民間医療、民間療法を代替医療と呼ぶことがあります。代替医療の定義のとしては「スタンダードな通常の医療に替わりうる、あるいは補完する医療的行為」というところではないでしょうか。
実在が明らかではない「霊」の力を利用するようなものは、常識的解釈からは代替医療ではなく、擬似医療あるいはインチキ医療をするのが一般的な考え方です。民間医療でもない、代替でもない医療とも言えないインチキ医療行為の代表として「ホメオパシー」という厄介な治療方法・療法があります。
本記事の内容
代替医療というのもおこがましい「ホメオパシー」、犠牲者も出ています❗
歴史的には18世紀にドイツのサミュエル・ハーネマンという医師が考案した治療法で「オルガノン」という著作を残しています。当時医師が考えた治療法なので、この時点ではスタンダード医療ではなくても代替医療かもしれませんし、ひょっとして画期的な新しい医療行為のひとつの可能性がありました。
希釈(薄める)すればするほど効果がある、って理論。こんなに希釈したら効果のある成分なんて「無」に等しいのでは?
19世紀には一斉を風靡した新治療法ではあったのですが、医学はもちろんのこと、科学全般が急速に発展する中でホメオパシーは「インチキ治療」と認識されブームは収束に向かっていました。しかしスタンダードな医療行為が国民全体が均一に低価格で受けられる制度のなかった欧米では貧困層を中心にホメオパシーは根強い人気を静かにキープしていました。
この人がサミュエル・ハーネマンです。World Homoeopathy Dayなんてものまであるようです。
日本のようなある一定レベルの医療を比較的低価格で国民全体が受けることができる現在でもなぜか悪霊がよみがえるようにホメオパシー療法がじわじわと標準的な医療に対する治療法として広がりつつあります。
ホメオパシーを利用した事件として「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」を憶えている方も多いと思います。
ホメオパシー信者の助産師が新生児がビタミンKを必要としている状態にもかかわらず、ホメオパシーの処方である「レメディ」 (レメディーと記載する場合もあります、英語だとremedie)と呼ばれる偽薬を与えたために、新生児が亡くなったという悲惨な事件でした。ホメオパシーの真髄である「レメディ」とはなんでしょうか?
希釈に希釈を重ねたレメディーがホメオパシー治療法の肝です
ホメオパシーは「同種療法」とも呼ばれ、サミュエル・ハーネマンが「症状を引き起こす物質は症状自体を取り除く」という理論を発見したことになっています。症状を引き起こす物質を限りなく希釈するという特徴があり、例えば100倍希釈を30回繰り返したりします。
この場合、ホメオパシー信者さんは30Cと表現しています。この100倍希釈を30回繰り返す、レメディ製造方法を冷静に考えてみましょう。
ホメオパシーの治療薬であるレメディは100の30乗ですから、10の60乗つまりゼロが60個がつくまで希釈する❗
アボガドロ定数というものがあり、1molに含まれる原子の量はどんな元素であっても一定の6.02×10²³個となることは、定説であり数多くの物理・化学の基礎となっていて動かすことのできない数値です。
アボガドロ定数って「質量数12の炭素原子12gに含まれる炭素原子の数は6.02×10²³個である」という例の高校時代に習ったあれです、記憶にありますよね。ホメオパシーで使用される用語として
30Cのレメディは10の60乗です。
カリウムであったら(山口の事件はビタミンKです)分子量は39ですので、39gのカリウムには6.02×10²³個のカリウムが含まれています。これを100倍に希釈して、さらに30回百倍希釈を繰り返したものがホメオパシーのレメディーになるのです。
計算がかなり面倒なんですけど、普通の人が知っている一番大きな数は「京」だと思いますが、これでさえ10の16乗です。京を4回掛け合わせてやっと10の64乗になりますので、乳児に与えたカリウムのレメディーが10mlとしてもカリウムは原子一個さえも入っていない可能性が大です。もし、しっかり振盪(試験管を振ってかき混ぜる)していなかったら、カリウム一個くらいは入っていたかも知れませんけどね。
ちなみに宇宙中に存在する原子の数は10の80乗個と考えられていますので、10の60乗にまで薄めた水溶液の中にカリウム原子が一個でも含まれる可能性って想像できますか?
希釈を繰り返した試験管の中にカリウム原子が含まれる、という考え方は海に塩を一掴み入れたものより薄まってることになる、という表現が一番わかりやすいかもしれません。懐疑主義者のマーティン・ガードナーは著書「奇妙な論理」中で「一滴のくすりを太平洋におとし、良くかきまぜてから、海水をさじいっぱいすくいとるような」(現代教養文庫「奇妙な論理」初版第19刷発行より)と表現しています。
同種療法としても、同種のものが全く入っていない可能性があるレメディーを効果がある、と考えるのはプラセボ以外にありえません。
ホメオパシーのレメディーは効果もないから、もちろん副作用もありませんよね
国民皆保険の日本においても、ホメオパシー信者さんが着々を地盤を固めつつあります。医療に使用される薬は効果がある反面、当然といえば当然の問題が生じてきます。通常の医療に対する不信感からホメオパシーに走ってしまう方も多いことが予想されます。
しかし、薬効がもともと期待できないホメオパシーのレメディーですから、当然副作用もありません。医療で使用される薬効が確実な薬であっても、効果の一部はプラセボであることは疑いのない事実ですが、薬として承認されるためには最低限の条件としてプラセボ効果を上回る効果が必要となります。
ホメオパシーはなぜ支持されるのか?
ヨーロッパを中心に一時期ホメオパシーが支持された背景として、均一な医療が受けられなかったことがありますが、ホメオパシーを推進する一派が政治的な圧力を持っていたことも理由の一つです。
ホメオパシー信者さんが目の敵にする一般人は知ることのできない政府・製薬会社・医療関係者の巨大陰謀組織というものがあります。陰謀論者は国・製薬会社・医療業界が一団となって病気を治す力がない薬を販売するだけでなく、副作用があろうが闇に葬って利益を貪っている的な捉え方をしています。
ホメオパシーが欧米で流行した理由こそ政治力を背景にした一団の影響が大きなことをホメオパシー推進派の方々は承知しているのでしょうか?
特によく出てくる宣伝文句として「英国王室御用達」がありますが、その真実も近いうちにブログにアップする予定です、お楽しみに❗