首ポキ施術は大変危険です。医師としてはっきり申し上げますが、首をポキポキする施術を受けるのはもちろん、クセで首や肩の骨をポキポキ鳴らしてしまうのも医学的に良くないことです。
子供から大人まで1人1台スマホを所有する時代ですので、首への負担は大人だけでなく全世代に渡って増大しています。スマホ首なんて言葉まであります。これは年令問わず脳卒中のリスクが高まっていることを意味しています。
本記事の内容
首ボキは脳卒中のリスクを高める
このことは以前から割と知られていたことです。カイロプラティックという民間治療法がありますね。首をボキボキ鳴らすと死ぬからもうやめたいという面白いブログがあったので私自身が疑問に思っていたことを調べてみました。
カイロプラクティック=ボキボキってイメージがありますもの。実際に首をボキってすることの危険性はカイロで首ボキをやっても10万人に一人くらいしか起こりません。しかし45才未満で脳卒中を起こした人は一週間以内にカイロで首ボキをやっていた人がやっていなかった人と比べて5倍多かったのです。 (Stroke 32:1054-1059より)実は私も複数回カイロプラクティックを受けたことがあって恐怖感が今になってこみあげています。
肩こりとか腰痛で通っている分にはそれほど問題が無いと思うのですが、なぜかしら彼らは万病のもとが脊椎のゆがみにあると言ってしまう傾向があるのです。これに対してはチョッと待ったと声をかけざる得ません。
カイロプラクティクってなんだ
カイロプラクティックを施術する人をカイロプラクターというそうですが、いくつか知っておいた方がいい知識を
ドクターと名乗っている方がいますが医師を指すドクターではありません。
医師の場合はMDつまりmedical doctorと表示しますが、カイロプラクターはdoctor of chiropracticのドクターです。アメリカだと4年間カイロの講座を受け終了していますよ、という意味しかありません(たまたま私の知人の日本人医師はアメリカのカイロの免許ももっていますが)
カイロプラクターが国家資格ではないからといて、違法だと言っているわけではありません。厚生労働省の解釈は国家資格である、按摩、マッサージとは違ったものなので法の管轄外と表明しているようです。カイロプラクティックの団体はなぜか統一されたものが無く多くのグループが作られていますが、厚労省は医業に類似する行為はしないでね、程度の通達をしているようですが各団体の自主規制をおこなっているのが現状のようです。
でも医師以外が、診断してしまうことは明らかにNGです。
診断と治療は医師法によって医師にしか許されていない行為です。看護師でさえ診断することは違法となっています
カイロプラクターってどのくらい人数がいるの?
WFCという世界カイロプラクティック連合に所属している日本カイロプラクターズ協会が認めているカイロプラクターは600人程度ですが、カイロプラクティックを名乗って施術している人は数万人いるようです。このあたりが医療関係者から異端視される原因でもあると考えます。つまり最低基準を満たしていないのに資格商法に使われている現状が問題です。
アメリカでは保険が効く。ただし日本の健康保険とは違います。
これは間違いではありませんが、アメリカ医師会がカイロプラクターによる治療をインチキ医療と決めつけ猛攻撃をした時代があります。その時アメリカ医師会が政治的圧力をかけたため、裁判沙汰となりました。その裁判自体が医療の効果をめぐるものではなく「独占禁止法」対する裁判だったのです。つまり、患者の治療という市場を医師が独占しようとしているということです。裁判はカイロサイドの勝利となったのです。その当たりの流れでメディケア(アメリカの老人に対する医療制度)の対象となる州が出だしたようです。また一般の方は保険は民間の保険業者と契約していますのでその会社の判断によって保険が効く場合もあります。ですから日本で普通に健康保険が使えるというイメージとは少しニュアンスが違ってきています。
当然のことながら、日本の健康保険はカイロには一切適用されません。
骨に問題があるのに検査をしていない不思議
カイロは脊椎に問題があるとしていますが、日本ではレントゲン撮影をすることは認められていません。何をよりどころにして診断?しているのか不思議なんですが。逆にアメリカのカイロプラクターはレントゲン撮影をすることが許されていますが、逆にレントゲンを撮り過ぎてX線が原因のがんを増やしていると批判されているのです。
なんで脊椎の歪みを治すとなんでもなおるの?
治るわけがありませんが、一応その歴史を振り返っておきますね。
肝臓病、感染症、腫瘍(がんを含む)、呼吸器障害、消化器疾患、月経障害、妊娠にも効果があると言っているところがあることに非常に驚きを感じました。もともとなんでも効果がありますよ、と言い出だしたのはカイロプラクティックを考えだしたD.Dパーマーという人です。
1845年生まれです。
元々は骨接ぎを仕事としていた人らしいですが、1895年にある人に背骨のゆがみをなおしたらなんと耳が聞こえなかった人が聞こえるようになったらしいです。新しい医療を発見したと考えて様々な病気に対して治療を試みたところ95パーセントの病気は脊椎のズレによっておこると宣言したのです。学校を作ってカイロプラクティックを世の中に広め、イネイト・インテリジェンスとか、サブラクセーションとかの疑似科学的な理論をつくりあげたため、アメリカ医師会から批判が起きたのでした。
せめて腰痛の治療くらいにしとけばよかったのに。
首ボキ、ダメ、絶対
首をボキボキする施術は、気持ちいいかもしれませんが、非常に危険です。ましてやカイロは医療機関ではありません。整骨院などでも行われているようですが、万が一のことが起こっても責任とってくれません。なぜなら脳卒中になったとしても、首ポキ施術が原因という証拠はだせません。結局行き着く先は病院です。
民間療法・お店をご利用の際は、首ポキをやっていないところを選ぶことを強くオススメします。
そして首の骨を鳴らすクセがある方は、いきなりやめるのは無理だと思いますが、良くないことという意識だけはしっかり持ってください。医師として切実なお願いです。