熱中症に注意❗脱水の応急処置で「点滴お願いします」は大間違いです。

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熱中症がテレビなどで取り上げられる時期になりました。とにかく涼しくして水分補給を、なんて感じのインフォメーションばかりです。実際に体調を崩して医療機関を受診した患者さんは先ず「点滴おねがいします!」とリクエストする傾向があるんです。

脱水を引き起こす熱中症ですけど、脱水と言っても種類があります

熱中症で脱水になっているから点滴で水分を補ってくれ、ということなんです。しかし、脱水と言っても種類があり、治療法も異なって来ます。

細胞外液を失う脱水⋯volume depletion

細胞と細胞の間は間質液と呼ばれる水分と血漿(血液の構成成分の1種類)によって満たされています。これらの水分を細胞外液と呼びます。

細胞内液も失う脱水⋯dehydration

細胞内液つまり細胞自体の水分を失った状態です。日本では両者を合わせて「脱水」と呼んでいますが、生理学的な解釈では別の状態なのです。例えば昨年猛威を振るったノロウイルス感染症による脱水は嘔吐と下痢が中心ですから、細胞外液を失った脱水です。熱中症で引き起こる脱水は細胞自体の水分が失われるdehydrationです。熱中症で体から水分が無くなって行く過程は

水分不足で細胞外液が無くなる→それを補うために細胞内液の水分が細胞外に出てしまう

という事になりますので、先ずは体を冷却しながら生理食塩水などを急速に点滴して、水分を補って生命の危機を脱出することを主目的に対応し尿がでるのを待ちます。同時に血液検査を行なって電解質のバランスを調整する点滴を選んで、必要に応じてブドウ糖なども加えるのです。この一連の流れを見ると一般のクリニックレベルでは対応はできません。

救急車を呼んで大病院で対応することが、熱中症時の脱水の正しい行動なのですけど、あまり気軽に救急車を呼ぶのも考えものですから、予防が一番であることに間違いはありません。

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脱水の応急処置はとにかく経口摂取、口から飲む事です

失われた水分を補給する一番安全で確実な方法は口から飲むことです。脱水かな?と思ったらとにかく水分を補給することが重要です。子供の場合は大人と比較して必要とされる水分が体重当たり多いので、脱水の時は急速に補給するために、点滴が一番、という考え方がありました。特に幼児は体調が悪い時に自分でゴクゴク水分を飲んでくれません。

しかし、WHOの見解としては「口から水分を補給する経口摂取が年齢を問わずファーストチョイス」としています。コップで水分を飲ませようとしても、拒否したりノロウイルス感染の場合は直ぐに吐いてしまいますので、スプーンで少しずつ飲み物を口に含ませるだけでも、応急処置としては正解なんですけど、子供のことなると親は「点滴お願いします」と要求してしまいがちな気分も十分理解できます。

もちろん重症の場合は点滴で対応することになりますが、脱水を起こした幼児の血管って非常に見つけづらいので、やはり予防が一番ということになります。

脱水の重症度の見分け方

脱水の状態が重症であるか、軽症であるかを見分けるためには本来なら医師が血圧や脈拍、そして血液検査を行なわないと正確な診断はできません。脱水かな?と思っていきなり救急車を要請するのもこの時期は考えものです。では脱水の重症度は一般の方でできるのでしょうか?

喉が渇いたら水分が足りない

長時間外出をするときは、飲料水を持参してください。街中であればどこでも自動販売機を見つけることが可能ですから、お出かけの際はお金も忘れないようにしましょう。

尿量が減って来たら水分が足りない

当院は泌尿器科も標榜していますので、頻尿を主訴として来院する方が多いのでこの時期は診療に際して慎重な対応が必要となります。頻尿を気にして水分を控える方がいますので「先生、暑くなって汗をかくからなのか、尿の回数が減ったよ」と患者さんがおっしゃっても「そりゃ、脱水❗」と言いたくなる事があります。尿量を測定する習慣がある方ってほとんどいないでしょうから、目安として3時間以上尿意をない場合は脱水を疑ってみてください

本来は体重がどのくらい減少しているかを目安にすることもできますが、外にいる場合に体重を計測することは不可能ですから、喉の渇きとオシッコの量が少ないなら、脱水傾向にありますので十分な水分の確保をすれば自然と回復してきます。尿がしっかりと出だしたら回復したと考て頂いて大丈夫です。

問題となるのは重症の場合です。脱水が進んで行くと頭痛やめまい、脱力感が強くなってきます。そのまま放置しておくと、血圧は低下して心臓がバクバクする頻脈になって最終的にはショック症状になり、意識が無くなってしまいます。そんな場合は即救急車を要請しないと生命の危機に瀕してしまいます。

高齢者は室内で起こる「非労作性熱中症」にご注意を❗

炎天下での運動で起こると思われがちな熱中症です。しかし、実際に熱中症と診断される高齢者の多くは室内で体調を崩すことが多いので注意が必要です。運動をしていない、体を動かしていないから「非労作性」の名前がつきます。

例えば一人暮らしの高齢者が室内で体調を崩したとします。例えばカゼを引いた場合、つらくて食事の支度もできませんし、エアコンはカゼに良くないと思って消している事が多く、閉め切った室内でぐったりしている所を異変に気づいた隣人や親族が発見して救急車を要請するなんてことが多く起きています。暑さと栄養不良で体力はドンドン落ちて行きますので、免疫力も低下して肺炎などを併発して脱水+感染症という重症例も報告されています。

熱帯夜が続く場合は節電なんか意識しないで、バンバンエアコンを使用してくださいね、高齢者の方は。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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