うつ病やうつ症状に悩ませられている方が日本では急増しています。現代病ともいえる現象です。
うつ病の方の厳しい表情の改善を目指すと⋯
男女共に働き盛りであり、また子育てなどストレスがかかりやすい30歳から50歳台に多いことが気になります。
抗うつ剤と呼ばれる薬も色々あり、更に新薬も続々と承認されています。しかし、日本のうつ病の治療は世界的に見て薬を多用するという傾向が指摘されています。中には多剤投与が治療自体に混乱を起こしているという意見があります。
第107回日本精神神経学会学術総会における「そんなに薬が必要ですか」が参考になると思います。
うつ病だと険しい表情
険しい表情だからうつ病とは言えませんが、うつ病の方は悩んだ険しい表情をしていることが多いのです。行動療法の一つとしてなるべく外出をして、楽しいことを経験して笑顔を取り戻す、というものがあります。
実は以前から難しそうな表情を和らげるために、ボトックスを使用してシワを解消すればうつの症状が改善するという報告がでていました。「ほんとかよ?」と捉えていた医師も多いのですが、その後多くの論文が出てきました。
症状のイメージとして特徴的な眉間のしわにご注目ください
新しいインフォメーションと思えるものが「Efficacy Study of Botox for Depression」ボトックスのうつ病に対する有効性を検討したもので、昨年に発表されたものです(Clinical Trials – Mar 15, 2012)。アメリカ国立衛生研究所が発表した信頼のおける研究です。まだ治験の段階ですがPhase 4とよばれる最終段階までたどり着いています。
この論文が切っ掛けです
そもそもボトックスがうつ病に効果があるとした多くの論文の中で一番初めに「ボトックスがうつ病に効果あり」と発表したのは「Treatment of depression with botulinum toxin A: a case series.」のタイトルでDermatologic surgeryに掲載されたFinzi, Eric; Wasserman, Erikaらの論文です。
ネット上では「エリック・フィンジ医師によると」などと書き込まれているようですが、元の論文を明記したものは私が検索した限りでは出ていませんでした。
上記が元の論文ですのでご興味のある方は調べてみてください。もちろんそんな時間が無い方も多いでしょうから、簡単に内容を説明します。
という結果でした。ボトックスを眉間に注射した人の10人中9人がうつ病が改善した
この後「ボトックスとうつ病」に関連する多くの論文が出されていますが、間違いなくこれが最初のものです。注射した場所は
典型的な眉間のしわを治療する場所に注射をしています。さらにこんな論文もあります
「Botulinum toxin improves the quality of life and reduces the intensification of depressive symptoms in patients with blepharospasm」という論文では眼けん痙攣の患者さんにボトックス治療をしたところ「うつ症状の改善」が見られたというものです。
治療後かなりの症状が改善しています。
早まってはいけません
この発表のあとに、様々な追加試験・研究がおこなわれ現在ではその効果を証明するために治験が行われているのです。それが一番初めにお伝えしたアメリカ国立衛生研究所のインフォメーションです。
アメリカ人が一番シワで気にする場所は眉間のシワと言われています。眉間にしわがあると厳しい、優しくない印象を与えるために治療希望者が多いとされています。
ボトックス治療の実際はブログで「気になるシワの治療 定番のボトックス」と題して以前書いてありますのでご覧ください。
うつ病の治療としてボトックスを使用するのはもう少し待った方が良いのではないでしょうか?アメリカ国立衛生研究所の見解を待ちましょう!
追記します。
2020年になって、ボトックス治療とうつ病の関係はそれなりに納得のいく結果がわかってきました。