チョコレートで歩行困難が改善する⁉ポリフェノールの効果か?

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チョコレートってダイエット中の方には大敵なイメージがありますが、ポリフェノールがたっぷり含まれる為にエイジングケア的効果を発揮する報告があります。

もちろんポリフェノール自体の効果についてもまだ賛否両論状態なのですが、ダークチョコレートを積極的に取り入れる事によって下肢末梢動脈が原因で歩行困難な人の症状が改善したという報告があり、これまた賛否両論がわき起こっています。

ダークチョコレートが動脈硬化による歩行困難を改善すると言う話

下肢末梢動脈がチョコレートによって改善したとするこの研究のポイントはミルクチョコレートではあまり効果がなかったのに、ダークチョコレートだと効果があったという点に興味がわきます。「Dark Chocolate Acutely Improves Walking Autonomy in Patients With Peripheral Artery Disease」( Journal of the American Heart Associationより)。下肢の末梢動脈に障害(Peripheral Arterial Disease 略してPAD)がある患者さんがダークチョコレートを食べると、歩行に伴う痛みが改善した、という論文の内容です。

PADって言葉はあまりおなじみではない病名ですが、日本ではなぜか「閉塞性動脈硬化(Arteriosclerosis Obliterans略してASO) 」と呼ばれることが多いのですが、世界的には末梢動脈疾患と呼ばれています、つまりPADですね。この病気は末梢動脈に動脈硬化がおき、それによって手足の血流が悪くなり、足のしびれ、痛み、冷たさを感じるようになり、悪化すると皮膚の潰瘍や壊死が起きてしまう辛い病気なのです。ある一定距離を歩くと痛みによって歩行困難になる間歇跛行(かんけつはこう)が特徴とされています。

今回の論文は男性14人、女性6人のPAD患者さんに40gのダークチョコレートかミルクチョコレートを別々の日に食べてもらい、歩行距離を測定するという非常に単純な実験を行ないました。

Dark_Chocolate_Acutely_Improves_Walking_Autonomy_in_Patients_With_Peripheral_Artery_Disease

その結果、ダークチョコレートを食べるとなんと歩行距離が11%も増加することが可能となっていました❗

よくよく読んでみると

ダークチョコレートには85%のカカオが含まれていて、ミルクチョコレートのそれは30%未満であるために、ダントツにポリフェノールを含むダークチョコレートが動脈硬化によって血管が詰まっているために長距離を歩行できない患者さんの状態を改善した、という結論に達しています。

でも、論文をよくよく読んでみますと歩行距離が11%増加しているのですが、実測距離にするとたった12メートルであり、歩行時間だと17秒延長しただけなんです。

統計学上の処理だとp<0.001であり明らかに有意な差になるのですけど、そもそも同じ患者さんにある日はダークチョコレートを食べてもらい、別の日はミルクチョコレートを食べてもらって歩行距離と時間を比較する事自体に無理があったんじゃないでしょうか?いくら患者さんにプラセボ効果の影響を与えないように実験をしても食べてみりゃダークチョコレートか、ミルクチョコレートかくらい誰だって分りますって❗

さらによくよく読んでみると

甘いチョコと苦いチョコ自体をブラインドすることが不可能であることによって、この論文が怪しげなムードを醸し出しています。しかし、血管の障害に明らかに関連している一酸化窒素(NO) の値は明らかにダークチョコレートで血中濃度が上昇しています。

Dark_Chocolate_Acutely_Improves_Walking_Autonomy_in_Patients_With_Peripheral_Artery_Disease
上記論文より

男性の性機能障害EDを改善する薬の効果は実は血管を拡張することを根拠としてます。このED改善薬を服用すると一酸化窒素(NO) の血中濃度が高まりますし、EDの薬のシアリスはアドシルカという名前で肺動脈性肺高血圧症薬として日本でも保険適用になっていますので血管拡張作用は明らかです。またシアリスは現在ザルティアという名前で前立腺肥大症に対しても保険適用となっていますが、ED治療を目的とした場合は保険適用外という複雑なことになっていますので、ご注意ください(関連エントリー)。

私の専門は泌尿器科ですので、ダークチョコレートを食べるとEDが改善する❗という論文の登場を期待しています。そういえばチョコレートを食べると鼻血がでる、という都市伝説がありますが、ポリフェノールによる一酸化窒素の血管拡張効果をメカニズムとして考えると伝説じゃなくて事実かもしれません??

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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