「風邪って病名じゃないんだよね」と今では多くの方がご存知のことだと思います。
風邪の正式名称は「風邪症候群」で「感冒」なんて言い方もされます。
カゼは風邪症候群と言うことは広く知られていますけど⋯。
多くの原因はウイルス感染であり発熱・頭痛・咽頭痛・鼻水・咳などのいわゆる風邪の症状がでる病気を風邪って呼んでいるわけです。
なかには気持ちが悪く嘔吐をしてしまったり、下痢や腹痛に悩まされる症状が出る場合もあります。この季節に注目される「インフルエンザ」も風邪症候群の仲間なんですが、特に感染力が強く、症状が重症になる可能性があるので特別視されています。
この風邪症候群は子供の場合、一年で6回以上かかってしまう、なんてデータもありますから、予防と対策が重要になってきます。だってせっかくの冬休みが風邪をひいてしまって台無しなんてことは避けたいですからね。
理論的には二種類のウイルスに同時に感染することはありますが、実際両者たとえばインフルエンザとノロウイルスが同時発症することは稀です(関連エントリー インフルエンザとノロウイルスは同時に感染するか?という素朴な疑問)。
そもそも風邪の原因ってどんな種類があるのか?
風邪症候群を引き起こす原因はウイルスが90%程度を占めます。原因のウイルスとしては、ライノウイルス・新型コロナ感染症ウイルス・アデノウイルス、そしてインフルエンザウイルス、また激しい下痢嘔吐のノロウイルスなどが有名でほとんどの風邪症候群の原因となっています。
他にもロタウイルス・パラインフルエンザウイルス・エンテロウイルスなどなど、現在では200種類近くのウイルスが風邪症候群の原因になることが知られています。
私が医師になった当時は「風邪の原因となるウイルスは100種類くらい」なんて言われていましたが、新種のウイルスが増加したわけではなく、単にウイルスを同定する検査が進化した為に今までは原因として見つけられなかったウイルスを特定できるようになったのです。
ウイルス以外も風邪症候群の原因になり、そのバイキンはマイコプラズマやクラミドフィラなどがあります。
ウイルスと他のバイキンで風邪になった場合の違い
同じ様な症状であっても原因がウイルスと細菌では治療方法に違いが出てきます。しかし、ウイルスだけでも200種類あるので患者さんの対応をいちいち遺伝子まで調べることは現実問題としては不可能です。大きく別けて細菌が原因だと抗生物質が必要になります。「風邪で抗生物質を処方する医師はインチキ」的な表現をする本や人がいますが、細菌性の風邪症候群の場合は抗菌剤が効力を発揮することをお忘れなく。ちなみに米国でインフルエンザの患者さんに対してかなりの医師が実際は抗菌剤を処方しています(関連エントリー 抗生物質の処方は誤診だらけ??インフルエンザへ適切な処方はたったの16%❗)。
たとえば検査キットを使わないでも「インフルエンザか否か」を見分ける裏技もあります(関連エントリー 今だから言える検査しないでもインフルエンザを見分ける方法があります)。
遺伝子を確定するような詳しい検査で無く、簡単な血液検査でもウイルスによるものと細菌によるものでは違いがあります。例えば白血球、細菌性の場合は増え、ウイルス性の場合は増えないとか、専門的には「核の左方移動」などの違いがあります。特に炎症性の反応を見るCRPはウイルス性より細菌性の方が高くなる傾向が知られています。
熱の出方も少し違います。夜になると熱が高くなる、でも日中はそれほど高くないという症状の時は、ウイルス感染の場合が多いです。もちろん解熱剤などを服用している場合は薬の効果の出方によって熱のパターンに違いはあります。
今ではインフルエンザ以外にマイコプラズマ、ニューモウイルスをその場で見分ける検査キットの使用が保険適応となっています。それ以外の原因を見分ける場合、採血まで必要か、あるいはレントゲン写真が必要か、など医師の経験値がものを言うのが感染症の基本中の基本の「かぜ」なのです。
実は恥ずかしながら今シーズンは私も10数年ぶりに風邪を引いてしまいました。2週間程度鼻水と軽度の熱、そして全身倦怠感に悩まされました。でも、全く詳しい検査はしませんでした。だって、風邪といいながら毎日のように飲み会・忘年会に参加していたんですから、治るものも治らなくて当然です。
もちろんインフルエンザではありませんでしたが、インフルエンザワクチンは女性と比べて男性の場合、効果を発揮しにくいという研究もあります(関連エントリー インフルエンザワクチンって男性は効果が少ないって本当⁉)。
このシーズンは飲み会・忘年会・新年会で体力を使い、ゆっくり体を休めることができない方はとにかく風邪を引かないこつは⋯・それがあったらとっくのとうに自分で実行してます、って。