必要じゃない薬を飲んでいる可能性も、高血圧ガイドラインの基準が甘くなる?!

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高血圧の定義と治療する場合の目標の血圧の値は実は時代と共に変化しています。

ある病気を持っていて高血圧ならこのくらいの血圧を目標にしなさい、とか高齢者はこのくらいにしましょう!など治療する側も治療される側の患者さんも混乱しているのではないでしょうか?

細かく分けすぎた降圧目標を単純化

マスメディアは健康に関する今までの常識とは逆の論文や特殊な考え方を健康番組で取り上げ、医学界ではまだ十分に確認されていない情報をデマのように一般の人に流布する傾向が見られます。

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以前、自分の尿を飲んで健康になる、なんて療法がブームになりましたが、その後実践者がどうなっているのか定かではありません(笑)

良いとか悪いとかの情報がいり混じって医療現場も困ってしまうことも多いのです。そのようなことが無いように世界中で病気ごとの「ガイドライン」というものを作っていますが、そのガイドラインも時々見直されています。

今回は高血圧です。

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これが新しいガイドラインです。詳しくは「2013 ESH/ESC Guidelines for the management of arterial hypertension」をご覧ください。

あくまでヨーロッパの話なので

欧州高血圧学会と欧州心臓病学会は6年前に作られた「高血圧管理ガイドライン」を修正しました。

今回のガイドラインの特徴は、高リスク・中リスク・低リスクに分けて、どのくらいの血圧になるように治療しなければいけないという降圧目標が定められていました。
実はこの目標を分けることを支持する十分なエビデンス(証拠)が明確にならなかったため今回の修正です。(じゃあ、以前はどうやって決めたのか?)
今回のガイドラインでは基本的に

・収縮期血圧(いわゆる上の血圧)は140mmHgとする
・拡張期血圧(下の血圧)は90mmHgとする

とスッキリわかりやすいものになりました。(もちろん例外も少しあります)

今までは高リスクといわれる糖尿病・心血管病・腎臓病・脳血管疾患を持った患者さんは130/90をも目標としなさい、と指導していました。

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RFはリスクファクターです。多くなればなるほど高血圧の治療を推奨されますが、目標となる血圧は140/90になっていることに注目!

このガイドラインができたことが世界中の医療関係者を刺激して世界中でも同様のガイドライン作りが行われてきました。日本でも今後見直しする必要が出てくるかもしれません。

複雑にすると管理が大変、患者さんも混乱するので単純化しよう、というわけではなく、2007年以降に発表された研究論文に検討を加えて今回の結果が導きだされました。

じゃ、今までの旧ガイドラインの降圧目標はどんなデータに従っていたんだ?と素朴な疑問が

さすがイタリアのオッサン、逆切れで正当化

今までのガイドラインが不適切であったことが、明るみに出た今回のガイドライン変更発表。

ガイドライン作成のリーダー、Giuseppe Mancia 教授(ミラノ大学)は「以前せっかくガイドライン作ってあげたのに、高血圧は治療可能なのに患者さんも医師もあんまり気を使って降圧目標を達成していないじゃん」と少し逆切れ的に言っています。

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http://www.online-news.it/

この人がガイドライン作りのリーダーです。

ヨーロッパ各国では人口の30-40%が高血圧とされていますが、2003年に初代高血圧管理ガイドラインが発表されてからも患者数の変化ありませんでした。

つまり、このオッサンの言い分と今回のガイドライン変更を深く考えてみると、多くの人が目標を達成しやすくする為に「高血圧の管理目標を緩くしただけ」なんですが⋯。

良いことが書いてあります

高血圧であってもすぐに薬物治療を行うことをガイドラインは諌めています。

  • 塩分制限
  • アルコールの摂取量
  • 野菜や果物の摂取量
  • 低脂肪食の摂取量
  • 減量と体重管理
  • 定期的な運動

まずは上記の生活習慣に気を付けることが重要である、とガイドラインでは強く訴えています。

上記が出来ないから仕方なく薬を飲んでいる人も多いとは思いますが、今回のガイドラインが単純化されて目標達成はかなり楽になったのではないでしょうか?

正常高血圧(130-139/85-89)の人も治療しておいた方が良いと今までのガイドラインではなっていましたが、治療の必要なしとされました。
「正常高値血圧の治療は適切なデータと検証によってエビデンスが見つかるまで薬物治療の開始は行わないことを薦める」としています。これは日本の医師も見習わなければならないのではないでしょう?

薬の使い方もシンプルに

日本では高血圧の薬の臨床データが改ざんされた疑いがマスコミをにぎわせていました。高血圧の薬が心臓の病気にも有効であるというデータに疑いがもたれているのです。(疑いじゃなく黒か?)

例えばこのような作用機序の薬がさらに効果的です、この薬と組み合わせるとさらに有効です、この薬は血圧だけではなくこんな病気にも有効です、などとのデータを引っ提げて新薬の売り込みをかけるのが一般的な医薬品メーカーの営業です。

今回のガイドラインは薬を選択するときの基準もシンプルになっています。

「降圧薬の有用性は降圧度に依存する」だって。当たり前じゃん❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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