ベクレルフリーってビジネス上の差別化じゃなくて、非科学的な差別に繋がる危険があるんじゃないかな?

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ベクレルフリーという不思議な言葉を売りにしていた無添加パン屋さんが閉店した話から、無添加という定義等について先日ブログを書きました(関連エントリー 「無添加の食べ物って体に良いのよね〜❗」って本当か??ベクレルフリーの謎⁉)。その後批判を浴びながら考えたんですけど、

ベクレルフリーを売りにする飲食ビジネス

ベクレルフリーって単に差別化を図ったビジネスなのでは?ということに気づきました。

ビジネス上「差別化」が大事であると言われていますが、そのビジネス上の差別化のキーワードである「ベクレルフリー」って下手な使い方をすると「差別」に繋がってしまうのではないでしょうか?

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MedicalAssessment.comより

日本の現代史における大汚点である「水俣病」と福島原発事故以降の「ベクレルフリー」が似通った状況にあることは非常に危険な状況だと考えます。若い方は水俣病という戦後の高度成長期に利益優先によって多くの方が健康を害して、その非を国及び水俣病の原因を生み出した会社がなかなか認めなかった事件をご存知ないかもしれません。

一企業が製造過程で水銀で汚染された排水を川に流したことによって、水銀に汚染された魚を食べた多くの人が死に至る「水俣病」にかかってしまったという自然環境汚染及び公害の原点とされる事件です(現在も後遺症に悩ませられている方が多数いらっしゃいます)。福島原発の事故によって放射性物質が大気中、土壌、水を汚染したことによって福島産及び近郊の農作物に対して非科学的な根拠によって、健康に影響のないレベルの放射性物質の曝露にフォーカスを当て、提供する食べ物は放射性物質に汚染されていませんよ、と強調するのが「ベクレルフリー」を謳ったビジネスです。

企業戦略として差別化は大事だけど、差別はマズイぞ❗

水俣病という言い訳ができない事件の被害者の方は公害による健康被害だけではなく、周囲から差別を受けてきた事実があります。

メチル水銀中毒症は、当初は原因がわからないからという理由で、「水俣地区に発生した中枢神経の重篤な症状を呈する症候群」とされました。1963年に原因物質としてメチル水銀が特定されましたが、1969年12月17日に厚生省の「公害の影響による疾病の指定に関する検討委員会」は、「水俣病」という呼称は、国内・海外でも広く用いられていること、環境汚染と食物連鎖の要素が含まれていることから、政令におり込む病名としては「水俣病」を採用するのが適当であると答申しました。そして、日本国政府、熊本県、水俣市などが病名として「水俣病」という呼称を用いるようになりました。その結果、地域の名前を冠する公立の小学校の児童、中学校、高等学校の生徒は修学旅行先などで風評的に差別されるようになりました。水俣産のみかんは売れず、農産物資源や観光資源などへの深刻な風評被害も起こるようになりました。地域の若い人々の結婚や就職の差別にもつながっていきました。「水俣病」が差別用語として機能し始めたのです。

「水俣病」という用語は慎重に使いましょう

「ベクレルフリー」にこだわる一派の方って実際に被災地域を復興しよう❗頑張っている方々の努力をどのように捉えているんでしょうか?

当方が使用している食材はベクレルフリーです

と強調することは、当方の使用している食材の産地は福島及び被災地域のものではありません、と差別化するビジネス上の戦略が「差別」に繋がってしまうということに気がついていないのでしょうか??

目に見えないものを根拠に差別化を図るというビジネススタイルに疑問

ここにお箸があります。全く知らない第三者が使用したものです。これをオートクレーブという高圧滅菌の医療機器で消毒(正確には滅菌)をします。完璧な無菌状態です。でも、このお箸が第三者が使用していたものである、と考えてしまうと、このお箸を使って食事をすることに抵抗を感じてしまう人が日本人には多いと予想します。

欧米では家庭内であっても個人個人が使用する食器類に区別はありません。ナイフ・フォークがこれはお父さん、これはお母さん、これは私専用という考え方はありません。

一方、日本ではお箸、お茶碗などは個人個人の専用品があるために、前述のように医学的に全く安全である綺麗な状態のお箸でも、頭ではわかっているんだけど、なんだか使用することを躊躇してしまいます。この不思議な傾向は日本人の心に刻み込まれた特別な感情と考えられます。

この日本独特の日本人特有の汚染に対する気持ちを逆手にとったビジネスがベクレルフリーなのではないでしょうか?

差別化戦略の推進役と波動系の関係

波動医療という不思議なオカルト医療ビジネスが存在しています(関連エントリー 波動医療というトンデモない代替医療というかインチキ医療の拡散力の恐怖❗)。正式な物理学で使用する「波動」とは全く違った概念の疑似科学です。この波動系をビジネスとして発展させたのが船◯総研であることはオカルトビジネスウォッチャーには広く知られています。今は故人となった創業者はオカルト系に自己啓発系ビジネスをプラスして上場企業にまで育て上げた立派な方だと思うんですが、自己啓発系はさておきオカルト波動系は各界に影響を迷惑をかけています。著作物として
波動で上手に生きる―世の中のしくみ、人生の知恵
「百匹目の猿現象」を起こそう!―思いをひろげ、未来をつくる
日本人が知らない「人類支配者」の正体
などなど波動系から世界巨大陰謀論までオカルト系トンデモ本がゾロゾロでてきます。まるで、内海某医師のように⋯。笑

◯井総研の飲食店へのコンサルティング業務で押しているのが「差別化の8要素」というお題目です。差別化戦略と波動系がこんなところで繋がっていることに気がついてどうしても皆さんにお伝えしたくて❗

多分、間違いなく「ベクレルフリー」を強調している飲食店や食材店の店主の本棚にこれらの波動系オカルト自己啓発本が並んでいると、思いますよ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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