以前から勤務時間が定時制ではないシフト制の看護師さんは乳がんのリスクが高まる、なんて話がありました。
シフト制だと生活のリズムが崩れる傾向がでてくるので、ホルモンバランスが安定しないとかストレスが掛かるからなどの説明がなされてきました。今回はシフト勤務の場合、糖尿病のリスクが高まり、特に男性の場合はなんと37%❗という驚きの報告を見つけたので検討してみます。
働く時間によって糖尿病になりやすいとなると⋯。
この論文を書いたのはYong Gan氏が中心となって Huazhong University of Science and Technologyの研究者が検討したもので、「Shift work and diabetes mellitus: a meta-analysis of observational studies」というタイトルで発表されています(Occup Environ Med doi:10.1136/oemed-2014-102150)。中国の論文ですけど世界中の論文を抽出して書かれたものです。
メタアナリシス(meta-analysis)という手法は世界中の論文を集めて解析する方法ですから、中国の労働環境が特異であるとか、そのようなバイアスが掛かりにくい手法なので信頼度が高いものです(自分の考えに適さない研究データを無視する、というインチキが無い限り)。
研究対象となった論文は日本のものが6、スウェーデンが2、米国が2、そして中国とベルギーの計12件です。つまり、半数は日本のものですから、この結果に非常に興味が湧きます。
シフト制勤務体制は男性で37%糖尿病になりやすい
シフト制はローテーション、夜勤、準夜勤などが入り交じった混合シフトなど勤務する時間帯が常に決まっていない状態をさします。女性では9%、男性だと37%糖尿病になりやすいという結果になりました。
この論文が検討した人数は糖尿病患者さん14595人を含む22万6652人なので、統計学的な処理をするには十分すぎる数です。
男性の糖尿病はテストステロンと関連している可能性が高い
男性にも更年期障害があることが近年注目を集めています。男性の糖尿病ではインスリン抵抗性の場合、低アンドロゲンの傾向があることが知られていて、それは男性が男性であるためのホルモンであるテストステロンの値に左右されます。テストステロンは朝と夜では大きな変動があるためにシフト勤務という生活のリズムを狂わせるシフト勤務によって、アンドロゲンに影響がでていることは間違いが無いようです。シフト勤務の中でもローテーション制の場合、勤務時間がコロコロ変わってしまいますので、睡眠のパターンが崩れることも大きく関連しています。
- 睡眠不足が糖尿病を引き起こす
- 睡眠の質が糖尿病に影響している
- 新しい勤務時間になれるための努力自体がストレスとなっている
という原因が今回の論文によって示唆されています。ということは夜の仕事の人は夜だけ、昼間の仕事の人は昼間だけ、という完全に勤務時間を別けることで糖尿病のリスクを回避することが可能という意味にも解釈できます。
つまり、日常生活のパターンは崩さない方が糖尿病になりにくい、と言えます。
サービス業を中心に24時間体制が多くなってきましたが、夜間の仕事を避ける人が増えて人材の確保が難しくなってきています。人間はお日様とともに起床して、日没に合わせて寝るという原始以来の生活パターンに合わせて進化して来たためにこのような結果になっているのでしょうね。でも、現代の生活になれた人類がいきなり大昔の生活パターンに戻れるわけがないので、今後はシフト体制に対して耐性が出来ている人類が繁栄して生き残って行く可能性もありです。
進化論の基本は生存競争において強いものが生き残ってきたということではなく、たまたま環境の変化に対応できた生物が生き残ってきたということですから。