国民の健康問題が国家の財政を揺るがせているのは日本だけではありません。
さあ、明日からジョギングするぞ、朝は腹筋を30回はじめよう!せめてウォーキングくらいは⋯などと心に決めても昔から言われているように「三日坊主」に終わってしまうことが多いのではないでしょうか?
体に良いことを続けることは本当に難しい
肥満大国・生活習慣病大国のアメリカでは国側も懸命に国民の自助努力を促しています。たとえばアメリカ連邦保健福祉省(HHS) が身体活動ガイドラインというもので、アメリカ人に適切とされる有酸素運動と筋肉トレーニングを提案しています。しかし、米国民はそれを順守しているのでしょうか⋯・。それとも三日坊主に終わっているのでしょうか?
実際は20パーセントしかクリアしていなかった!
Morbidity and Mortality Weekly Reportという日本語に訳せば「罹患率と死亡率の集患報告」という怖い題名のレポートがアメリカではCenters for Disease Control and Prevention (略してCDC 米国疾病対策センター)によって、毎週出されています。
その中で「Adult Participation in Aerobic and Muscle-Strengthening Physical Activities — United States, 2011」 (2013;62:326-330) というタイトルでアメリカ人が実際にHHSが推奨するレベルのトレーニングをまじめに行っているかをCDCが調査した結果です。
推奨する身体活動は
- 中等度の有酸素運動(ウォーキングなど)を週に2.5時間以上
- 強度の有酸素運動(ジョギングなど)を週に1.25時間以上
- 腕立て伏せや腹筋などを週に二日以上
これがHHSがアメリカ国民の健康に役立つ身体活動として推奨しているものです。
有酸素運動と筋肉トレーニングの両者を行うことがアメリカ人に推奨される身体活動というわけです。
こんなオッサンを健康的にしようという試みです
今回は18才以上の人を対象に全国レベルで調査をしました。
その結果⋯推奨レベルを両者ともに達成している成人は20.6%という、トホホな結果に終わってしまいました。
HHSの言い訳
「半数が有酸素運動の推奨レベルを満たしていて、30%が筋力トレーニングを推奨レベルまで達成していた。この状態は非常に希望が持てる展開である」といかにも某国の役人が使うような表現で自分たちの存在意義を強調していました。
さらにこれこそどこの国でも共通の予算獲得発言も。「運動に適した場所を増やすことが推奨レベルをクリアさせるために必要」とコメントしています。
つまり、国家予算を脅かす健康問題を解決するために、国民に運動を心がけるように指導して、気軽に運動をしやすい環境をつくる(この場合は施設の建設を意味しているのは明らかですが)という一連の流れは万国共通の役人の思考回路なんですね。CDCも実際はHHSの1機関です。
地域による格差問題も発覚
図をご覧いただけるとわかるように、かなり地域格差が目立っています。コロラド州では27.3%が推奨レベルを達成しているのに、テネシー州やウエストバージニア州では12%台です。
また、ヒスパニック・低学歴の人ははレベルを満たしていない傾向が強かったとの結果もでています。お金と時間が余っている人は推奨レベルをクリアして、余裕のない人はできない⋯つまり貧富の差の影響が大きいような気がします。
上記の結果を踏まえての役所のアクション
やっぱりでした、HHSは推奨レベルの達成度が低い25州に対して、助成金を支出することを決定したようです。もちろん支出先は前言の「運動に適した場所を増やすことが推奨レベルをクリアさせるために必要」でしょうね。
残念ながら三日坊主万国共通説を裏付けるデータは得られませんでしたが、違った万国共通の法則が発見できました。
役人が考える「国民の健康を守るための指導」って実現度のハードルが高く設定され、さらに「箱もの行政を伴う」は世界共通でした。