女優のアンジェリーナ・ジョリーが乳がんのリスクが高いために、正常な乳房を切除する手術を受けたことが世界中の話題となりました。
乳がんや卵巣がんは遺伝性を持つものが知られていて遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とも言われています。
本記事の内容
遺伝子を調べなくてもいい⁉
乳がんのリスクを調べるためにはBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異があるかを調べる遺伝子検査が必要となります。遺伝子検査は一般の採血による八卦級の中からDNAを抽出して行われます。遺伝子ではなく体内のアミノ酸を調べることによりがんのリスクを検出する技術が出てきています。つまりがんのリスクスクリーニングができるということです。
アミノ酸インデックスとは
人間の20パーセントはタンパク質でできています。タンパク質自体はアミノ酸で構成されています。このアミノ酸の分析方法が急激な進歩を遂げていて、がんのリスクのスクリーニング検査に利用できないかと研究がおこなわれています。
アミノインデックス®(AminoIndex®)という方法で日本が誇る世界企業「味の素」が研究・開発したものです。
その技術を利用してがんのリスクを見つける方法をAminoIndexR Cancer Screening (AICS) と呼び既に多くの医療機関で導入されています。当院はまだ導入してませんので、この方法とはどんなものであるのかを解説しながら自院での採用するかを考えて行こうと思っています。
統計学的な予測に基づいての検査です
血液中のアミノ酸の濃度は健康な人とがんのある人では差があることが知られています。その差を統計学的に解析してがんである可能性のリスクを予測するのが、AICSです。検査結果は三段階に分かれます。
上記のようにランク分けされるのですが⋯・。
一度ランク分けされても将来に渡ってのリスクを予測するものではありません。そこが遺伝子検査との違いとお考えください。
どんながんが予測できるか?
味の素のアミノインデックスのHPによりますと胃がん・肺がん・大腸がん・前立腺がん・乳がん・子宮がん・卵巣がんについてリスクを予測することができるとのことです。
このデータに基づいて診断の補助に使用されています。
もちろん保険は適用できません
鳥取県の南部町国民健康保険西伯病院では行政の補助を受けて「プレがん検診」として40歳以上の住民に測定を昨年から始めました。開始を始めて検査希望者が殺到してたった1週間で補助金が出る人数の予約が埋まったのです。
補助金がでない人は全て自己負担になるために18900円必要でしたが、それでも数週間で一年分の特別に設置された「アミノインデックス外来」の予約埋まってしまう事態が生じました。
如何に皆さんが、がんという病気に関心が高いかを知ることができる話です。
アミノインデックス検査によるがんの発見率はこのようになっています
ランクCと判定されるとがんのリスクが4-10倍程度高まるデータとなっています。
アミノインデックスの注意点
あくまでがんである可能性、がんになる可能性を統計化したものですので、ランクAであってもがんでは無いとは言えません。
また、ランクCとされた場合でもがんがあるかを判断するものではありません。ランクCと判定された場合はさらなる精密検査が必要になることになります。
この病院では胃がんでランクCと判定された人が一番多く、79人でした。(胃がんのリスクを調べた総数は465人)その方に胃の内視鏡検査を受けてもらったところ一人の方に早期胃がんが見つかりました。
腫瘍マーカーとアミノインデックスの違い
実はその早期胃がんが見つかった方は一か月前に他の病院で胃の内視鏡の検査を受けていて、正常と診断されていたのでした。上記に表のデータ作成後もAICSを継続してデータを蓄積していきました。胃がんのランクCと判定され方のうち、精密検査でさらに2名のかたに早期胃がんが発見されました。
がんのリスクを判定する方法としては腫瘍マーカーと呼ばれるものがあります。
残念ながら腫瘍マーカーは進行したがんを見つけるのには有効であり、またい治療中のがんの様子を知るために目安にします。
早期発見にたいしての有効性は確立したものではないとお考えください。また前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは非常に感度が高いために悪性度の低い癌にも陽性を示します。 (その前立腺がんが将来的に患者さんの命を奪う可能性が低いものまで治療している可能性が現在では指摘されています。)
- アミノインデックスはがんの存在の可能性を予測するためには有効な手段です。
- 腫瘍マーカーはPSAなどを除いて早期発見に有効とは言えません。
- 一部の遺伝子検査はかなりの確率でその方が「がん」になることを知ることが出来ます。
- アミノインデックスは保険適用外です
- 腫瘍マーカーは疑わしい病気に対しては保険適用できます
- 遺伝子検査は白血病・乳がん・肺がん・大腸がんなどが一定の条件下で保険適用です
当院はどうするか?
泌尿器科も標榜し、専門医が4名所属する当院としては前立腺がんの早期発見は腫瘍マーカーだけでなく、精密検査までを保険診療で行い確定診断(はっきりとがんであると診断)を院内で下すことが出来ます。前立腺がんではアミノインデックスは必要なさそうです。
また保険がきかないという点もあり、当分は当院では採用する予定はありません。
実は今年初めて大腸の内視鏡検査を受けてポリープが発見された私、(その様子はブログに書いてあります)まださらなる精密検査を受けていないのです。仕事が忙しかったこともありますし(患者さんが良く言う言い訳と同じ)、「がんだったらどうしよう」と心配になるのは患者さんも医師も同じです(汗)。
そうだ、アミノインデックスを私が実験台になって受けてみますね。
あの近藤誠一医師が聞いたら怒り心頭で批判することが予想されるアミノインデックスですが、ランクCで精密検査で私が「大腸がん」だったらアミノインデックスは非常に有効な検査方法であると言えますので、必ず報告します。と言いつつ心配で今日は眠れません、多分。
2017年4月24日追記 最近では線虫を使ってがんを早期発見する方法が実用化が検討されています。
2022年5月1日追記 実際に私自身が受けてきましたよ!