いじめや体罰が原因とおもわれる中高生の自殺の報道に心を痛めている方も多いと思います。
診療をしていると明らかに「心を病んでいる」方も多く見受けられます。日本人の自殺は1990年代以降、増加しているのは間違いありません。
周りにいませんか?自殺しそうな人
日本では年間3万人以上が自殺をしています
年頃のお子さんを持つ方はもちろんのこと、お仕事で悩みを抱えている方が家族にいらっしゃると「自殺しないか心配」と思われるのではないでしょうか?
自殺の可能性を予測する指標
そこで登場するのがSADPERSONSという方法です。これは性別・年齢・うつ症状・自殺未遂などの自殺に至る危険因子を調べて、その人が将来的に自殺をするか、どうかを予測するというものです。検査項目の頭文字をとって「SADPERSONS」スケールという名称で呼ばれています。
これで点数化して自殺のリスクを予想します
7点以上は入院して監視・治療する必要があります(高リスク)
これでは予想できないよ!という論文登場
日本ではあまり一般的に使用されていませんが、海外では1983年にアメリカで考案されて以降、救急病院や精神科などで多用されています。しかし、この方法では自殺を予想することはできないという論文が登場しました。
「The sad truth about the SADPERSONS Scale: an evaluation of its clinical utility in self-harm patients」 (Emerg Med J emermed-2013-202781Published Online First: 29 July 2013)
というものです。
論文の問題点は?
これは英国のウォーンフォード病院の人が書いた論文ですが、精神科や救急救命センターに対して現在、求められるものに「待ち時間の短縮」「精神医療費の削減」があります。そのために全体的な患者さんの社会的な背景や個人的な事情を詳しく聴取しないで、このSADPERSONSスケールを使用して機械的に患者さんの選別をしているのが現状です。
著者のHawton医師らは実際に自殺未遂で病院に搬送された126人を対象として、その後6ヵ月の間に再度同じような行為をするかを監視・調査しました。その結果、SADPERSONSスケールの予想は90%くらいの精度ではカバーできていましたが、非常に有効であるという結果には至りませんでした。
31人がその期間に再度自殺・自傷行為を図りましたが、入院が必要である高リスクと予測されていた人は2人しかいませんでした。
この事実からもSADPERSONSスケールは自殺に直結する自傷行為の再発を繰り返す人を予想することはできない、と結論しました。
自殺を防ぐためには
つまり単純なシステムで自殺するリスクは予想できないということです。
予算削減とか待ち時間短縮とかは「自殺予備軍」の診察・治療を邪魔するだけです。生活背景や社会的背景・経済的背景までを含めてじっくりと話を聞いてくれる医師を見つける必要があります。
自殺は「追い詰められて起こる死」とも言われています。考え方を変えれば「避けることのできる死」でもあります。
悩みを抱えてる方が気軽に、心を開いて相談・診療を受けることができる環境をつくるためには予算削減や待ち時間の短縮なんてことは、早急に改善することが必要になってきます。
日本においても「精神科」は大量の薬を処方する傾向があり、世界的には批判の対象になっています。受診しにくいでしょうが「心療内科」を標榜する医療機関も増えてきています(大量処方の危険がないとはいえませんが)。身近に悩んでいると感じられる方がいましたら上記内閣府のHPを教えて上げてください。
まずは、家族・友人が温かく、じっくりと話を聞いてあげることから始めましょう。
とにかく「自殺は避けられる死」なのですから!