病気の時って必ず体温を測定しますけど、正しい体温の計り方って知っていますか?
風邪などを引いた時、日本ではワキに体温計を挟みますが、左右で体温が違うことって経験すると思いますが右と左ではどっちが正しい体温なんでしょうか。
当院スタッフからも「左右の体温が違うんですけど⋯」という質問がありました。
そんな時に「同時に計らないと同じっていえないだろ!」なんて対応をしていたらスタッフはとっとと辞めてしまいますから、「今度、チャンと調べておくね」と優しい言葉を返した私。
さて実際、体の左右で体温差はあるのでしょうか?
ワキの下・口・お尻で体温を測った場合の違い
体温計による体温測定は心臓から手足の末端まで流れている血液の温度を間接的に測定していることになります。
心臓での温度に比べると手足の温度は自然と下がって行きますので、体の中心に近いところで測定した体温ほど高くなります。
体の表面は体温が異常に高くならないように冷却する仕組みになっていますので、本当は体の中の温度を測定しないとなりません。
手術中などは正確な体温を測定するために、お尻から細い紐上の体温計を直腸に差し込んでいるって実際に手術を受けた人は経験しているはずです⋯お尻に体温計を差し込みました、と伝える麻酔科の医師って聞いたことないけど、インフォームドコンセントとしては必要かもです。
さすがに日常でお尻に体温計を刺し組む人ってあまりいませんので、体内の温度を測定するという感覚に近いものとして口にくわえる方法があります。
海外ではワキの下より、口(正式には舌の下)で測定する傾向があります。
測定した温度は
脇の下 << 舌下、直腸
となりますので、風邪のときなど発熱しているか、いないかを判定するには常に自分の体温をどこで測定してどのくらいか?ということを把握しておく必要があります。
脇の下で正しい体温の測り方
もっとも一般的な検温方法は脇の下で音が鳴るまで挟んで待つ、ですが、意外と正しく脇に挟めている人って少ないかもしれません。YouTubeでオムロンさんがわかりやすい動画で紹介しています。 ( オムロン 体温計(わき測定)の正しい使い方)
最近は、ワキの下で測るのではなく、おでこなどにかざしてピッ!と一瞬でと測る現代っぽいタイプが人気を集めています。
別記事でまとめておきましたので、お時間のある方はこれもどーぞ。
日本人の平熱って何度が平均的なんでしょうか?
36度台なら平熱、37度を越えていたら熱があると一般的に判断(診断じゃないですよ)しています。
これって本当でしょうか?5月くらいになると外国人の方って短パンTシャツになりますけど、日本人はそこまで薄着にはなりませんよね、ということは人種によって平熱が違う可能性がありますね。
日本人の平均体温って基礎となるデータは論文として1957年に発表されたものが元になっているです、今から60年近く前のもの❗「健常日本人腋窩温の統計値について」という東大の田坂定孝教授によって書かれた論文です。
これによりますと、実は平均体温は37度付近であることがわかっています。
とにかく病気でなく体調のいい時に自分の平熱を知っておくことが必要です。
こんな記事も書きました。
平熱を知らないと万が一の時、かなり面倒なことになる可能性があります。
体温の左右差について
話がだいぶ飛びましたが、当院スタッフの素朴な疑問への回答に戻ります。心臓は体の中心より左によっていますし、心臓から体に血液を送り出す太い血管は左方向に出ています。
結論としては体の冷却システムによって左のワキの体温の方が右のワキより高くなっていることが多いはずです。なぜ多いはずです、という言い方になるかというと本当に実験的に比較するには両脇同時に測定して、左右差があるかを証明しないといけませんが、そんな測定方法を通常採用している人ってまずいませんから。
そして非常に高度な科学的観測手法としては(この辺りは理系のオッサンが持ち出しそうな理論です)が、「観察者効果」と呼ばれる現象を考慮しないといけません。
ある実験を観察する人がいるとその人の存在自体が実験結果に影響を与えるという難しい理屈が物理学、とくに量子物理学の世界では重要視されています。医学的研究・実験でも観察者のバイアスがかからないように二重盲検とかが使われるのもその観察者効果の影響を少なくするためなんです。
こんな面倒な解説をいたいけなスタッフの質問に対していちいち返していたら、多分かなりの確率で嫌われる可能性が大ですので、「両脇の体温が違っても心配ないよ」と優しく回答する私です。
平熱は人ぞれぞれ。自分の平熱を知っておきましょう。左のワキの体温の方が右のワキより高いはず。両脇で測った体温に差があっても心配は特にいりません。
※脊髄の疾患などにより片麻痺がある方は左右のワキの体温が違っています。