「痛みの王様」尿路結石の発作は繰り返すことが多いですが、治療法はいまいちです。

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痛い病気トップ3に入ると言われている尿路結石。激痛の発作を繰り返す尿路結石ですが、残念ながら治療方法はイマイチというのが現実です。激しい痛みで苦しんでいる人が多いのになぜ治療が進んでいなかったのか?泌尿器科医として説明いたします。悲観はしないでください。研究は進んでますし治療方法も続々と出てくるはずです。

病気の痛みベスト3とは

痛みを感じる病気は数多くありますが、痛みのベストスリーにあげられるのがくも膜下出血、心筋梗塞、尿路結石と言われています。

一番痛いのがくも膜下出血、二番目が心筋梗塞とされています。

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上図の色が付いた部分である側腹部から鼡径部にかけて強烈な差し込むような痛み⋯疝痛発作が尿路結石の特徴です。

これらの病気になっても現在では救命が可能となるくらい医療及び医療体制が整っていますが、20年くらい前まではこの二つの病気の発作を起こすことは「死」を意味していました。

ですから、痛みを感じたら死んでしまいますので「どのくらい痛かったの?」と聞くことさえ不可能だという矛盾もありますが、もちろん当時でもサバイバーはいましたのでその痛みの強烈さが知られていました。

尿路結石は痛みの順位としては3番目ですが、尿路結石の痛みを伴う発作が起きても死に至ることは昔からありません。患者さんとしては痛みの酷さを周囲に正確に伝えることが出来ます。

尿路結石の痛みは少し違う

結石の痛みはある一定のインターバルを置いて繰り返しやってきます。生罹患率は男性9%前後、女性4%前後とされていますので、で日本人男性の10人に1人、女性の25人に1人が一生の間に1度はかかってしまう病気なのです。さらに再発率も高いのです

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http://www.twmu.ac.jp/

腎臓から尿が膀胱まで流れ出るルートである尿管に詰まって発作的な痛みが生じてしまうのです。 痛みに対しての決定的な治療法は「対症療法」のみです。痛みの原因である、「結石」を取り除けばいいのですが、簡単にはいきません。

代表的な結石の治療方法である体外衝撃波結石破砕術法(Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy 略してESWL)は腎臓にある結石の治療には非常に効果を発揮します。残念ながら現在進行中の痛みの発作を起こしている人に対しては無力なのです。

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こんなに大がかりな治療機器です

尿管に詰まって痛みの発作を起こす結石に対しては、経尿道的尿管結石破砕術(Transurethral UreteroLithotomy 略したTUL)という治療を行いまう。これは麻酔下で尿道から内視鏡をいれ、膀胱からさらに尿管までその内視鏡を結石が存在する位置まで進めます。

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かなり大がかりな手術です。

内視鏡の先端からレーザー(現在は主にホルミウムヤグレーザー)を結石に当てて石自体を直接破砕する方法です。しかし、この手術も痛み発作中に緊急的に行われることはまずありません。ばっくりと石が尿管内に詰まり挟み込んでいて、腎臓の機能に悪影響を与える場合に予定を組んで行う手術です。

緊急的な尿路結石の痛み発作時の治療

薬物治療飲み薬の痛み止めに始まって座薬(この方が痛みを抑えるのに必要な血中濃度が早く上昇する)、それでもだめなら非麻薬性の痛みどめの注射、さらにそれでもだめな場合は麻薬系の痛み止めの注射を使用します。中にはぼやっとさせて痛みから関心を薄れさせるために精神安定剤系の注射薬を使用する医師もいるようです。

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尿管の石が水腎症を引き起こします。

痛みを止めるのではなく、石が尿路である尿管に詰まっていながら腎臓の方は尿をどんどん生産します。その為に結石で詰まってしまった尿路の圧力が急上昇して尿管の痙攣性の収縮によって痛みが生じると考え、尿管の痙攣を抑えるために、通常のおなかの痛みに使用する「鎮痙剤」の飲み薬や注射薬を使用する場合もあります。ブスコパンなんて名前聞いたことありませんか?ブスコパンは飲み薬もありますし、注射薬もありますので多用される治療薬です。

