コーヒーは健康に良いとされることもあれば悪者扱いされることもあります。
この手の話は海外の論文や研究をベースにした海外の記事→翻訳(意訳)して日本でニュース、という流れが多く、ライターが医学的知識がないケースが多いので基本的に信頼度が低いのです。
今回はわたしたち日本人に限定して、コーヒーはどれくらい飲むと良いのか?というお話です。
コーヒーは健康に良いのか、悪いのか論争に決着
コーヒーがポリフェノールを含むために、死亡リスクを下げ、長寿のヒントになるのではないか、という話がありました。一方でポリフェノール自体が果たして健康に良いのか、悪いのかを問う論文も登場しています。一般的にコーヒーといえばカフェインを含むために、飲み過ぎは健康に良くないイメージもあります。
海外ではコーヒーを1日4杯以上飲むと前立腺がんのリスクが低下するという話がある一方で、コーヒーを4杯以上飲むと死亡リスク自体が上昇するとの話も出ています。そもそもこのような「なになにを食べると、死亡リスクが低下する」という調査は医学の中の疫学という分野のものですが、人種差・生活レベル・生活習慣などの多くの影響を及ぼす因子が多すぎて、医学論文といえども突っ込みどころ満載であり、海外の疫学の結果が即、日本人に当てはまる訳でもありません。
以前から健康に関心の高い人が興味をもって読んでいたと思われる「コーヒーは悪玉か、善玉か」という議論に対し日本人の場合はコーヒーを1日3〜4杯飲むと死亡リスクが低下するという結果がでました。
コーヒーを1日3〜4杯で健康に❗
オッサンたち憩いの場であった喫茶店が少なくなり、おしゃれなスターバックス系のコーヒー店が乱立している日本です。「カフェラテお願いします」といっただけで「スターバックスラテですね」と返事されただけで、冷や汗が出てしまった経験を持つ私としては、周囲に私のようなスターバックス系苦手オヤジが溢れている状況下で、今回の「コーヒーって健康にいいんだよね〜」論文が登場してしまうと、どこでコーヒーを入手すればいいのか悩んでしまいます。
コーヒーで死亡リスクは下げたいけど、スタバ系は苦手なオッサンを混乱に巻き込んだ論文は「Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center–based Prospective Study」(Am J Clin Nutrオンライン版)です。日本の研究者が日本人90914人を対象に1990年から2011年まで追っかけた、前向きのコホート研究という、疫学調査では信頼度の高い方法で検証しています。その結果
- コーヒーを飲む習慣と飲む量はがんの死亡リスクは関連がなかった
- 心臓系・脳血管系・呼吸器系の病気の死亡リスクはコーヒーの摂取量と関連があった
- 心臓系の病気の死亡リスクは1日3-4杯コーヒーを飲む人は、ほとんど飲まない人より36パーセント低い
- 脳血管系の病気の死亡リスクは1日3-4杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人より43パーセント低い
- 呼吸器の病気の死亡リスクは1日3-4杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人より40パーセント低い
コーヒーを飲むことでガンは予防できないけど、主な死因の死亡リスクを下げるという「コーヒーメチャ健康にいいじゃん」という結果が大規模な研究、それも対日本人の調査から判明しました❗
なぜコーヒーは死亡リスクを低下させるのか?
コーヒー健康にいいやつ説を検証するためには、コーヒーに含まれるどんな成分が善玉的仕事をしているのかを調べる必要があります。
- コーヒーに含まれるクロロゲン酸が血圧を下げる
- カフェイン自体に一酸化窒素(NO)を活性化する効果があり、血管の内皮をしなやかにする
- ピリジニウムが脳梗塞の大きな原因である血栓を作りにくくする
このような成分が血管年齢を若返らせ、血液をサラサラ(本当はサラサラじゃないけど、一般的にはそのような表現をとりますよね)にして、さらに血圧まで下げてくれているのです。
各国バラバラの結果がでているコーヒー論争
コーヒー摂取の習慣が果たして、健康に良いのか悪いのかという論争があり、各国の調査でもバラバラの結果がでています。しかし、今回の調査は日本人対象ですし、42836人のオッサンも調査対象となっています。この結果、コーヒーにガンを予防する効果は期待できませんし、糖尿も効果は期待できなませんが、心臓・脳血管・呼吸器に関してはコーヒー善玉説をとって良し❗といえます。私的には昔ながらの喫茶店のコーヒーとスタバ系オシャレコーヒーとの比較も今後の調査に入れ込んでいただきたいです。もちろん、喫茶店コーヒーの勝ちを期待してですけど⋯このような不埒な気持ちを持って研究をする場合は「バイアスがかかった調査」と評価され、かなりの勢いでdisられます。
当院の近くにオシャレなコーヒー店が最近開店して、診療の合間に「カフェラテ」を楽しんでいる私ですが、スタバのトラウマがあるために未だに自分で買いに行ったことはありません。涙
※2018年11月18日に閉店してしまいました⋯涙