先進国で低所得者に肥満が多い、その理由は運動する余暇を確保出来ない労働環境、手料理を作ることができない長時間労働、安易なジャンクフードによる過剰なカロリー摂取が原因だと考えられています。
日本でも所得と肥満は反比例の関係、所得が低いほど体重が増えるというデータがあります。
肥満と経済格差の関係
しかし、その認識は本当に合っているのでしょうか?
以前、ブログで「借金と肥満の関係」を書いた時に疑問が少し残っていました。
高所得世帯ほど野菜摂取量が多いという事実
高所得世帯ほど家計と時間に余裕があるために、手のこんだ手料理を作ることが可能と予測されますが、厚生労働省のデータを詳しく見てみると食材の重さで計測しているのでカロリー摂取量が多いかどうかは判明しませんけど、少なくとも高所得世帯の方が全ての食材について量的には消費していることが読み取れます。
このデータを単純に考えてみると消費している食材の量が多いわけですから、当然食べているカロリーも多くなるので所得が増えるほど肥満傾向がでるはずなのですが、結論は真逆です。その説明としては高所得層が選択する食材が低カロリー傾向にあり、さらに余暇を運動などの身体活動に利用しているために、肥満にならないという読み方もできます。
また肥満自体は開発途上国でも増加し続けていることも「デブは世界中で3人に1人⋯」というブログで書いてあります。
肥満を招く原因として人種・教育・所得とされていますが⋯
このような要素を考えると肥満しやすい環境、肥満が将来的に不健康を招くと言う知識・選別された食品の摂取が関連することを否定するのはかなり難しいことになります。先日「Obesity and economic environments」というタイトルのオンライン版の論文が「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に掲載されていました。結構長い論文ですが、オンラインで全て見ることがでるのですけど、長過ぎますので内容だけチョイスしてお伝えします。これは米国に限った話ですので、そのまま日本に当てはまるかの議論は残ります。
BMIの上昇は学歴・男女差・人種に関係なく1980年代から2000年代には増加していた❗
つまり、この期間においては米国人はだれでも肥満傾向まっしぐらってことになります。
上記論文より
時代の流れとともに経済格差・社会格差に関係なく肥満傾向にあった
ので、肥満の原因を所得や学歴に原因があるとするのは無理があるんじゃないの、という結論になっています。また、労働時間自体は減少しているし、家の用事を済ます時間も少なくなっているのに、遊ぶ時間や車による移動時間は長くなっています。ということは
仕事がハードで食事の用意をする時間が少なくなっているので肥満になる、という理論に対して「あんた達は遊ぶ時間があるくせに、手料理を作っていないから太るんだよ」的な考え方もあることを意味してるんです。さらに遊ぶ時間は十分確保できているんだから、「余暇を運動に利用していない責任はあんた達にあるの」と言っているも同然の論調になっているような気がするのは私の読み方がいけないのでしょうか??
肥満と唯一関連するのは車の普及率⁉
車の普及率が増加するというのはその国が経済発展しているという指標になりますので当然食生活も豊かになります。以前、低所得国においても糖尿病は所得格差より車の普及率の方が関連性が強いという内容のブログ「生活習慣病は低所得国でも増加している⋯」で明らかにしました。今回の論文では肥満傾向にある時期は交通機関を利用して移動時間が延びている時期と一致していると指摘しています(米国ですから、交通機関のほとんどは車のはずです)。
つまり、経済的にある程度余裕ができ、時間の余裕ができると運動したり食事に気を使ったりするより「車でどっかに遊びにいっちゃう」という人間の性向が肥満を招いているという理論が成り立ちます。
「車社会が肥満を招く」ってまるで「風が吹くと桶屋がもうかる」的関連性が一番説得力があるのです。
車で移動すればするほど肥満を招く❗かも?
という新理論を打ち出そうと思ったのですが、安い車であっても高級車であっても車にはかわりありませんので、低所得層でも車くらいは購入出来る日本では、低所得者の方が肥満傾向が強いという最初に記載した図の説明がつかなくなってしまうのです。
顔を洗って出直してこの「肥満と経済環境」って論文もう一度読み直します。