私が初めてヴァニラさんの存在を知ったのは数か月前です。
あまりテレビを見ることが無いのですが、たまたまテレビのスイッチを入れたら、バラエティ番組「私の何がイケないの?」で整形サイボーグと言われているヴァニラさんが画面イッパイに映っていました。
本記事の内容
整形美人を見て何故か連想された安部公房の壁
当初はご自分のお金で整形を繰り返していたようですが、今はとある美容外科クリニックがバックアップしているようです。
画面を見る限り「こんな見え見えの美容整形をした人で数十年前はこんな人結構いたよね」という感想しかありませんでした。しかし、出演者に結構たたかれており「俺はあんたのこと綺麗だなんて思えないよ」などという発言も飛び出し、チャンネルはそのままにして、しばし視聴しました。
「美」についての出演者とヴァニラさんの全くかみ合わない話を見て私の頭になぜか浮かんだのが安部公房の「壁」です。[ 「壁」の内容はウィキなどでご確認ください。
安部公房といわれても若い人は「ダレ?」という反応しか起こさないでしょうが、一時期はノーベル文学賞に一番近い日本人作家とされていたこともあります。
サイボーグは酷いでしょ、超整形美人とでも申しましょうか???
安部公房のテーマは不条理と私は解釈しておりますので、ヴァニラさんが求めている「美」と一般の多くの人が考えている「美」との間にかなりの差があり、もちろん私が考えている「美」とも違っており「不条理」というキーワードが頭に浮かんだのかもしれません。
整形美人というより超整形美人⋯一般人が整形で目指す美を飛び越えた美人を目指しているのではないかと思いました。つまり、常識を超えた美的感覚を目指しているが、通常の生活を送っている人にとっては不条理であると。
いったいヴァニラさんは何歳なんでしょうか?
最終目標はフランス人形とおっしゃるヴァニラさんですが、フランス人形といっても様々なものが存在しますし、彼女が言っている「フランス人形」の定義も明確になっていません。
もしも、彼女が美容整形の医師に「フランス人形にしてください」とオーダーしても、その医師が認識しているフランス人形と彼女がイメージしているフランス人形が全く違ったものだったらどうするんだ、なんて余計なことまで考えてしまいました。
彼女は美しさを追い求めているようですが、現在大流行りのエイジングケアとは違ったアプローチであるのは明らかだと思います。
もし、彼女の実年齢が70才であったら結構驚きですが、40歳~50歳程度であると「まあ、こんなもんじゃない」的な所ではないでしょうか。
ヴァニラさん、万が一20歳代とか30歳代前半であったとしたら、はっきり言えば年齢より老けてみえます!
と、私は思うんですがいかがしょうか?
美を語るのは難しい、特に人工物の場合は
漠然と「美」というものを語るのは非常に難しいものです。世界中の大学や研究施設で美を対象に様々な研究や調査が行われていますが、「これこそ美である」と万人を納得させるものは無いと思います。
一方「綺麗か汚いか?」は割と統一した見解で判断できるのではないでしょうか?道路にガムやたばこの吸い殻が落ちていたら、それは汚いです。ピカピカに磨かれた鏡、それは綺麗です。
医学的には綺麗か汚いかは「清潔であるか?不潔であるか?」という言葉を使用します。最近に汚染されていれば見た目がきれいであっても不潔です。見た目が黒くさびたハサミであっても細菌が存在しなければ、それは清潔です。
このような比率が「美」である「黄金比」と主張している方もいますが⋯。こんな数式で「美」を表そうということができるのでしょうか?
この黄金比を人間の顔に応用してこれこそ「美」だと主張している医師もいますが⋯。
Dr. Stephen R. Marquardtによる顔の黄金比です
美というものは今から数千年前から人類のテーマになってきていていまだ結論がでていないテーマととらえていいのではないでしょうか?黄金比といわれるものもあります。自然を見て「美しい」とほとんどの人が感じても、人工物を見て全員一致で「美しい」と感じさせることは殆ど不可能です。
パルテノン神殿も黄金比が使われているらしいです。
確かに「美」を証明するためダヴィンチなども研究の対象としてきました。モナリザにも黄金比が使用されていると主張する人もいます。
じゃあ、美容整形ってなんだよ!
当然、そのような突込みが来ると思います。元々形成外科から発展した美容外科です。形成外科は戦争で傷ついた兵士が、社会復帰したときに一般人と差がでないようにするために工夫され発展した学問です。
当時の戦争での負傷者の写真とかを見ますとそれこそ「グシャグシャ」です。それをある程度整えるのが形成外科の担当だったようです。今でも交通事故などで損傷した傷を綺麗に治すのは形成外科の役目です。そのあたりは先日ブログでご紹介しています。
その後、先天的な奇形の方の治療に目覚ましい発展を遂げましたが、その技術を「鼻を高くしたい」「一重を二重にしたい」などという平和な時代のニーズに応じて方向性を変えたのが美容外科というものです。
ヴァニラさんが万が一当院に来たとしたら
まず、今まで美容整形に費やした費用が2000万円とおっしゃっていることについて、詳しくお尋ねしたいと思います。私から言わせればボったくられていますよ!
素朴な疑問ですが、この状態は成功なんでしょうか?失敗なんでしょうか?普通の美容整形外科医が目指す整形美人としてはあまり高得点ではないでしょうが、不条理の世界に生きる超整形美人を目指す彼女にとってはとりあえず上手くいったと考えているのでしょうね
テレビで見た話、彼女の写真から実際に行われたと予想される治療は難易度が高いものは何も行われていないと予想されます。ある方が顎の骨を削りたいと発言したところ「私も骨は削っていない」との答えでした。今後イリザロフ法によって身長を伸ばす予定らしいですが、神経麻痺等のリスクを十分検討してから治療することを提案させて頂きます。
今後は某美容外科がタイアップするような話がネット上に掲載されていましたので、費用はあまり心配しないでいいのではないでしょうか?彼女が使用した金額に対して大げさな反応を同席している芸能人はしていましたが、皆さんがいつも乗っている車って1000万円以上なんじゃないですか?時計だって数百万だと思います。女性では数百万~数千万の指輪をしている方って、決して少なくは無いと思います。
ですのでヴァニラさんはご自分が「美」を共有できる人はなかなか見つからないと思いますので、あくまで自己満足の世界で過ごされることをアドバイスします。
決して美容整形を広めようなどとお考えにならない方がいいのです。なぜなら「美」を認識するための基準さえ人類数千年の歴史で証明されていないのですから⋯。