明治時代から進化していない日本のニキビ治療薬

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硫黄とカンフルが含まれた保険診療で使用されるニキビの塗り薬があります。

その名も硫黄カンフルローション

硫黄はそのものズバリの硫黄(元素記号S)、殺菌作用と皮膚の軟化作用があります。温泉に入って皮膚がツルツルする、それと同じです。

温泉

硫黄カンフルローション自体温泉の香り、別の言い方ですと腐ったゆで卵の様な独特の臭いがします。
カンフルとは皮膚の軟化剤です。カンフルとはカンファー(ドイツ語 camphor) から来ている言葉で樟脳の事です。
硫黄カンフルローションはクンメルフェルド液と言われドイツのクメンフェルド医師が明治時代に開発しました。
ドイツ語がつかわれていること自体、今の日本の医学的には古臭い感じがします。
樟脳といっても若い方はご存じないでしょうけど、服をしまっておく時に虫食いを防ぐために昔は多用された
防虫剤・防腐剤の一種です。
樟脳は皮膚から吸収されやすくスッキリした清涼感するメンソールの様な効果&消炎効果、鎮痒作用があるため、赤く腫れたニキビに効果があるのです。

副作用として飲み込んでしまった場合に神経や筋肉の障害を起こす可能性があります。

明治時代の1897年に今のアステラス製薬の前身の藤沢薬品の更に前身の藤沢商店から「藤沢樟脳」という名前で発売されました。

硫黄カンフルローション

抗菌剤も使い方によっては有効です

赤く腫れ、化膿したニキビには抗菌剤が有効です。一番ニキビ治療に使用されるものは「ミノマイシン」です。
抗菌薬としては古典的なもので、耐性菌が出現しにくいとされていますが、
めまい・ふらつきの副作用が出やすいことが知られています。
原因としては血液脳関門(blood brain barrier)を通過するため、直接脳に薬の一部が達するために
この副作用が出やすいのです。
ニキビ治療はどうしても繰り返し症状が出ますので、抗菌剤をいかに短期間の使用に留め、
副作用を少なくしつつ効果を十分に発揮させるために医師のチェックが必要ですから、
あまり長期間の処方はおすすめできません。
塗り薬として使われているのがダラシンとアクアチムです。
ダラシンはクリンダマイシンという抗菌剤が主成分。
アクアチムはナジフロキサシンと言われるチョッと新し目のニューキノロンという抗菌剤に分類されるものが主成分です。抗菌剤は赤く腫れたニキビにしか有効ではありませんので、白ニキビやにきび跡には全く効果はありません。

ディフェリン広告

2008年やっと新薬登場「ディフェリン・ゲル」

ディフェリンってご存知ですか?TVでしきりにニキビの治療はお医者さんで、とやっていましたね。
ディフェリンは処方薬ですので医療機関以外では貰えないお薬だからなのです。
処方薬を広告することは薬事法で禁じられていますから、苦し紛れに考えられた広報手段なのです。
このディフェリンも世界中で当たり前のように使用されていましたが、日本では副作用の問題のため、
保険薬として2008年にやっと採用されました。
ディフェリンはアダパレンというものが主成分でニキビ治療には画期的であり、世界基準のお薬です。

80%の方が使用開始直後から痒みや乾燥の副作用を訴えるディフェリン

せっかく有効な薬なのに使用を途中で断念する患者さんが多いのです。
これは作用機序からしては当然の反応ですので、副作用というよりは随伴症状として
医師側が充分に患者さんに説明する責任があると思います。
その必要性があるからこそ医師しか処方できないようになっているのですから。
これをちゃんと患者さんに説明していけば一部で効果自体に疑問を持たれている
硫黄カンフルローションなんて使う必要性が全くなくなるのです。

追記 2015年4月から日本でも過酸化ベンゾイルを主成分とした「ベピオゲル」が保険診療で使用することが可能となりました。 関連エントリー 【朗報】ニキビ治療の新薬「ベピオゲル」保険適用、「BPO 過酸化ベンゾイル」が主成分、世界標準のにきび治療が可能に❗ ディフェリンとベピオゲルを組み合わせることで、標準的なニキビの解決が期待できます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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