「季節の変わり目って体調わるいのよねぇ」とは私の診察時に日常的に聞かれる言葉です。さらには「低気圧がくると天気予報より早く膝の痛みでわかる!」と豪語するオッサンもよくいます。今年は台風も多いので体調不良に悩まされている方も多いのではないでしょうか?
本記事の内容
低気圧と体調不良の関係や季節変動と体調不良を理屈っぽく考えると
しかし、日本って四季があるから季節の変わり目も一年間に4回ありますので、前後1か月体調悪いとすると、
2か月×4回=8か月❗年間の三分の二も調子悪いんだ、なんて理屈っぽく考えるのが私の悪い癖です。
低気圧をオッサンが痛みで感知することができるのでしょうか?
なんせ小学校二年生の図画の成績表に「理屈が先行する絵が気になります」というコメントを担任の先生に頂き、そんなトラウマを背負って45年間も人生を送ってきましたので⋯。私のブログも「理屈っぽい」「データの羅列で英語が多い」という意見も若干あります。
「果たして天候は体調に影響を及ぼすか?」「痛みは低気圧によって強まるか?」「痛みで低気圧を予想できるか?」
という一般の方がおっしゃることに対して、ここで心を入れ替えて理屈っぽくなく検討を加えてみました。
寒い季節は死亡者も増えます http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/より
低気圧で痛みがでるメカニズム
「俺の膝が痛み出したら明日は雨か曇りだ!」とか「昔の手術の跡が痛み出したので明日は雨」なんて結構身近な方でおっしゃる方っていませんか?雨か曇りということから低気圧が近ずく、気温が下がることがこの現象の原因と考えて見ます(まだ理屈っぽくないですよね)。
まず痛みというものを簡単に説明しますと、神経が痛みを脳に伝えるのですが、その原因物質つまり痛みを脳に伝える原因は何種類かありますが、「ブラジキニン」という物質に注目して考えて見ます。血圧に関係する物質なんですがここでは「神経細胞に作用して痛みを起こす物質」とします。
http://www.tvk.ne.jp/よりお借りしました
このブラジキニンが大量に特定の場所に集まった、あるいは溜まった状態が痛みが生じます。次から少し難しくなります。人間の細胞は必ず酸素を必要としますが、酸素が不足していると細胞が破壊されてブラジキニンが大量に生産されてしまいます。
通常なら血行がよければこのブラジキニンもさっさと血流にのって他の場所に拡散されるのですが、血行が悪いと一か所に留まり「痛み」を発生させてしまうのです。血行の悪さ=痛みを誘発というメカニズムはこれで説明できます(ここまではあまり理屈っぽくないでしょ)。
じゃぁ、オッサンが良く言う「古傷が痛む」メカニズムの解明をしてみます。
傷、特に間接周りの筋肉や手術あとは数年以上経過していても実際はダメージが残っています。筋肉のダメージを回復させる働きにはカルシウムが必要となってきます。このカルシウムは筋肉のダメージを回復させる時、余計なお世話をしてしまいます。筋肉の安静を保たないでいると、損傷部位が拡がらない様にダメージを受けた部分を包み込むように固めてしまうのです。
筋肉とカルシウムは切っても切れない関係です
つまり、不完全に回復した筋肉の中にカルシウムの塊があるとイメージしてください。低気圧が近づくと交感神経が強まります。交感神経が強まると「血管の収縮」が引き起こされてしまいます。そのため、血管が収縮し、カルシウムを中心とした塊がさらに血行を悪くさせ「筋肉の緊張」が益々高まり、古傷周辺の血流はさらに悪くなります。そうすると周囲の細胞は酸素不足になるために先ほど登場した「ブラジキニン」が溜まってしまうために痛みが増強するのです。(乳酸等も関連しますが今回は省略)つまり、膝を痛めていたオッサンがいっていることは間違いではなかったのです。
手術の跡が低気圧で痛み出すのも同じメカニズムです。でも、ひょっとしてテレビで天気予報をみて明日低気圧が接近するとか台風がやってくるという情報を得たためにプラセボ的に痛みが生ずるんじゃないの、と素直に考えない私はたぶん性格を直した方が良いと自分で思いました。
更に低気圧はこんな症状を起こします。
- 頭痛
- 片頭痛発作の数が多い
- 睡眠が浅くなる
- 血栓症や塞栓症を心血管系の病気のリスクが高まる
- うつ症状が強まる
私が性格を直さないといけない理由
明日低気圧が来る⇒痛みが生ずる、という経験をした方は「低気圧・台風」なんてキーワードを耳にした段階で、身体は緊張します。ということは交感神経が優位になって先ほど説明した「低気圧・台風が痛みを引き起こす」と同じ現象が起こるのです。簡単にわかりやすく言えばストレスが痛みを誘発する、ということもできます。最近、割と流行っている「慢性疼痛の処方薬」は痛み止め成分と安定剤系の成分が合わさって一つの薬となっているものです。病は気からとは言いませんが、交感神経を高めるようなストレスは痛みを起こすと言って差し支えないと考えていいと思います。
季節の変わり目に体調を崩す理由
かなり、理屈っぽくなく素直になってきた私です。季節の変わり目に体調が崩れる、という現象も解りやすく考えて見ました。
寒くなる季節を迎えると気温が下がり、空気も乾燥してきますので当然「風邪」を引きやすくなります。体調が崩れて当然だと思います。では、暖かくなる季節の変わり目で体調は悪くなるのはなぜでしょうか?暖かくなると血行は改善しますが、その時期に体調を崩す人も多く見かけられます。日本で暖かくなる季節は湿度も高くなる傾向があります。つまり高温・多湿が人体に悪影響を起こしてしまうのです。
気候と体調について、今までに分かっていること
- 高温多湿の季節になると空中の浮遊粒子状物質が増加しそれに暴露されるため呼吸器疾患が増える
- 高温になると食品の腐敗が進みやすくなるために消化器系の感染症にかかりやすくなる
- 高齢者や病弱者は熱によるストレスがかかりやすくなる⋯例えば熱中症
- オーストラリアでは熱波の季節は高齢者の死亡増が報告されている
- 熱性の疾患の場合、熱があると自然に体を冷やすシステムが充分に機能しない
などなど多くの症状を「暑い季節」は引き起こしてしまうのです。
つまり、暖かくなる季節を迎えても体調は崩れるのです。
参考文献:「Climate change and health in Israel: adaptation policies for extreme weather events」、http://www.liveweatherblogs.com/、http://manfredkaiser.com/weather_phases.htmlSeasonal 「variation in the incidence of preeclampsia and eclampsia in tropical climatic conditions」など
やっぱり低気圧や季節の変わり目は体調が崩れる
という結果は正しかったようです。これらの昔から言われている言葉を素直に受け止めて今後の診療に役立てようと決心しました!