まだ小さいお子様に限った話ではなく、大人でも大きな錠剤がそのまま飲めない・抵抗がある方はいらっしゃいます。
食べ物と同じで体の中に入ってしまえばクスリも同じと捉えてしまいがちですが、残念ながらそうではありません。
クスリを処方しても正しく服用されなかったら効果が半減、下手したら無駄になってしまうことも。これは、医師としてとても悲しいことなので、正しいクスリの服用方法、是非お読みください。。
飲みにくい錠剤や大きな錠剤の粉砕して飲むことは良い事か?
子供が粉薬を飲めない、というのは良く聞く話です。錠剤やカプセルの場合は喉に引っかかる感じがして飲みにくい、っていうのは大人でもありますし、特に高齢者に多く見られます。例えば1日一回で済む抗菌剤のクラビット500mgは飲み忘れがなく、処方する側としては飲み忘れがないという点では処方しやすい薬なのですが、錠剤が大きくなっています。
クラビットは割線が入っていますので、半分に割って使用する事が可能であることを前提に作られた薬であることが分ります。では、飲みにくいという理由で薬を切ったり割ったり粉砕したりして服用する事って問題が無いのでしょうか?
噛み砕いて飲んだ方が効果が早く現れる?
薬の効果を早めるために、噛み砕いた方が効き目が速いと勘違いしている方って意外と多いのです、特に痛み止めなどでは。製薬会社は薬を設計する段階で、飲みやすいように、或いは薬の効果が十分出るように成分だけではなく、剤型も考慮に入れて作って行きます。薬は胃では吸収されないで、腸に達して初めて人体に成分が吸収されます。
この図にあるNSAIDが非ステロイド性の鎮痛薬です。
しかし、痛み止めなどは胃に悪影響を与えることが多いために、胃では消化されないで、腸に達して初めて成分が溶け出すように表面を胃酸に強い成分でコーティングしています。また、徐放剤といって、時間をかけて薬が効果を発揮させることを目的として、少しずつ薬が溶け出すように工夫されているものもあります。もちろん薬の苦みを隠す目的でカプセルに入れたりコーティングしているものあります。
良心的な錠剤を砕くグッズを販売している所は、ワザワザ「飲みにくいサプリ」と書いてあり、決して「薬」とは書いていません。
安易に割ったり噛み砕いたりして服薬することは、パソコンを勝手に改造してもよほど知識が有る人以外は悲惨な目に合うのと同じで、素人さんが勝手に弄くり回してはいけません。特に鎮痛剤は割ったり、噛み砕いたり、粉状にしたからって成分が吸収される腸に達する時間が短縮するわけではありませんので、処方された形状で服薬してください。
効果が現れなくなる場合もある
カプセルなどに入っている薬の中には胃酸によって薬の成分が分解されて効果を発揮できなくなる場合もあります。
お腹の腸内細菌層に整腸剤を届ける場合も聞くも涙、語るも涙の開発物語があるのですが、無防備な状態だと整腸剤も胃酸に晒されるとせっかくの善玉菌も全滅なのです。実はヨーグルトって腸内細菌を整えてブルガリアヨーグルトに至っては長寿の秘訣って大昔は言われていたのですが、ほとんど胃酸で死滅していた、って笑い話もあります。
現在はヤクルトなどに代表される乳酸飲料メーカーの努力と工夫によって、胃では影響を受けないで直接腸に作用する製品も開発されています。
でも、錠剤やカプセル、粉薬が飲みにくい方は
そんなこと言われても、錠剤が飲みにくいと言う方は主治医にお申し出ください。同じ薬でもカプセル・粉状になった剤型のラインナップを取り揃えたものもありますし、高齢化世代に対応した口腔内崩壊錠といって、口の中で自然に溶け出して水さえ必要としない薬もでています。
以前、ご高齢の方に錠剤では、飲みにくいと思って錠剤ではなく、粉状になった抗菌剤を処方したことがありました。そしたらそのご夫人は「この薬、フロモックス小児用細粒って子供用の薬なんて効果が弱いんじゃないの」とのご質問を受けました。子供用のフロモックスでも、成分のミリグラムをちゃんと大人用に換算し直して、十分効果があること説明して納得していただきました。