オッサンの多くは揚げ物大好きです。最近の若者は食事も健康志向であるために、草食系になってしまう、なんて自分勝手な論理を振り回しながら昼食にトンカツを食べてるオッサン仲間に悲報が入ってきました。
以前「ダイエット・健康の悪役 トンカツを無理やり擁護してみます」なんてブログを書いた時は喝采を浴びたのですが、世の中には余計な研究をする人がいて「揚げ物は肥満遺伝子を活発にして太る原因になる」という論文が提出されました。STAP細胞小保方論文のように、この論文自体がねつ造の可能性もありますので要調査ということでチェックしてみました。
掲載された医学専門誌は超一流
小保方さんの論文は超一流の科学専門誌「Nature」に掲載された為に世界の注目を集めました。この揚げ物肥満遺伝子活性説論文は「British Medical Journal(略してBMJ) 」という一般の方にはなじみのない医学専門誌ですので、大した論文じゃないなんて思うと大間違いです。英国の医師会の雑誌ですので、日本医師会の雑誌雑文でも掲載される)とは比較にならないくらい格調高い医学専門誌なのです。専門誌の格の目安にインパクトファクターというのがあり、BMJは17くらい、Nature本体は38くらいですが、Natureの医学専門誌であるNature Medicineですと22くらいなので世界的に注目されるに値する専門誌なのです。ちなみに日本医師会の雑誌は⋯対象外です。
油で揚げた食べ物が肥満遺伝子を活性化して肥満に導く
この論文は「Fried food consumption, genetic risk, and body mass index: gene-diet interaction analysis in three US cohort studies」というタイトルです。
(BMJ 2014;348:g1610 doi: 10.1136)
研究調査の対象は医療関係者の男性6379人、女性9623人です。
- 揚げ物を食べた頻度と肥満に関連する遺伝子、BMIの関連を調査
- 肥満遺伝子のリスクのある人は、週に4回以上揚げ物を食べると肥満になっていた
肥満遺伝子と揚げ物を食べた回数は肥満と強い関連性があった、という結論を導きだしています。
この肥満遺伝子論文にからむとしたら⋯
日本人の場合、肥満に関連する遺伝子を30%くらいの人が持っているとされています。アンカップリングプロテイン遺伝子、β2アドレナリン受容体遺伝子、β3アドレナリン受容体遺伝子、などが肥満関連の遺伝子と言われています。これらの遺伝子が実際に肥満に影響を与える割合は
遺伝子:生活習慣=3:7
と一般的に考えられています。単に生活習慣によって太りやすい人とそうではない人がいて、それは遺伝子によるものです、という肥満がちなオッサンなら当然、経験的に知っていることを論文にしただけです。彼ら彼女らが摂った揚げ物の種類は細かく分類されていませんし、少なくとも「トンカツ」を食べた気配はこの論文からは読み取れませんでした(当たり前か)。さらに対象者は医療関係者ですので、
- 医療関係で肥満遺伝子を持っている人は揚げ物を食べ過ぎると太りますよ
ということしか言えないんじゃない。
このように疫学調査って簡単にツッコむ所が満載なので、皆さんも時間があったら「何々を食べると何々が良くなる」とか「○○ダイエットでお腹スッキリ」的な広告には惑わされないようにしましょうね!
さすがにBMJもその辺りをツッコんでいまして、
- 揚げ物と32亜種に基づく遺伝的リスクスコアの消費が肥満と関連している 、揚げ物消費と肥満との関係で遺伝的素因との間の相互作用が検討されていない(Google翻訳)
とのコメントが論文の最後に編集者によって記されていました。海外でも揚げ物ファンのオッサンは多いんでしょうね❗