HPVワクチン、いわゆる「子宮頸がん予防ワクチン」の効果と安全性は???

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子宮頸がんの発生を抑えるとされる「子宮頸がん予防ワクチン」は日本で承認された時点では定期接種ではなかったので、ワクチンに対する情報を早くキャッチした方が自己負担で行なっていました。

行政が「定期接種」と位置づけたために多くの方が接種をうけることによって副作用、あるいは副反応と思われる被害がでています。行政側もはじめは積極的にアナウンスしていたところ、副反応をマスメディアが大々的に報道したため、「予防接種を中止したわけじゃないけど、積極的には推奨しないよ」と中途半端なことを言い出したので混乱が大きくなっています。

副作用が大きく報道されている子宮頸がん予防ワクチン

子宮頸がん–見のがすな!がんのサイン–疾患情報–大鵬薬品工業株式会社

若くて死亡する人が少ないのになぜ予防接種を行なうかという疑問が「反子宮頸がんワクチン派」の主張にありますが、毎年約15,000人の患者さんが発見され、約3,500人が死亡しているので予防できるなら予防するにこしたことはありません。

基本的に予防できる病気に対するワクチン接種積極派の当院が子宮頸がんワクチン接種は行なったこともありませんし、今後も行なう予定もない理由を説明します。

そもそも効果持続期間が9年ってのが問題では

世界中の巨大製薬メーカーは「ワクチン市場の明るい未来」に目が向いています。高血圧・糖尿病・高脂血症に対する安全で効果的な薬が開発され使用されている現時点では「がん治療の特効薬」か「病気にならないための予防薬」にターゲットを絞って研究を行っています。

HPVはヒト・パピローマ・ウイルスを略したものですが、これに感染すると子宮頸がんになることが判っていますので、がんを予防するワクチンと考えた場合、ワクチンでがんの発生を抑えるという画期的な新市場を開拓することになります。日本で行なわれているワクチンとしてはその効果に対して疑問をもたれている「インフルエンザ予防ワクチン」がありますが、このワクチンは日本で製造されていて効果があることは疫学的に明らかです(以前、前橋レポートの間違いはブログ「インフルエンザ予防接種ワクチンは打たない派の方へ⋯なんで判ってもらえないんだろう?」で指摘してあります)。

子宮頸がん予防ワクチンの場合、全て外資系製薬会社のものですから「製薬業界と国の陰謀説」が出てくるのも理解はできます(たぶん、そんな陰謀はないでしょうけど)。子宮頸がんワクチンを当院が行なわなかった理由として効果の持続期間が9年チョッとであるにも関わらず、接種対象年齢が10歳以上からとなっている点が気になったためと、他の予防接種と違って「筋肉注射」であることです。

筋肉注射の問題点

静脈に直接薬を注入する「静脈注射」は効果がでるのが早いために緊急時に使用されます。即効性ではなく抗体の産生を促す予防接種は皮下に注射することになっています。ですが、子宮頸がんワクチンは「筋肉注射」が正しい使用方法なのですが、筋肉注射ってイメージが悪いのです。

昭和40年代にある地方で歩行困難になる子供が多発して、その病名が「大腿四頭筋短縮症」であり原因として複数回の筋肉注射を行なっていたことであることが明らかになりました。この事件は当時の厚生省を相手に巨額の賠償責任を問う裁判になった記憶がある医師や行政の方って少ないのでしょうか?

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注意:子宮頸がん予防ワクチンは腕の筋肉注射ってことになっています。

薬の効果・効能自体以前に子宮頸がん予防ワクチンの投与方法に疑問をもっていたため当院では施行しなかったのです。抗体産生に対しては皮下注射より筋肉注射の方が有効であるとされているワクチンもありますが、「筋萎縮」を引き起こす原因となりかねない筋肉注射はかなり抵抗がある投与方法であることは間違いがありません。

現在の行政の副作用に対する説明も非常に不十分

子宮頸がんワクチン以外は積極的推進派の私も行政の見解には疑問があります。問題となっている「疼痛・運動障害」は10万回に2.7回であり、大した数じゃないでしょう的なこと厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会ってメチャクチャ長いお役所的な会議が言っています。

でも、10万回に数回でも取り返しのつかない症状が副反応として出てはマズいんじゃないの?実際にガンになってしまった方への治療として、この程度のリスクは現時点の医学レベルでは仕方がないかもしれませんが、予防で万が一ご自分のお子さんがこのような障害がでたらどうしますか?

さらに、こんなコメントをしている人もいます。「ワクチン接種後の副反応は接種をしないでも自然に引き起こる確率より少ない」⋯つまり、因縁を付けている人が混じってるんじゃないのというニュアンスを漂わせています。こんな冷たい物言いをすれば怒りますって、被害者とされる方は❗でもコッソリ言い訳も書いてあります「疼痛は針を指すことによって起きている可能性がある」だって。針を刺した医師が痛みに十分な注意をしなかったことに原因があると解釈できます。

ある医師は「疾病利得があると痛みは改善しにくい」と余りにも酷い発言をしています、この意味を説明するのも嫌なんですが解説します。痛みがあると周囲が甘やかすでしょ、そうすると痛みって治りにくいんだよね、さらに社会的な補償等の利益があると増々痛みは継続するんだよね、という意味です。

子宮頸がん予防ワクチンはHPVに対する効果があるのは間違い有りませんし、効果の持続期間については今後の調査によって長くなることは十分に予想されます。万が一の不測っていうか予想される副作用・副反応に対して行政がこのような中途半端な解釈を行い、さらに追い討ちをかける様な心ない医師の発言が後押しする子宮頸がん予防ワクチンです。

「中止はしないけど、積極的には推奨はしないよ」という行政サイドは賢い人の集団ですね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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