どちらにしても「痛みを止める」だけです。

尿路結石発作の痛みを止める裏ワザ

大病院では行わないと思いますが、熟練の開業医が尿路結石にのた打ち回る患者さんに「もし、帰宅後薬を使用しても効果が無い時、試してみてね」と付け加えるのが、指圧です。

発作時に腰椎の2番目や3番目にいわゆる圧痛点がありますので、ここを強めに親指などで押してもらう治療法です。また、手にある鍼でいうところのツボ「合谷」も効くという医師もいますが、私はそれで痛みが改善したという患者さんは経験していません。

合谷

ここが「合谷」と呼ばれるツボです。NAVERまとめよりお借りしました

ブロック注射の応用なのか私の恩師は非常に効果的な治療法を教えてくれて非常に役立っています。

その方法は圧痛点に直接、局所麻酔剤を注射する方法です。尿路結石の痛みの発作時は超音波などの簡単な検査に対応できないくらい、患者さんは悶絶しながら苦しみます。

この局所麻酔の注射を痛みを感じるポイントの注射すると、あら不思議、30秒ほどで痛みを感じなくなります。痛みが軽減したところで検査を進めて原因である結石の存在または尿路である尿管に詰まった石によって尿の流れが堰き止められたために、腫れあがった状態の腎臓(水腎症とか腎盂拡張とかいいます)を確認して確定診断に至ります。

痛みを止めた後の治療は

腎臓に負担を掛けていると予想される尿路結石はESWLやTULの治療対象です。しかし、10ミリ程度の結石が原因の場合、泌尿器科専門の医師は冷たいです。

患者さんに言うことは「自然に排石するのを待ちましょう」なのです。

自然に排石するのを待ちましょうとしか言えない理由

なぜそのような言い方をするかというと、手術の予定を組んでも手術当日前に自然排石されることが多いのです。もちろんその場合、患者さんは痛みの王様である「尿管結石の疝痛発作」を数回経験しないけません。ですから尿路結石を繰り返す患者さんにとっては泌尿器科医は冷たい医師であると思われがちです。

患者さんに排石を促す意味で「水分をイッパイ飲んでくださいね」という時に「ビールでもいいよ」なんて嫌われない様に卑屈なアドバイスをついついしてしまいます。しかし、加糖炭酸飲料は尿路結石の予防にはならないどころか再発を起こしやすいという論文がでてきたため、現在では「なるべくお水をイッパイ飲んでね」に私は変えて患者さんに伝えています。そのあたりは「腎結石の患者さんに今まで間違った指導をしてきてしまった⋯ごめんなさい」という卑屈なブログを参照ください。

なぜ尿路結石の治療は進んでいなかったか?

これはあくまで私たち泌尿器科医に問題があります。大学病院で研究をする場合、基礎医学という分野である実験を行う研究の方が、実際に患者さんの治療などを研究する臨床医学よりアカデミックであるという風潮があったためです。

私の時代などは臨床医学の論文で博士号は取れない、とまで言われていました。人間よりネズミ相手の研究の方が偉かったのです。

さらに結石の研究は命にかかわらない為に、がんの研究より優先順位が低かったのです。つまり尿路結石の研究を専門にしている医師は殆どいなかったのが事実だったのです。しかし、時代も変わり臨床の研究の重要性を指摘する教授も多くなってきています。

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http://mtpro.medical-tribune.co.jp/より一部抜粋

10人に1人が経験すると言われる尿路結石の研究も最近は増えてきました。

ことしの日本泌尿器学会では「尿路結石症のリスクファクターと再発予防」というシンポジウムが行われました。

今後尿路結石の発生原因や再発予防にむけた新しい報告が続々と出てくることが予想されます。

泌尿器科医もがんばっています!

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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