せっかく危険な脂肪吸引をしても1年後にはリバウンドしてしまうという悲劇

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簡単に余分な脂肪を取る方法として脂肪吸引治療があります。十分な経験のある医師が行う治療は効果もありますし、危険性も少なくなるのですがチャラい医師が運悪く担当になってしまうと、効果はもちろんのこと、最悪の場合は死亡という重大な事故につながる大変リスキーな治療なのです。

リスキーな脂肪吸引という美容手術

簡単に余分な脂肪を取る方法として脂肪吸引治療があります。十分な経験のある医師が行う治療は効果もありますし、危険性も少なくなるのですがチャラい医師が運悪く担当になってしまうと、効果はもちろんのこと、最悪の場合は死亡という重大な事故につながる治療なんです。以前脂肪吸引の死亡率を調べたブログを書きましたが、日本における被害者の実数は当局でも把握できていません。

脂肪吸引による死亡者を連発した某美容外科クリニックチェーンが先日、他の治療に対して集団提訴されましたので、その辺りの状況もいずれ明るみに出るのではないでしょうか。

安全で確実な脂肪除去法もありますので、安易な脂肪吸引治療が将来的には減少すること期待できるのは日本の美容医療界にとっても良い傾向です。問題の脂肪吸引ですが実はショッキングな調査結果が公表されています。

お腹から吸引した脂肪が他の場所に1年以内に溜まる⁉

せっかく危険を冒してまで脂肪吸引を行ってもリバウンドが起きたら残念なことですが、そのリバウンドにはパターンがあることが判明しました。「Fat Redistribution Following Suction Lipectomy: Defense of Body Fat and Patterns of Restoration」というタイトルでObesity(肥満!)というまんまのの医学専門誌に掲載されています(Volume 19, Issue 7, pages 1388–1395, July 2011)。

研究は平均40歳の女性で下腹部から太ももにかけて脂肪が多いかな、というレベルの14人のボランティアの参加によって行われました。平均体重は60キロチョイですので、高度の肥満ではないと思われます。対照グループとして脂肪吸引をしない18名の同じ様な体型の女性に参加してもらい、6週間ごとに体脂肪を測定して、さらに詳しいデータを得る為に6ヶ月後と1年後にMRIなどを使って脂肪吸引の効果とリバウンドを調査しました。

その結果は脂肪吸引していようが、していまいが体脂肪に変化が無かったのです。さらにせっかく脂肪吸引しても下の図の様な結果になっていました。

Liposuction_Study_Finds_That_Lost_Fat_Returns_-_NYTimes_com

気になる下腹部から太ももにかけて吸引した脂肪は始めの頃は一番気になるお腹まわりに集まりだしてしまっていました。さらに太ももの脂肪吸引によって効果が出たと思っても、実は除去したはずの脂肪もお腹まわりにしっかりと再出現していたと言う悲惨な結果が得られたのです。さらに脂肪は肩周辺と上腕にも付着しだしていました。

脂肪吸引の効果というかリバウンドにあまり驚いていない米国研究者

この結果の評価を求められたコロンビア大学の肥満を扱っているルドルフ医師は

It’s another chapter in the ‘You can’t fool Mother Nature’ story,’

このように答えています。

つまり、あなたは母なる自然欺くことができない、ですって。

このような結果になってしまった原因として、簡単に脂肪吸引して見た目の余分な脂肪が無くなった為に油断した食生活を続けたことが考えられます。また、治療を担当した医師が画一的に脂肪を取り除いたためにオーダーメード的な治療が出来ていなかった可能性もあります。

脂肪吸引をしたのですから脂肪細胞自体の数も減っているので再度お腹まわりに脂肪がつきだしたという結果は残存していた脂肪細胞一個一個の大きさが大きくなってしまったことが考えられます。また、肩や腕などに脂肪がついたのに、全体の体脂肪が変化していないということはお腹まわりの脂肪はそれほどつかなかったのではないでしょうか?

この研究の結果から判断すると、脂肪吸引は体重を落とすことを目的とするのではなく、あくまで部分痩せに効果があると考えた方が良さそうです。でも、リスキーであることには間違いはありませんので、当院としては部分瘦せに対する脂肪吸引は行っておりません。

じゃ、お前のクリニックは脂肪に対してはどんなことやっているんだ?と尋ねられたら自信をもってお答えしています。安全・確実・楽チンに(お財布には優しくないかも w)「寝たまま痩身コース」という方法を採用しています。

1年半前に私自身体験してというか実験台になって、いまだにリバウンドはしていませんよ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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