「ゼオミン(Xeomin)」は新たなしわ伸ばし治療の定番になるか?「ボトックス」を超えたかも。

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切らないでシワを改善する治療の代名詞「ボトックス」ですが、繰り返し使用することによって「抗体」が作られることによって、効果がでなくなる可能性が以前から危惧されていました。

美容で使用される程度の量では抗体産生の問題は起こらない、というのが一般的解釈です。

しかし、ボトックスは美容医療以外でも使用され(例えば痙性麻痺、最近では泌尿器領域での使用も海外では行われています)、美容である程度の量を使用してしまうと、美容以外の疾患に使用するとき抗体が問題となってしまう可能性があります。

抗体産生問題に対してかなり古くから研究されてきたのがこのゼオミン(Xeomin)」というボツリヌストキシン製剤なのです。

シワ治療の定番ボトックスの欠点を補った「ゼオミン(Xeomin)」

効果がなくなる抗体はボツリヌストキシン製剤中の「複合タンパク」が原因になっています。しかし、ゼオミンを開発したメルツ社(ドイツ)は「製造過程の複合タンパクって必要なの?」と素朴な疑問をもったので、神経毒素オンリーのピュアなトキシン(毒素って書くと怖いから、あえてカタカナ英語)製剤を開発することにこだわったのです。

ゼオミンは余計な複合蛋白を限りなく0に近づけています

本当に必要な成分だけにするための、ピュアトキシンを作る努力をボトックスもディスポート(英国製のボツリヌストキシン製剤)もおこなっていますが、ゼオミンには遥かに及びません。
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このグラフは『「New formulation of BOTOX. Complete antibody-induced therapy failure in hemifacial spasm」J Neurol. 2004 Mar;251 (3) :360.』『「 Long-term botulinum toxin efficacy, safety, and immunogenicity」Mov Disord. 2005 May;20 (5) :592-7.』などを参考にシコシコと手作業で作りましたので、引用するばあいは引用先を明記してください。万が一間違い等があった時の責任は私にありますので。
縦軸は複合タンパクが1バイアルあたり、何ナノグラム入っているか、を表していて1995年以降ボトックスもディスポートも如何に減少させるか、という開発努力をしていることがわかります。しかしゼオミンは複合タンパク(ある意味不純物)の含有量が他の製剤の10分の1以下と開発当初(1995年)からダントツのピュア製剤なんです。

しわ伸ばし効果が出るのは圧倒的にゼオミンが早い

ボトックスを代表とするボツリヌストキシン製剤をしわの、
改善治療に使用した場合、必ず「効果は数日から1週間後から現れますよ」と伝えていますし、経験者の方はそのように言われた記憶があると思います。しかし、

ゼオミンは効果発現が3日と他の製剤より早い

という特長もあるんです。

PubMed_Central__Figure_4__Clin_Cosmet_Investig_Dermatol__2013__6__211–219__Published_online_2013_Sep_24__doi_ _10_2147_CCID_S41537
Onset and duration of effect of incobotulinumtoxinA, onabotulinumtoxinA, and abobotulinumtoxinA in the treatment of glabellar frown lines: a randomized, double-blind study」 (Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013; 6: 211–219.)より

incobotulinumtoxinAはゼオミン、onabotulinumtoxinAはボトックス、abobotulinumtoxinAはディスポートです。

効果発現も抜群で、繰り返し使用しても抗体ができないゼオミンはさらに他のボツリヌストキシン製剤と大きな違いがあります。

常温保存が可能なゼオミン

ボトックスを並行輸入していた時は(現在はアラガンジャパンという日本の会社がある)、海外から医師が個人輸入していました。その当時、輸送・配送過程で熱が加わってしまうとボツリヌストキシン自体の活性がなくなってしまい、せっかく注射をしても効果が無い、なんてことがありました。現在でもボツリヌストキシン製剤は冷蔵保存で輸入、配送されてきます。しかし、ゼオミンは常温保存可能なので、温度変化による変性がないので、安定した結果を得ることができます。ボツリヌストキシン製剤の保管のためだけに当院では冷蔵庫が2台あって非常に邪魔なので、ゼオミンは保管場所に気をつける必要がない点にアドバンテージを感じてしまいます(スタッフの飲み物、オヤツ専用の冷蔵庫など、当院には5台も冷蔵庫があります)。

ゼオミンも油断はできません。というのも風の噂として製造過程で全く複合タンパクを含まないボツリヌストキシン製剤が某国で開発された、という話があります。嫌韓ブームの影響なのか韓国製ボツリヌストキシン製剤である「ニューポート」の使用を明記しているクリニックは減少していますし、完全にブランドビジネスに走っている「ボトックス」さえも、この「ゼオミン」に追撃されそうですが、そのゼオミンを上回るピュアな製剤が登場するかもしれないのです。美容業界はクリニックもそうなんですけど、マゴマゴしているとあっという間に時代遅れって言われちゃう過酷なレッドオーシャン状態のビジネスなんです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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