以前からビタミンEって体に良いイメージを皆さん持っていたと思います。
現実の医療現場でも末梢循環障害や脂質増加の防止のために保険適用薬となっています。薬品名としてはユベラが有名です。作用機序としては抗酸化作用によるとされています。
本記事の内容
ビタミンEは体に良い、本当でしょうか?
ユベラのカプセルです
一部の怪しげな業者が「がんにも効果がある」としてビタミンEを含む食品・栄養剤を販売しているとの話も聞こえてきます。確かに抗酸化作用が特にエイジングケア分野では注目されているのは間違いありません。
でも、ビタミンEに関するキッチリとした臨床実験も、データ解釈上問題のない論文はほとんどありません。
このあたり多分同業者から袋叩きに会う可能性大ですが⋯。
ビタミンEががん予防になる、いんちき医業類似業者が好きそうな論文です
ビタミンEのがんに対する予防効果は以前から予想されていました。しかしその作用機序は解明していなかったのです。それを今回オハイオ州立大学のChin-Shin Chen氏が解明したとScience Signalingに発表しています。
動物実験ではがんの予防効果は知られていた、人間の臨床試験では同等の効果はなかった
というのがビタミンEの立ち位置です。
ビタミンEと言っても細かく分類するとγ-トコフェロールとα-トコフェロールに分けられます。ほかにβもありますが、今回の話題には絡みません。
今回の実験で「γ-トコフェロール」が、がん細胞が生きていくために必要なAktという酵素の邪魔をすることが判明しました。さらに正常な細胞に対しては影響を及ぼしませんでした。
つまり、がん細胞を殺したけど、ビタミンEは人間に悪さをしないので非常に有効な治療となる可能性があるのです。
さらにマウスを使用した実験では前立腺がんの腫瘍の大きさを縮めたと発表しています。
ビタミンEのがん治療効果、ここから先が重要です
インチキ医業類似業者や勉強不足医師が悪用しないように以下はしっかり憶えていてください。
・サプリに入っているビタミンEは、ほとんどがα-トコフェロールです
・人間は構造上、臨床的に抗がん作用を期待できる量のビタミンEを吸収できない
以上の2点は絶対忘れないでくださいね。現状ではビタミンEではがんは退治できないのです。
Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial という大がかりな研究でビタミンEは少なくとも人間の前立腺がんには効果どころか、逆にリスクを増やすと発表されていました。
ビタミンEのがん予防・がん治療に今後の課題
今回の研究は市販のビタミンEを使用して前立腺がんのリスクデータと反対の結果です。研究に使用されたのは同じ前立腺がんでも培養細胞を使用したものです。低価格で有効成分であるγ-トコフェロールの開発が可能ならば、この研究は一歩進んだことになります。さらに人体が吸収できるメカニズムを解明・開発すれば安全性の高い抗がん剤となる可能性があります。
でもそんなすぐには登場しませんよ。
医学的に効果が実証されるには
- 動物実験による効果の判定・毒性等をこの実験者以外が再現する
- 動物実験のデータをもとに人体に適した量を決定する
- 健常な人間に投与して安全性を確かめる
- ランダムに選択した患者さんに、二重盲検試験をおこなう
- さらに類似の薬との優位性を証明する
実はもっと複雑な課程が製品化され皆さんに提供されるまで必要とされています。また、医学論文には今回の実験に対する反対の意見の論文も掲載されることが予想されます。Aという意見がでるとBという意見が出されるというのが正常で健康的な意見交換・討論です。
皆さんが思っているほど医学界は閉鎖された不自由な世界ではありません(もちろん一部では未だに旧態以前とした学会もあるかもしれませんが、現代のネット社会では一般的ではありません)
だってこの論文書いた人は医学部所属ではありませんからね、でも医学向けに情報を開示しています。逆に医学部系の研究者が書いた論文だって世界中の人がチェックできる体制がネット上では整っています。(英文に限られるのが残念)
ビタミンEのがん予防効果・がん治療効果で今後予想される展開
近いうちに、この論文を錦の御旗としたいんちき医療関係者及び周辺者がでてくることを予想します。
でも、前述のα-トコフェロールじゃだめ、人間の構造上高用量は吸収できないの2つのポイントを覚えておけば騙されません!