タトゥー(刺青)が入っているとMRI検査を受けられない、という話は本当かな?

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若い時に勢いでタトゥーを入れちゃったけど、病気になったら検査が受けられない⁉

当院ではタトゥーをレーザーで消したり、手術によって取り除く治療を行っていますが、除去を希望する方の多くは子供とプールに入れない、温泉旅行に行けないなどを主な理由としてます。中には以前つき合っていた彼女・彼氏の名前を入れてしまったけど、なんてものもあります。

タトゥーを入れた人の一部で将来病気になった時に精密検査の一つである「MRI」(magnetic resonance imaging 核磁気共鳴画像法)が受けられないという話がまことしやかに囁かれています。その真偽を調べてました。

アートメイクを入れていてMRIを拒否されたという話

実際に高齢の患者さんから相談を受けた話なんですが、脳の検査を必要としていた眉毛と髪の毛の生え際にアートメイクをしていた60歳代の女性の場合。

主治医から頭のMRIを受けることを指示され、検査専門の医療機関を受診した所、「アートメイクをしていると成分の金属が反応して正しい検査結果が得られない」との理由でMRI検査を拒否されたとのことでした。

確かにMRIは強力な磁力を使用しますので、時計やネックレスは外した状態で検査を受けます。大きな理由として検査結果の画像に影響を及ぼすというよりは、磁力で金属が熱を帯びてヤケドのリスクを避るためだと私は思っていました。

実際に心臓の治療でステントと呼ばれる金属や脳の手術で使用されるクリップも金属ですが、MRIって実際は使われていますもの。アートメイクに含まれる金属で画像に多少の影響(アーチファクトと呼びます)が出たとしても、かなり微妙な影響しかでませんので、担当の検査技師さんはなにか勘違いをしていたんじゃないかと思っています。

タトゥーを入れてMRIを受けるとヤケドのリスクがあります

画像で診断する上では金属の影響によるアーチファクトが多少出ることを除けば、アートメイクはもちろんタトゥーを入れていても多くの場合はそれほど問題にはならないはずですが、海外でこんな報告がありました。

タトゥーがあるのにMRI検査を受けたら皮膚に火傷を負った症例

「Tattoo-induced skin “burn” during magnetic resonance imaging in a professional football player: a case report.」(Sports Health. Sep 2011; 3 (5) : 431–434.)

プロのフットボール選手が膝周辺のMRIを行った所、タトゥーを入れていた場所がヤケドになってしまったという症例報告です。刺青に使用されている染料は国や彫り師によって違いがありますので、一概には言えませんが「ヤケドのリスク」は全く無いとは言い切れないです。

識別用のリストバンドで思わぬヤケド発生

これは以外と気づかないというか、注意を払わないとならない症例報告です。特に汗っかきのオッサン達は気をつける必要があるかもしれません。「MR imaging-related electrical thermal injury complicated by acute carpal tunnel and compartment syndrome: case report.」(Radiology. 2010 Mar;254 (3) ;846-50. doi: 10.1148/radiol.09090637.)という論文が気になります。

内容はMRI検査は一般に体に悪影響の少ない(CTなどのような被爆の問題)検査だけど、身体における異物に対しては気をつけないといけないよ。

患者さんを認識区別するための腕輪を着けたまま、MRI検査をしてしまい治療に外科的な手術が必要なヤケドになってしまいました。ヤケドを早く見つけるためには検査中は鎮静剤などは使わないようにしないといけないし、麻酔を必要とする場合は患者さんの識別のための腕輪は直接肌に触れないようにしましょう、というケースレポートと反省、そして安全に検査を行うための提案が書かれています。

ジックリとこの論文を読んでみるとヤケドを引き起こした腕輪は金属じゃないんです。入院期間中に長い間、金属ではない認識の腕輪を密着させていた為に、汗と混じり合って電導性が腕輪に出来たことが原因じゃないかな、と記されています。

じゃぁ、タトゥーがあったらMRIは出来るのか、出来ないのか?

これはハッキリ言えることでは無いのですが、少なくとも検査する部位にタトゥーが入っていない限りは問題はありません。万が一検査する部位、例えば顔中に刺青を入れていても診断結果に微妙な影響は与えるでしょうけど、読影が得意な医師であれば診断は可能です(得意な医師ほどアーチファクトを嫌う傾向はありますが)。ヤケドという思わぬ事故を起こさないためには、閉所恐怖症とかあのMRI特有の音が不安を煽るという方の場合も精神安定剤の使用に留めておき、ぐっすり眠らす様な麻酔は避けるべきです。

それより、先程の論文を参考にして、汗っかきのオッサンはMRI検査をするときはリストバンドは外すようにしましょう!(無理か笑)

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これは難題❗ギャル界のカリスマ「みぽち」のタトゥー(刺青)消しは医者泣かせ❗

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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