野菜ポリフェノールは長寿と関係ない、って話は本当なんでしょうか??

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フレンチパラドックスに始まった「ポリフェノールは長寿の秘訣」という話が最近になって、長寿とポリフェノールはあんまり関係ないんじゃない的な論文が増えています。

なかでもポリフェノールの代表、レスベラトロール惨敗って論文が結構ポリフェノール信者にとってはストレートパンチ的に効いている状況です(関連エントリー 悲報 レスベラトロールは効果なし⁉長寿・がん予防・心臓病予防の効果が全否定❗)。

長寿の秘密、ポリフェノールの効果が否定されつつある現状

いくら動物実験で効果があっても、それが即人間に効果があるとは言えませんし、膨大な論文を検証しても「疫学」という分野は影響を与える因子が多く複雑に絡んでいるために、ポリフェノール効果あり、ポリフェノール効果なし、と簡単に判断できるわけではありません。論文っていうと英語のものがどうしても多くなってしまうのですけど、日本語で書かれた

野菜ポリフェノールは長寿と関連なし

という衝撃的な論文を発見しましたので、野菜ポリフェノールは長寿に関連している、関連していない、と二元論で考えてはいない立場として検証してみます。

野菜ポリフェノールは長生きとは関係無い、という論文の内容

仁愛大学人間生活学部の研究者が「長命高齢者が果物・野菜から摂取した総ポリフェノール量」というタイトルで仁愛大学研究紀要 人間生活学部篇 第3号 2011に掲載しています。ウェブ上どなたでも見られますし、日本語なんで是非お読みください。この論文って医学部系がかいたものじゃないじゃん、なんてことは私は一切感じません。医療の専門家であっても栄養学の専門家ではない、ってことも良くありますから。

この論文はこんな感じの内容になっています。
・愛知県岡崎市在住の70才以上の高齢者を対象
・日常の食生活3日間の食生活を聞き取り調査
・7年後の生存を再度調査
・日常の食生活でどれだけの量の野菜と果物を摂取していたか検討

◎日常でどれだけ野菜や果物からポリフェノールを摂取しているか?
をデータ化して分析したものです。その結果として導きだされたのが
◎ポリフェノールの摂取量と長生きの間に関連性はなかった
という衝撃的なものでした。

crf_flib_u-fukui_ac_jp_dspace_bitstream_10461_13048_1_03_仁愛大学研究紀要(人間生活学部篇)第3号-p9-12_pdf
前述論文より

ポリフェノールを摂取しても長生きできない、という論文の問題点

ポリフェノールは長生きと関係ないんじゃない、という素朴な疑問から研究をした立派な論文なんですけど、いくつか疑問点があります。標準偏差まで計算してあるんですから、有意差を見るp値が表示されていないことにより、統計学的に信頼度が高い研究とは言いがたいものになっています。

さらに「実験者効果」と言われるものを排除しないといけません。優しい心をお持ちの岡崎市の方々がせっかく研究者がポリフェノールの効果を研究しているんだからと考て、通常の摂取量よりおおめに野菜や果物を食べて、日頃からポリフェノールを意識して食べています、と申告してしまう可能性があります。逆に「この人って常に健康を気にかけている、健康オタクなんじゃない」って思われたくないので、少なめに野菜や果物の量を申告してしまう可能性もあります。

実験者意識しようが意識しまいが、被験者が予想外の行動をとってしまい、結局バイアスの掛かった研究結果になってしまうのです。研究者の期待する結果を出そうと、薬の効果へ対して高評価を与えてくれる被験者って多いので、このような実験者効果が出てしまわないように、通常医薬品の治験では二重盲検と呼ばれる方法が取られます。

残念なことに今回のポリフェノールと長生きの関係を突き止めようとした実験・研究は二重盲検(ダブルブラインド)方式は取られていませんで、ポリフェノールと長寿の関連性を強く裏付けるものにはなり得ません。

ポリフェノールの特性

ポリフェノールは植物に含まれていて、お肉なんかには含まれていないので野菜・果物から摂取するか、あるいはサプリを摂取することによって体内に入れ込むことができます。今回の研究では食べた野菜・果物に含まれている総ポリフェノールの量を測定して長寿に関連するかを調査しています。

しかし、ポリフェノールは加熱処理等によって有効な成分が変成して、効果が無くなってしまう可能性を含みますよね。

となると、確実にポリフェノールを摂取するために利用したくなるのが、サプリメントです。ポリフェノールの代表選手である「レスベラトロール」は残念ながら長生きとは関係ないことが最近の研究でわかっています。

でも今回の日本の研究陣は世界的な論文に先駆けて「ポリフェノールは長生きと関係ないよ」と指摘したところが素晴らしいです。

エイジングケアを研究している人は早めにこの論文に気がつき、英文系の医学誌に投稿すれば、メチャ注目されたのに、残念です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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