知人から「IH調理器が体に悪い影響があるって本当?」との質問を受けました。IH調理器は「電磁調理器」(Induction Heating) を略した電磁波を使用して、フライパンや鍋を温めて料理するものです。電磁波っていうと放射能と同じニュアンスで捉えられ「健康被害」という言葉に直結するので、電磁調理器(IH調理器)もひょっとして健康を害するんじゃないと思って当然です。
IH調理器がヤバイ??
「電磁波が体に悪影響を引き起こす前に火傷するんじゃない?」との私の回答に満足してもらいました。念のためにネットで調べてみるとなんとも不思議なサイトを発見してしまいました。
IH調理器はメチャヤバイ
というタイトルのブログです(http://blogs.yahoo.co.jp/kanmon3nen/17547253.html) 。このブログのトンデモ度が凄いので内容を検証していきますね。
IH調理器は人類史上最悪の調理器??
このブログは多分、ある一定方向のいわゆるあっち側に行かれてしまった方が書かれたものと思われます。のっけから「欧米では普及率ほぼゼロ」と書いてありますけど、その欧米ってどこなんでしょうか?少なくとも私の友人(在米国)のキッチンにはIH調理器が並んでいましたし、海外の料理番組でもIH調理器は使用されています。
IH調理器は、これまで人類が遭遇した調理器具のなかで、もっとも危険極まりないものです。猛烈な強さの電磁波を発生するからです。「電磁波は人体に有害である」。2007年WHO(世界保健機構)もついに公式に認めました。日本でのIH調理器普及は、固際的には狂気の沙汰なのです。アメリカでのIH調理器普及率は、わずか0.4%。それもレジャーボートなどの湯沸かし用。台所用のIH調理器の販売台数はゼロです。
と上記のブログには書かれていますけど、突っ込みどころ満載でどこから突っ込めばいいのか迷ってしまいます。おっしゃるように電磁波をやたらめったら使用したら健康を害して「人体に有害である」と言えますが、ついにWHOが認めたなら、それ以前は「電磁波って体にいいのよね〜by WHO」って事実でもあったのでしょうか?このブログによれば台所用のIH調理器は販売台数は0とのことですけど、じゃあこのようにIH調理器を販売している会社って倒産しちゃたのかな??
この積極的にIH調理器を販売しているGeneral Electricってあの「GE」なワケですから、現時点で少なくとも倒産はしていないと思います、GMは一度潰れましたけど。笑 欧米では販売台数は限りなく0に近いので、ひょっとすると開発途上国や健康被害に鈍感な日本?とかに売りつけているんでしょうか(陰謀論者が好きそうな流れ)?
でも、開発途上国では電力不足が大問題なんで、電気を使用するIH調理器がGEのような巨大産業の売り上げに貢献するほど普及するわけないし、日本はしっかりと国内で生産しているのでなにもGEなどの海外の電機メーカーのIH調理器を使用する必要もありません。
恐怖のIH調理器の健康被害⁉笑
えーっと、このトンデモブログによりますと、IH調理器は「発ガン、催奇形、流産、自殺」の原因になっているそうです。
電磁波問題の世界的権威ロバート・ベッカー博士 (ニューヨーク州立大学) は電気器具から出る電磁波の「安全基準」は1ミリガウスとしています。1ミリガウスに比べて、4ミリガウス以上の場所で暮らしている子どもは、白血病4.73倍、脳しゅよう10.6倍です (国立環境研究所)。
ところがIH調理器は30離れた場所でも70ミリガウス前後被ばくします。電磁波は近づくと急激に強度が強くなります。料理のときは近づくのがふつうです。すると被ばくする有害電磁波は1000ミリガウスにもたっするでしょう。
ここも突っ込みどころ満載なんですけど、固有名詞に注目してみます。「電磁波問題の世界的権威ロバート・ベッカー博士 (ニューヨーク州立大学)」って誰ですか?「Robert Otto Becker」って人を電磁波問題の世界的権威!って言っているんでしょうけど、このロバート・ベッカーさんは実在の整形外科の医師であって、確かにニューヨーク州立大学で教授をしていました。医学的な論文はいくつか書いていますが、一般向けの本として「The Body Electric」とか「Cross Currents. The Promise of Electromedicine, the Perils of Electropollution」というものを出版しているために、いつの間にやら世界的権威になってしまったようです。タイトルから電子医療は危険的な内容の本と思われます(まだ、実物は読んでいません)。
電磁波で白血病・脳腫瘍が増える??
必要以上の電磁波を直接、それも至近距離で浴び続ければそれはそれで健康被害がでることは当然です。この電磁波怖い説の人が書いている脳腫瘍や白血病が電磁波で増える、という話は「兜論文」として一部の懐疑主義者の間では知られているものです。この論文が疫学的に妥当なものかどうかの検討は相当専門用語が飛び交う、難解なものになってしまうので止めときます。電磁波は物理の原則として、影響力は距離の二乗に反比例します。離れれば離れるほど影響力がなくなってきますから、当初に書いたように電磁調理器で健康被害がでるなら、その前に火傷しちゃうよ、という表現になりました。電磁波が脳腫瘍や白血病のリスクを高めていると仮定した場合、
電磁波を出している携帯・スマホによって白血病・脳腫瘍が増加
しているはずなんですけど⋯。
このブログを書いている途中で、やたらめったら電磁波を怖がる傾向と文章構成は、医療不信を撒き散らしている一派と同じ香りして、よくよくもとなったブログを読むと小さな字で「船瀬俊介著「しってはいけない」からの引用です」って記されていました。やっぱりね 笑
基本的にこの興味深いブログを書いた方は専門家ではありませのでdisる対象外です。しかしながら、批判した文章は一定方向の思考回路を持ち合わせたプロの本の引用ですので、対象とさせていただきました。
おまけ 後日、こんなブログも書きました