行政主導のメタボ検診に疑問を感じていたんですけど、やっぱり肥満はなにかと病気の原因となっているようで、がんの発病リスクと密接な関連性がある、なんて話が登場しています。
本記事の内容
肥満とがんの密接な関係、メタボ検診で痩せろ、痩せろってうるさいけど
今まで疫学・統計学的にわかっていたことは
肥満だとがんになりやすい
という、漠然としたものでした。これは色々と突っ込みどころがある見解なのです。例えばストレスが肥満の因子だあった場合、ストレス自体ががんのリスクを高めているだけであり、肥満を解消してもストレスを溜めがちな性格だとがんになりやすい、との解釈が成り立ちます。この場合、肥満とがんの発病リスクは関連性が強いけど、原因と結果ではないということになりますね。
最近、「太っているとがんになりやすい、10種類のガンが特定された」という話が出ています。
22種類のがんを調べたら、10種類のがんが肥満と強い関連があった
大腸がんや腎臓がんは肥満の人に多いことは、経験則からも知られていましたし、それを裏付けるような論文も多数存在します。でも人が生きていく上では様々ながんと関連性がある生活習慣とか生活環境とかがあり、何が強く発がんと関連しているのかを見分けることはできません。
今回の話の元となった論文は様々な因子を調整して、それでも肥満を尺度であるBMIと10種類のがんは強い関連性があることがわかりました。その論文は「Body-mass index and risk of 22 specific cancers: a population-based cohort study of 5·24 million UK adults(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736 (14) 60892-8/fulltext)」という題名で医学専門誌としては非常に高い評価を得ているThe Lancetに掲載されています(The Lancet,Volume 384,Issue 9945,Pages 755-765) 。
論文の内容をさっくり述べますと
・英国の542万人を対象として調査をした
・英国で発症が多いがん、ベスト22のがんに関してBMIとの関連性を調べた
というかなり大掛かりなデータをもとにしたものです。
統計学を専門とする人や物理・化学系の研究者に突っ込まれやすい医学の疫学データなのですけど、今回はまず線形モデルを調べ、さらに非線形モデルを照合することによって⋯この辺りは普通の医師ではトンチンカンな場合多いくらい複雑なデータ解析によって性別はもちろんのこと、喫煙や年齢のリスクも排除した結果が
10種類のがんは、肥満と密接な関係があった
という結論を導き出しました。
上記論文より
えっ、22のがんって言っておいて23個グラフがあるじゃん❗と思ってはいけません、この研究者たちはしっかりと乳がんについては閉経前後さえも分けてデータが正確になるようにしているんです。
気になる肥満と関連が強い10種類のがんはなんだ?
では、気になる肥満だとなりやすいがんを発表します、っていうか論文発表されています。
・子宮がん、胆嚢がん、腎臓がん、肝臓がん、大腸がん、頸部のがん、甲状腺がん、卵巣がん、乳がん(閉経後)、白血病(血液のがん)
の10種類のがんがかなりの確度で肥満つまりBMIと密接な関連がありました。
特に子宮がん、胆嚢がん、腎臓がんはP<0.0001となっていて、がんと肥満の関係が間違っている可能性は一万分の1、他の言い方に変えると99.99%の確率で正しいというものです(この研究者が元のデータの計算を間違っていない限りは)。
これがその論文です。http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736 (14) 60892-8/fulltext?version=printerFriendly でアクセスするとどなたでも論文の全文とグラフや表を見ることができます。
BMIの増加とがんの深〜い関係を日本人にあてはめると
このような結果が出た場合、痩せればがんにならないのか?という疑問が当然湧き出てきます。実は肺がんと口腔がんはBMIが増えると減る傾向がありました。
日本人の場合、がんと診断される臓器別の順位は1位が大腸がん、2位が胃がん、3位が前立腺がん、となっていて死亡者数は1位が肺がん、2位が胃がん、3位が大腸がんとなっています。
となると胃がんと前立腺がんは肥満との強い関連性は認められませんでしたので、日本人である限りデブだからがんになりやすいと心配する必要はありません❗となるといいのですけど、多分そうなる可能性は限りなく低いのでご注意くださいね。