花粉症の人やアトピー性皮膚炎の人は多分一度は血液検査で特異的IgEって血液検査をしたことがあると思います。
アレルギー検査があてになら無い??
ハウスダストやスギなどに対して反応が出ていると「鼻水の原因はスギですね」とか「皮膚が荒れているのはハウスダストが原因ですね」と診断します。
花粉の場合はゴーグルをしたりマスクをしてアレルギーの原因であるスギを吸い込まないように注意しながら点鼻薬・点眼薬・抗アレルギー剤を使用して対抗できます。アトピー性皮膚炎の場合は、全くハウスダストがいない環境を通常の生活で作ることはほとんど不可能なために、なるべく室内の清掃を頻回に行うことで発症を抑える(完璧に発症させないことはかなり難しい)補助になります。
では、食物アレルギーの場合はどう対抗すればいいのでしょうか?通常、血液検査でアレルギーを調べる場合は「卵白」「小麦」「そば」などを対象にします。それらに対してアレルギーの検査で特異的IgEが高く反応しても、完璧に除外するには手間もお金もかかってしまいます。特にマスメディアで取り上げられて有名なのが「ピーナツアレルギー」です。ほんの数ミリグラムのピーナツを食べてしまったためにアナフィラキシーショックを起こして、最悪死に至ることが知られています。
でも、採血によって反応したからっていって必ずしも原因の食べ物を除去しないでもいいのではないか?という考え方がアレルギー治療の現場ではささやかれています。
食物アレルギーに対するガイドライン
遅延型フードアレルギーの検査としてIgG検査が広く行われています。その検査も実は意味がない、と公式に学会が表明しています。
食物アレルギーハンドブック 2014 子どもの食に関わる方々へ という日本小児アレルギー学会が出しているガイドラインがあります。そこにはこのように記されているんです。
血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起
日本小児アレルギー学会は、食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることに対して、「食物アレルギーハンドブック 2014 子どもの食に関わる方々へ」(2014年日本小児アレルギー学会発刊)において推奨しないことを注意喚起しています。米国や欧州のアレルギー学会でも食物アレルギーにおけるIgG抗体の診断的有用性を公式に否定しています。
その理由は、食物抗原特異的IgG抗体は食物アレルギーのない健常な人にも存在する抗体であり、このIgG抗体検査結果を根拠として原因食品を診断し、陽性の場合に食物除去を指導すると、原因ではない食品まで除去となり、多品目に及ぶ場合は健康被害を招くおそれもあるからです。
日本小児アレルギー学会は食物抗原特異的IgG抗体検査を食物アレルギーの原因食品の診断法としては推奨しないことを学会の見解として発表いたします。
日本小児アレルギー学会より
つまり、血液検査で食べ物の特異的IgGを検査しても、実際にその食物を食べたからといってアレルギーが出るわけではないし、神経質に原因を考えられる食べ物を除去すると体の成長に必要な食べ物も除外してしまうことになり、よろしくない❗ということです。食べ物のアレルギーを予測するための血液検査は意味が無い、と解釈してくださいませ。
詳しい解説 ここでIgEとIgGという言葉が出てきました。アレルギーの原因はIgEなのですが、IgGが血液中に数十万倍存在するために、間違ってIgGを検出してしまうことが多く、そのためにIgEを測定しているはずなのにIgGまでも測定していて、本当は陽性ではないのに、陽性と診断されてしまうことがありました。
症状と一致しないことが多い食物の特異的IgE検査
実は私も家族が極度の複数のアレルゲンによるアレルギーでした。子供が1歳くらいの時に大学病院を皮膚の疾患の治療に訪れた時、泣き叫ぶ子供を押さえつけて医師が血液検査をしたこと家人から聞いて、烈火のごとく怒りまくった記憶があります。
以前から食べ物の対する特異的IgEの反応と実際の発症はあんまり関連性が強くない、ということを臨床医というか開業医は気づいていましたし、明らかにある食べ物を食べてアレルギーの症状がでたら、その原因と考えられる食べ物を除外するように気をつけるのが当たり前の行動ではないでしょうか?このような問題を解決する手段がコンポーネント検査というものです。
例えば卵アレルギーが疑われる場合
というフローチャートに従って、通常の抗体検査で陽性と判定されたものをさらに細かく分別することによって実際に本当にその食べ物がアレルギーの原因になっているかを調べることが可能となっています。しかし、ここで問題が発生します。
保険適用されているのは3種類だけ❗
このコンポーネント検査を健康保険で実施できるのは、卵と小麦とピーナツの三種類だけなんです、現時点では。この検査方法が他のアレルゲンゲンにも広く応用できれば、アレルギーの原因に本当に単にIgEが高く反応するだけで除外してしまい栄養不足となることを防ぐことができるのに。
これは余分な話ですけど、アレルギー科を看板にあげている(標榜する、といいます)うちで、アレルギー専門医がいる医療機関って30パーセントしかありません。つまり、アレルギー科の医師だと思って受診しても7割の医師は専門家ではないのです。食べ物アレルギーを見分ける「コンポーネント検査」は実際に原因として疑われる食べ物を口にしてもらう負荷試験を行います。
これはヘタをすれば死にいたるようなアナフィラキシーショックを起こしかねないので、そこらの単にアレルギー科を名乗っている医師に安易にコンポーネント検査をしないでほしいというアレルギー学会やお役所の考えが反映されているのかもしれませんね!
とにかく、食物アレルギーの血液検査は多くの場合、意味が無い、ということを記憶の片隅に入れておいてください。じゃないと、自分の子供が必要ない、それも極度の苦痛を与える検査の犠牲になりかねませんから。