本日「痛っつ!あそこをジッパーに挟んだ時の対応法「イグ・ノーベル賞」受賞のまじめな論文。」というブログを書いたのですが、その日にイグ・ノーベル賞を日本人研究者が受賞したとの報道がありました。
たまたまイグ・ノーベル賞のブログを書いた日が発表日だった
おめでとうございます!お茶目で素晴らしい研究チームです
この賞ってばかばかしいものに与えられるとか、ふざけた論文が受賞するとかの説明がついていますが、中には「愚かなノーベル賞」なんて書いてある資料もありますが、それは間違いです。
ブログでも書きましたが、両者を受賞した一流の学者もいます。しっかりした世界中の論文を調べて、面白い文献を調査する審査に関わってる人のパワーにも驚かされます。研究者としては真面目に書いたつもりでも、第三者にとっては「これって役に立つの?」とか「バカバカしい」と思われる場合があります。特に基礎の研究って現段階では全く実用化は無理であっても、将来何かの役に立ったり、何かの発見につながることも多いのです。
例えば笑気ガスは本来はパーティーでお酒代わりにどんちゃん騒ぎするために使用されていました。
それが全身麻酔に利用しようと考えた人がいてその為に、今の外科医学が成り立っています。
本日、太陽系外に初めて「ボイジャー」が脱出したことも報道されていました。1977年に地球から打ち出されたボイジャーは太陽系外探査を主目的にひょっとしたら地球外生命体が見つけてくれるかも?との期待を込めて地球の事を宇宙人に知ってもらうための様々なものを搭載しています。今は役に立たなくても数百年後数千年後に役立つ可能性もあるのです。
ある程度の知能がある地球外生命体ならこれで地球の様子がわかると工夫されたものです
さて今回受賞の論文は?ネズミにオペラを聴かせるのが目的ではありませんよ
Journal of Cardiothoracic Surgeryという学会誌⋯私は初めて見た、に投稿された「Auditory stimulation of opera music induced prolongation of murine cardiac allograft survival and maintained generation of regulatory CD4+CD25+ cells」という題名の基礎研究の論文です。
内容は心臓移植したマウスに術後7日間観察した
・オペラ「椿姫」を聞かせたマウスは26日間生存
・モーツァルトを聴かせたマウスは20日間生存
・音楽を聴かせなかったマウスは7日間生存
という結果が出ました。
http://www.cardiothoracicsurgery.org/content/7/1/26より引用
明らかに音楽を聞かせた方が長生きという結果がでました。
本来は違った目的の研究でした
この研究は本来、同種移植片の生存率や免疫組織化学、サイトカインなどについての調べ、聴覚とて免疫応答と脳機能との相互作用が可能性を説明しようとした真面目な論文なのです。
こちらが本当に調べたかった内容ですJournal of Cardiothoracic Surgery 2012, 7:26 より引用
今回の論文は帝京大医学部外科准教授の新見正則医師以外にも順天堂大学の基礎研究分野、女子医大の泌尿器科等が協力して行った研究です。中国の研究者も論文には名を連ねています。
つまりかなりマニアックな研究からわかりやすい結果が導きだされ、イグはつきますけが世界的に有名な賞を受賞したことによりひょっとしたら実際の臨床上で心臓移植手術後にオペラを聴いてもらい、順調な経過をたどる可能性もあります。そんなことに気付いた医師が数年後に膨大なデータを発表する可能性もあるのです。これが学問です。
明日から当院の手術室も松下医師がお気に入りの「ショパン」は止めて「椿姫」を流すぞ!