 10.1136/openhrt-2014-000196. eCollection 2015.)は本年に発表されたできたてのほやほやの論文です。

脂質制限は心血管系の死亡の予防にはならないし、全ての死亡の予防にもならないってことです。

かなり政治的あるいは国策的なトランス脂肪酸の禁止、裏では大陰謀が⁉

トランス脂肪酸は実は陰謀論大好きな方の批判の対象である「遺伝子組み換え食品」と密接な関係があります。米国などでは積極的に遺伝子を組み替えることにより、植物油の原料である大豆からリノール酸を減らし、オレイン酸を増やすことにより、トランス脂肪酸を減らすことが可能です、という穿った見方もできます。

農林水産省_すぐにわかるトランス脂肪酸
農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」より

しかし、遺伝子組み換え拒否派のEUや日本の場合、この遺伝子組み換えが行えないために、トランス脂肪酸の危険をあまり重要視していない傾向があります。バターがたっぷり取れる酪農国のデンマークやスイスなどは、最初からマーガリンなどのトランス脂肪酸を含む食材を使用しなくてもすみますので、この問題に深く関わっていません。

米国のトランス脂肪酸禁止に強く同意している人は、食の安全につよい関心を持っている人が多いと予想されます。しかし、トランス脂肪酸を禁じる米国は遺伝子組み換え食品で対抗する意図があることに気づいている人って少ないんじゃないですか?なんか陰謀論者めいてきちゃいましたけど。笑

トランス脂肪酸の致死量を調べたけど、見つかんない❗醤油はあったけど

トランス脂肪酸がどれだけ危険な物質であるのかを知るために、LD50 (急性毒性の強さを表す数字、ある量を与えると実験動物の半数が死亡する量)、あるいはADI (1日許容量 一生に渡って摂取しても安全な1日あたりの量)を調べている時、塩化ナトリウムのLDが目に入ってきました。

体重1キロあたり3000mg、つまり3gを摂取すると半数の人が死亡する可能性があります。60キロの人の場合、3×60=180g食べると半数の人が死ぬ、っていうことです。濃口醤油のナトリウム含有量は100gあたり14.5gですから、食塩180gを醤油から摂取するためには 180÷14.5×100=1241mlという計算式になります。

醤油を約1.2リットル飲むと半数の人が死亡する

このような驚きの結果が導き出されます。戦争中に本当か嘘か今では判明しませんが、徴兵検査を逃れるために醤油を一升瓶で飲んだ、なんて話があります。もし、兵役拒否のために醤油を一升瓶で飲んでいたら、戦死する前に懲役検査前に死んでいた可能性もあったということですね。そして中国では大量の塩を飲むのはよく知られた自殺方法らしいですよ。

しかし、なんでトランス脂肪酸の日本人向けのLDやADIって無いんでしょうか?TDI (olerable Daily Intak 耐容一日摂取量)もありません(「トランス脂肪酸を例にして栄養表示を考える」NPO法人 食品保健科学情報交流協議会 より)。
日本では海外の何分の1しか摂取しないから、あんまり神経質にならないでいいよ、と安易には言えない状況と考えます。ってことは福島瑞穂議員の主張もある意味で正しかったという、調べなきゃよかった的なことになりました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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